NVIDIAは米国テキサス州オースティンにおいて記者会見を開催し、同社の次世代GPUアーキテクチャ"Pascal"に基づく、ゲーミング向けGPU"GeForce GTX 1080"と、その廉価版となる"GeForce GTX 1070"を発表した。NVIDIAによればGeForce GTX 1080は、従来のハイエンドモデルGeForce GTX TITAN Xと比較して、性能では2倍になり、電力効率では3倍になるという。
また、NVIDIAは記者会見の中で、3Dステレオカメラによる画面キャプチャー機能となる"ANSEL"(アンセル、開発コードネーム)、同社のVR向けの開発キットとなるVR Worksの機能強化、ディスプレイの仮想的マルチプロジェクション機能といった新機能についても説明を行った。
360度ステレオのゲーム画面をキャプチャできるANSELやVR WORKSの強化を発表
記者会見に登壇したのは、NVIDIAの共同創始者でCEOのジェンスン・フアン氏。会場の最前列には、通常のようにメディアや関係者ではなく、PCゲーミングの世界における主役とも言えるeスポーツのプレイヤーが並んでいるという環境の中で、会見が行われた。
このため、フアン氏が何かを発表する度に、eスポーツのプレイヤー席からはヤンヤの歓声が飛ぶという形で、製品の発表会というよりは、まるでアイドル歌手のコンサートのようだった。
NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏 |
そうした中で発表したフアン氏は、NVIDIAが開発してきた新しい技術について説明した。1つめはANSEL(アンセル、開発コードネーム)と呼ばれる、画面キャプチャー機能の拡張技術だ。
フアン氏はANSELを「3Dゲーミングに3Dステレオカメラを追加するものだ」と説明し、実際にデモを披露した。それによれば、ANSELは高解像度のイメージだけでなく、360度ステレオなど従来の画面キャプチャー機能ではできなかったような画面キャプチャが可能になる。さらに、3Dステレオで撮影した映像は、VR HMDを利用して楽しむことができるほか、Androidのアプリケーションを使っても楽しむことができるという。
続いてフアン氏は、同社がゲーム開発者向けに提供する、VR対応ゲームの開発ツール「VR WORKS」の機能強化について時間を割いた。大きな強化点としては、反響音などの音声を"パストレーシング"というGPUによる演算を活用して、ゲーム内に再現する機能の追加だ。これにより、よりリアルな3DオーディオをVR環境で再現することができる。
また、さまざまなディスプレイへの対応も強化。PascalベースのGPUからサポートされる仮想的マルチプロジェクション(Simultaneous Multi-Projection)という機能を利用すると、2つの新しいテクニックをVRコンテンツの開発者は利用することができるという。
1つはレンズマッチドシェーディング(Lens Matched Shading)で、VRディスプレイ出力の形状に合わせてレンダリングすることでピクセルシェーディング時の性能を向上させる機能だ。
もう1つがシングルパスステレオ(Single Pass Stereo)で、VR HMDの左右で1つのジオメトリパスを共有し、ジオメトリ性能を向上させる機能だ。実際、フアン氏のデモでは適応前は68FPSだったフレームレートが、96FPSに上昇することなどが示された。
TITAN Xに比べて2倍の性能、3倍の電力効率を実現
今回フアン氏が発表したGeForce GTX 1080/1070は、同社が開発コードネーム"Pascal"で呼ぶ新しいGPUアーキテクチャに基づいている。Pascalに基づいた製品としては、2016年4月上旬に米国で行われたGTCで発表されたTesla P100があるがそちらはデータセンター向けであり、ゲーミングPC向けのGeForceブランドの製品としてはGeForce GTX 1080/1070が最初の製品となる。
このほか、GeForce GTX 1080/1070の特徴として、製造プロセスルールが16nm FinFETに基づいていること(72億トランジスタ)や、メモリがGeForce GTX 1080はMicronが製造するGDDR5Xと呼ばれるGDDR5の機能強化版が採用されていることも明らかにされた。このGDDR5Xは最大10Gb/秒、256bit幅でのアクセスが可能で、GDDR5にくらべると帯域幅が1.7倍広くなっている。
また、フアン氏はGeForce GTX 1080/1070では、電源回路も見直されており、ピーク時の電源の安定性が向上しているほか、同じ電力でも効率が利用効率が向上しているのが特徴となっているという。
性能に関してはフアン氏は「GeForce GTX 980のSLI構成よりも速い。さらに、GeForce GTX TITAN Xに比較すると性能は2倍で、電力効率は3倍になっている」と述べ、高い性能を実現しているとした。
会見では、EPIC Gamesの創始者であるティム・スェニー氏を壇上に呼び、GeForce GTX 1080を利用して、EPIC Gamesが開発中のゲームタイトルをリアルタイムでデモし、キャラクターの肌や髪の毛などがリアルに再現できていること紹介した。このデモは、空冷でオーバークロックされたGeForce GTX 1080によるもので、動作クロックは2.1GHz、GPU温度は67度で動作していたことを明らかにした。
NVIDIAリファレンスとなるFounders Editionの1080は5月27日の深夜に日本発売
最後にフアン氏は各製品のスペックや価格を紹介した。具体的には以下のようになっている。
■表1 GeForce GTX 1080/1070のスペックと価格 | ||
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製品名 | GeForce GTX 1080 | GeForce GTX 1070 |
単精度演算性能 | 9TFLOPS | 6.7TFLOPS |
メモリ | 8GB GDDR5X | 8GB GDDR5 |
ボードベンダ価格(店頭予想価格) | 599ドル | 379ドル |
Founders Edition価格(店頭予想価格) | 699ドル | 449ドル |
発売予定日 | 2016年5月27日 | 2016年6月10日 |
今回の製品ではFounders Editionと呼ばれる製品と、ボードメーカーから提供される製品と2つ価格が提示されている。何が違うかと言えば、Founders EditionはいわゆるNVIDIAリファレンス版と呼ばれるもので、NVIDIAによるサーマル設計(ファンなど)を利用するバージョンになる。これに対してボードベンダ版は、NVIDIAがAiCパートナーと呼んでいるボードメーカーが独自のサーマル設計を施して売る製品となる。
NVIDIAによれば、GeForce GTX 1080のFounders Editionは699ドル(店頭予想価格)でNVIDIAやASUS、Colorful、EVGA、Gainward、Galaxy、Gigabyte、Innovision 3D、MSI、Palit、PNY、Zotacから提供される予定。なお、AiCパートナーボード版は、599ドルからの市場想定価格だと説明している。
GeForce GTX 1070にも、Founders EditionとAiCパートナーボード版が用意されており、Founders Editionが449ドル、AiCパートナーボード版は379ドルの店頭予想価格が明らかにされた。こちらの発売予定は6月10日になる。
なお、NVIDIAによればGeForce GTX 1080の5月27日という販売予定はワールドワイドでこの日付に設定されており、そこには日本も含まれているとのこと。日本では時差の関係で5月27日の深夜になる。もし販売店が深夜営業を行うならば、27日深夜、日中であれば5月28日以降に販売される可能性が高い。
従って、日本で入手したいユーザーは、5月27日の深夜ないしは5月28日などに入手可能になるため、確実に入手したいユーザーは予約するなど早めの確保に動いた方がいいだろう。