Windows 10 Mobile Anniversary Updateとなるバージョン1607 (OSビルド14393.67) は米国時間8月16日にリリースされたが、当日に配信が開始されたのはMicrosoftのLumiaシリーズなど、一部のデバイスに限られた。その後、北米を中心にSIMロック付きのキャリアデバイスに配信は広がったが、一部の国内Windows 10 Mobileデバイスにはいまだバージョン1511 (OSビルド10586.xxx)のまま。

それが「NuAns NEO」と「VAIO Phone Biz」だ。それぞれWeb上に公開しているWindows 10 Mobile Anniversary Updateの配信延期を知らせる案内によれば、両デバイスともContinuum for Phoneが特定解像度のディスプレイとの組み合わせで動作せず、NuAns NEOはNFC Type-Fが動作しないという。

トリニティの「NuAns NEO」

VAIOブランドを前面に押し出した「VAIO Phone Biz」

トリニティ 代表取締役 星川哲視氏のブログでは、両デバイスが搭載しているSnapdragon 617に起因する問題であり、Microsoftとともに解決に取り組んでいると説明している。Snapdragon 617搭載デバイスといえば、マウスコンピューターの「MADOSMA Q601」も該当するが、こちらもContinuum for PhoneおよびNFC機能に関する不具合が発生中。FAQページで問題を告知している。

マウスコンピューターの「MADOSMA Q601」

このようなトラブルが発生した原因として、二つの理由が思い浮かぶ。MicrosoftのLumia 550/650/950/950XLは、Snapdragon 210/212/808/810を搭載している。Windows 10 Mobileの開発現場を目にしてきた訳ではないが、開発陣が使っているのはLumiaをはじめとする北米で流通するデバイスであることは想像に難しくない。そのため、Snapdragon 617を検証する機会が少なかったのではないだろうか。これが一つめの理由だ。

二つめの理由は、日本でSnapdragon 617搭載デバイスを使用しているインサイダーが皆無だったというものだ。実は、こちらに示されているとおり、Windows 10 Mobile Insider Previewをインストールできるデバイスには、NuAns NEOもVAIO Phone Bizも含まれていない。Continuum for Phoneの問題に対して報告しているインサイダーもいるが、その投稿日はAnniversary Updateリリース後のものばかりだ。Windows 10 Mobile開発陣が、Snapdragon 617とContinuum for Phone (もしくはNFC) の組み合わせで発生するバグに気付かなかったのも致し方ないだろう。

Windows 10 Mobile上のインサイダーHubで「Continuum」を検索した状態。Continuum for Phoneに関するバグ報告は掲載されている

MicrosoftはLumiaのサポート用Twitterアカウントを9月1日に閉鎖し、@MicrosoftHelpsに統合。InstagramのMicrosoft Lumia USアカウントも同様に@microsoftlumiaに統合するという。Lumiaブランドはこれまでもレポートしてきたように苦戦を強いられているが、Windows 10 Mobileはどこへ向かうのだろうか。

阿久津良和(Cactus)