今月から始まったNHK連続テレビ小説『半分、青い。』は「岐阜県東部のとある小さな町」が舞台。そこで、沿線にロケ地がある明知鉄道が盛り上がっている。ラッピングトレインの運行が始まったほか、記念スタンプや「半分青いフリーきっぷ」も。ドラマは明知鉄道発足の頃にさしかかり、列車の登場が楽しみだ。

  • 明知鉄道の位置(国土地理院地図を加工)

明知鉄道は岐阜県東部の恵那駅と明智駅を結ぶ第三セクター鉄道。中間駅が9駅あり、恵那~明智間の路線延長は25.1kmとなっている。途中の飯沼駅と阿木駅は中津川市にあり、他の駅はすべて恵那市にある。恵那駅でJR中央本線と接続し、名古屋駅から快速で1時間ほど。特急「ワイドビューしなの」は上下各3本が恵那駅に停車し、名古屋~恵那間は約45分。明知鉄道は名古屋圏から出かけやすいローカル鉄道といえる。

明知鉄道は1985(昭和60)年まで国鉄明知線だった。赤字を理由に廃止対象路線となり、岐阜県、恵那市、中津川市と地元企業による第三セクター鉄道会社を設立し、現在に至る。1987年から地元特産の寒天などを使った「寒天列車」の運行を開始して話題となった。現在も明知鉄道の食堂車として運行されており、「きのこ列車」「じねんじょ列車」「升酒列車」などの運行で人気に。食事サービス付きの観光列車の先駆け的存在といえる。

NHK朝ドラ『半分、青い。』は1971年生まれの鈴愛(すずめ)が主人公。病気で片耳の聴力を失ってしまうけれども、明るくひたむきに生き、漫画家として成長する……という物語だ。時代背景として、オイルショックが終わり、バブル景気が始まり、リゾート法の成立によって各地でリゾート乱開発騒動が起きた。1967年生まれの筆者にとっては、歌謡曲、テレビ番組など懐かしい言葉がたくさん出てくる。鈴愛の幼なじみ、律(りつ)役は『仮面ライダー電王』だったし、律のお母さん役は『時をかける少女』だった。どちらも時間を飛び越える役だった。この組み合わせも感慨深いものがある。

ドラマのロケ地は岐阜県恵那市岩村町の商店街だという。最寄り駅は明知鉄道の岩村駅。そこで明知鉄道は『半分、青い。』のラッピング車両を9月29日まで運行するほか、4月19日からドラマにちなんだ記念スタンプを岩村駅に設置している。

期間限定の図柄のフリーきっぷも発売された。硬券で、券面の半分に青空が描かれ、「青い岐阜」というキャッチコピーが添えられている。ドラマのファンになったら、この"半分青い"フリーきっぷを手に、ラッピング車両でロケ地を訪れる旅を楽しんでほしいとの気持ちが込められているようだ。ロケ地聖地の気分も盛り上がる。

さて、本稿執筆の4月23日時点で、ドラマの中の鈴愛は高校3年生の夏である。18歳とすれば1988年。明知鉄道が発足し、寒天列車も実施されている。そうなると、鉄道ファンとしては、いつ明知鉄道の駅や列車が登場するかに関心が向く。主人公たちが子供の頃は、まだ国鉄明知線だった。その再現ロケは難しかったと思う。旧国鉄車両が残る路線に差し替えないと、さすがに時代考証として無理があっただろう。現在、明知鉄道で運行されている車両はすべて1998年以降に製造されている。この車両を登場させるには、物語をあと10年ほど進めなくてはいけない。

しかし、車両までこだわらないということであれば、今週にも登場するかもしれない。ドラマの公式サイトによると、今週(ドラマ第4週)は鈴愛が律と名古屋に出かける場面があるようだ。今後、鈴愛が上京するとなれば、故郷を去る場面、里帰りする場面などで岩村駅や明知鉄道の列車が登場するかもしれない。車両外観は時代に合わなくても、車内の描写はできる。

2013年の同時期に放送された『あまちゃん』では、三陸鉄道が随所に登場して鉄道ファンを楽しませてくれた。その後はロケ地の駅で長時間停車するなどのサービスを実施しており、観光面でかなりにぎわったという。明知鉄道もまた、これまで以上に注目されるだろう。そして『半分、青い。』のブームが落ち着いた2020年から、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が始まることも決まった。主人公は明智光秀。明智氏は明知鉄道の終点、明智駅のあたりが出自といわれている。明知鉄道にチャンスがやってきた。