Microsoftが公式ブログから、Windows 10のサポートポリシー変更をアナウンスした。本誌でも1月18日に報じたばかりだが、とりわけ注目されているのは、「IntelのKabylakeやQualcommのMSM 8996(Snapdragon 820)、AMDのBristol Ridgeに対しては、Windows 10のみのサポートとする」という部分である。
Microsoft Windows and Devices Group担当EVPのTerry Myerson氏は公式ブログで、Windows 7やWindows 8.1の延長サポート期間短縮についても言及しているので、一度整理しよう。今後Microsoftのサポート状況は下記のようになる。
- 最新のプロセッサー搭載PC上で動作するWindows 10
- 旧来のプロセッサー搭載PC上で動作するWindows 7(2020年1月)/8.1(2023年1月)
- リストで示したSkylake搭載PC上で動作するWindows 7/8.1(2017年7月)
3番目の「Microsoftが公開するSkylake搭載PC」について、Myerson氏はこのリストを示している。2017年7月17日以降もWindows 7/8.1を使い続ける場合は、重要な更新プログラムは提供される。ただし、プラットフォームの信頼性や互換性が危険にさらされない場合、リリースは見送られる予定だ。
これだけでは、「サポート期間という約束を反故し、古いユーザーを切り捨てる」と思われても仕方がない。確かに古いアーキテクチャを前提に設計したOSで、セキュリティリスクを軽減したり、多様化するデバイスをサポートするための負担は決して軽くない。
だからこそリリースから約6年が経過し、メインストリームサポートフェーズも終了したWindows 7や、人気のないWindows 8.xに開発リソースを割り当てるのはMicrosoftにとってデメリットとなる。今回の発表は、開発負担とサポート期間を両立させるための苦肉の策といえるだろう。だが、Windowsを長年ビジネスツールとして使ってきた我々にとっては、最大10年のサポート期間が大きな意味を持っていた。
このあたり、Microsoftを含めたIT業界とユーザーの温度差は大きい。Appleは過去のハードウェアを切り捨ててきた。Androidはデバイスベンダー経由でOSのアップグレードを提供しているが、その判断はデバイスベンダーに委ねられ、サポート期間を事実上確約していない。
また、日米の温度差も考えられる。以前、日本マイクロソフトの関係者と話したところ、「日本ではアップグレードを躊躇するユーザーが多いことを、(米Microsoft)本社にあげても訝しがられる。向こうでは最新=正義という考え方がある」と文化的な違いを語っていた。
いずれにせよ、OS単独で稼ぐというビジネスモデルは既に崩壊し、Microsoftがクラウドへと舵を切ったのは周知のとおり。マルチプラットフォームベンダーを目指す以上、古いOSを大事にサポートする理由も軽減してしまったのだろう。
さて、今回のサポートポリシー変更で損をするのは、新OS導入によって教育コストが発生する企業ユーザーだ。ただし、古いOSを使い続ければセキュリティリスクを同時に抱えることになるため、彼らこそ最新OSに移行すべきである。
別の関係者に、法人市場におけるWindows 10の導入進捗を訪ねたところ、「日本の官公庁でもLTSB(Long Term Servicing Branch)には興味を持って頂いている。とくにセキュリティ面に敏感な省庁は導入に積極的だ」と現場から得た好感触を語っていた。今回のサポートポリシー変更が、PC離れを加速させるのか。それとも重荷を下ろしたWindowsプラットフォームが加速するのか、その動向に注視したい。
阿久津良和(Cactus)