異なる鉄道事業者間で乗り換える際、一旦改札口を出るか、乗換え改札を利用する必要がある。ただし、改札口を共有する駅や直通運転を行う路線は例外となる。羽田空港~成田空港間は京急線・都営浅草線・京成線・北総線が相互直通運転を行っているため、乗換え改札を通らずに行ける。西武線と東京メトロ副都心線・東急東横線・みなとみらい線も同様で、土休日の「S-TRAIN」は西武秩父~元町・中華街間を乗換えなしで直通する。

  • この距離を乗換え改札なしで行ける(国土地理院地図を加工)

こうした例外を利用することで、改札を通らずに意外な長距離の乗継ぎも可能になる。たとえば東武日光駅(東武鉄道)から箱根湯本駅(箱根登山鉄道)まで。直通列車は走っていないけれど、東武日光駅から東武日光線・東武スカイツリーラインを利用して北千住駅で東京メトロ千代田線に乗り換え、代々木上原駅から小田急小田原線、小田原駅から箱根登山鉄道線というルートで箱根湯本駅まで行ける。運賃は2,740円だ。

東武日光駅からは箱根方面だけでなく、富士山方面も改札を通らずに行くことができる。しかもそのルートは2つある。ひとつは北千住駅で東武スカイツリーラインからJR線に乗り換え、中央本線・富士急行線を通るルート。大月駅に乗換え改札があるけれど、中央本線・富士急行線を直通する列車に乗れば回避できる。もうひとつは東武・JR直通特急「日光」「きぬがわ」「スペーシアきぬがわ」に乗り、新宿駅で中央本線・富士急行線直通列車に乗り換えるルート。こちらは乗車チャンスが少なめかもしれない。

改札口は鉄道業界用語で「ラッチ」と呼ばれるため、乗換え改札などを通らない乗継ぎは鉄道ファンから「ノーラッチ乗継ぎ」と呼ばれる。ノーラッチ乗継ぎは相互直通運転の多い東京メトロや、長距離路線網を持つJR東日本を経由すると長距離になりやすい。富士急行線の河口湖駅から伊豆急行線の伊豆急下田駅までの区間も、JR東日本を介してノーラッチ乗継ぎが可能だという。

東京メトロはJR東日本、東武鉄道、西武鉄道、小田急電鉄、東急電鉄、埼玉高速鉄道と相互直通運転を行っている。JR東日本は東京メトロ、東京臨海高速鉄道(りんかい線)、伊豆急行、富士急行などと直通運転を行うほか、北千住駅で改札を通らずに東武スカイツリーラインと乗り換えられる。東京メトロとJR東日本が相互直通運転を行っているため、両者を介するとノーラッチ乗継ぎの選択肢が多くなる。

  • これらの路線はノーラッチ乗り継ぎで乗り換えられる

とはいえ、ノーラッチ乗継ぎを実行する場合は、途中で不正乗車にならないように気をつけたい。また、ノーラッチ乗継ぎのルートは長距離になるほど迂回経路になったり、時間がかかったりする。より速くて安いルートもあるし、お得なきっぷが使える場合もある。ノーラッチ乗継ぎは知識として面白いかもしれないけれど、長距離のノーラッチ乗継ぎを試す価値があるかどうかは個々の判断による。いずれにしても「きっぷは目的地まで正しく買いましょう」が大前提であり、これを忘れてはいけないと思う。