国の給付型奨学金はどれだけの負担軽減になる?

返済が不要な国の「給付型奨学金」について、議論が進んでいます。報道によれば、自民党の案では月3万円の支給、成績評定4以上などの条件が検討されているとのこと。

今回は、長年シングルマザーの家計相談に応じてきた経験から、検討段階にある制度内容が、家計にとってどの程度の負担軽減になるのか考えてみます。

月3万円という金額の意味

まず「月3万円」という支給額が、大学生活にかかる費用に関して、どれだけの足しになるのかについてです。大学生活には、授業料と食費以外に、教材費、通学費、下宿費用(大学が遠方の場合)、通信費などがかかります。

日本学生支援機構が発表している「平成26年度学生生活調査報告」によれば、大学生活1年間(昼間部)にかかるおおよその金額は以下となっています。

・国立(自宅): 約110万円(月約9万円)
・国立(下宿): 約171万円(月約14万円)
・私立(自宅): 約177万円(月約15万円)
・私立(下宿): 約239万円(月約20万円)

月3万円(年間36万円)が給付される制度というのは、家計にとってありがたいものですが、月3万円だけでは不足することも明らかです。

たとえ制度を利用できたとしても、不足分は貸与型奨学金を利用し、それでも不足する場合は、教育ローンで補う形になるでしょう。また、現在検討されている条件と同等の成績・所得基準であれば、大学独自で創設している給付型奨学金が利用できるケースも多いです。

意外とかかる、高校3年生で必要な教育費

また気になるのが、子どもが高校生時点での経済的支援にはならないということです。見落とされがちですが、高校3年生の1年間というのは、食費を中心とした生活費に加えて、塾代、受験費用、入学金、引っ越し費用(大学が遠方の場合)などがかかり、非課税世帯をはじめとする低所得者は、家計がまわらないのが現状です。

現在多くの家庭が利用している日本学生支援機構の貸与型奨学金も、入金は大学入学後。そもそも高校生で勉強する環境が確保できなかったり、受験・入学費用が捻出できなかったりする家庭のサポートが、必要だと感じます。

ひとり親家庭に情報が届くようサポートを

また給付の条件として、「高校時の成績が5段階評定で平均4以上」という基準が検討されていますが、これについては、進学校ほど評定4以上がとりにくく、不公平感が生まれてしまうと懸念しています。あえて、ランクを落として高校進学をした方が有利となるケースも出てきてしまうでしょう。所得基準についても、制度のはざまで苦しむ親子がいないよう、配慮が必要です。

最後に、ひとり親世帯に着実に制度の内容が伝わり、無事利用ができるよう、手続き・利用のサポートを徹底してほしいと思います。働いているひとり親世帯の親が参加できる週末に説明会を開催したり、高校1年生の時点から、制度の仕組みを学校の授業で説明したりするなど、できることはたくさんあります。

経済的困難を抱える家庭の子どもたちが、進学や将来に対して希望を持ち、努力ができるための制度が、創設されることを願っています。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

マイライフエフピー代表 加藤葉子
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプランナーの育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家」でもお金にまつわるお役立ち情報を提供している。