Microsoftは「One Windows」を標榜し、Windows 10をPCにモバイル端末にゲーム機にと全方位的に展開している。今回はこの戦略の一端を知るために、日本におけるWindows 10プラットホームのB2B展開についてレポートしたい。

3月8日、ソフトバンクロボティクスと日本マイクロソフトが業務提携し、Microsoft AzureやSurface Hubを活用して、人型ロボットのPepperが販売員として接客するという取り組みを開始した(関連記事)。

日本マイクロソフト 代表執行役社長の平野拓也氏とソフトバンクのPepper。そして両者の間にあるSurface Hub

本件の核はロボットとクラウド連携させる「クラウドロボティクス」であり、Microsoftが持つ技術の活用が大きい。Microsoft Translatorによるリアルタイム通訳や、Microsoft Azure Machine Learning(機械学習)による顧客データの蓄積と応用性、Power BIなどを用いた分析機能があって初めて成り立つ。さらにProject Oxfordによる表情検出技術なども大きく寄与している。

このようにロボティクス分野にも広まる「One Windows」プラットホームだが、他方で法人市場への浸透具合は不明瞭だ。先日開催されたプレスラウンドテーブルでは、「全国展開を決めた組織はまだ多くないが、部分導入や検証導入は始まっている。米国では76%に達し、日本も似た数字」との状況説明があった。

このような導入事例では、ペンタゴン(米国防総省)が400万台のデバイスを1年以内にWindows 10にアップグレードする意向を示した件が大きい。日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏は、「Windows 10のセキュリティ機能が高く評価された」と本件を説明した。

日本マイクロソフトの三上智子氏

Windows 10 Mobileに関して質問すると、日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部長 金古毅氏は「本気度が見えないというのは、B2C市場を中心に考えているからでは? 現時点で(Windows 10 Mobile搭載デバイスの)ニーズが高いのは法人顧客。B2Bは社内でもしっかりとした体制を組んで、市場にコミットできると自負している」と回答。Windows 10 MobileのB2B展開に自信を見せている。

日本マイクロソフトの金古毅氏

今後もWindows 10 Mobile搭載デバイスが増えるのか、という質問に対しては「デバイスの数だけ増えてビジネス的損失が発生することは避けたい。(Windows 10 Mobile搭載デバイスも)ローエンドから始まり、ミッドレンジ、ハイエンドと出揃った。このポートフォリオバランスを大事にしたい」と答えた。

Windows 10 Mobileデバイスの数々

Windows 10 Mobileを担当する日本マイクロソフト コンシューマー&パートナーグループ モバイルビジネス担当ディレクターの白男川亜子氏も、「B2Cから成長した他のプラットフォームと違う道を選びたい。現在多くのPCメーカーがWindows 10 Mobile搭載デバイスをリリースしている」と補足した。これらの回答からB2BからB2Cと広まる流れもあり得るだろう。

他方でパートナー企業の声も紹介したい。某Windows 10 Mobileパートナー企業の責任者に伺ったところ、日本マイクロソフトと定期的にミーティングを行い、改善を進めているとのこと。日本マイクロソフトは見えないところで努力すると同時に、長期的にWindows 10 Mobile市場を育てていく意思があると感じているという。

本当の意味でOne Windowsが実現する日が訪れれば、本レポートで何度も述べてきたように一気通貫的なプラットフォームが実現する。もちろんWindows 10は改善しなければならない箇所が多く、その日が訪れる時期は筆者にも見えていない。次期大型アップデートのRedstoneを2017年に延期するという情報もある。それでもMicrosoftはOne Windowsの日を目指して全方位展開を続けている。それが我々エンドユーザーのメリットにつながることを期待したい。

阿久津良和(Cactus)