受験に臨む親の心構えについて西村則康氏にきいた

一時の過熱傾向は落ち着いてきたとはいえ、首都圏、関西圏では依然関心の高い中学受験。小学生が1人で対策をできるわけもなく、「中学受験は親の受験」とも言われているが、わが子に受験をさせたいと思った時、まず何をすればよいのか。受験勉強を始める前の心構えと準備について、30年以上にわたって中学・高校受験指導を行い、「塾ソムリエ」として塾の活用方法等を指南している西村則康氏に話をうかがった。

中学入試の8割以上は学校で習わない内容

まず、受験準備のために塾へ通うのは必須です。なぜなら、高校入試はどんな上位校であっても6割は学校で習った範囲から出題されますが、中学入試は学校の教科書に出ているレベルのものは1~2割しかない。しかも「塾に入れたから、あとは塾任せ」と安心できるわけではありません。1週間の学習内容をチェックして家庭学習のフォローをするのは親の仕事です。中学受験塾のカリキュラムや宿題の多さを小学生1人に抱えさせるのは困難だからです。

中学受験塾では小学校で習うことの何倍もの知識や解法のパターンを身につけるため、3年生の終わりの2月頃から本格的な準備に入るのが一般的です。ここから6年生の1月までの3年という長期間、塾を中心とした生活になります。親も覚悟が必要です。

むしろ3年生までは基礎的な学習でいい

大手進学塾の中には低学年対象のプレコースを開設しているところもありますが、3年生までは中学受験対策のための塾は必要ありません。それよりも大切なのは読み・書き・計算という基礎力を身につけさせておくことです。

受験には処理スピードが求められますので、速く読める、速く書けるというのは重要です。読みやすい字が素早く書けるか、フリーハンドで直線や円が描けるか。これは普段の宿題のやり方をご家庭でチェックしてみてください。また塾に入ると学校の先生のようにゆっくり話してくれる先生ばかりではないので、家庭でも話すスピードに気をつけてみてください。子どもの聞くスピードは親の話すスピードにとても影響されます。

親がやるべきは子どもを励まし続けること

計算力をあげるという点ではそろばんをやらせるのもいいですね。そろばんは、10よりいくら大きいか小さいかという10進法の感覚が身につきます。算数の先取りをさせておくという点では「公文式」の教室や教材を選択するのもよいでしょう。プリントに丁寧に字を書く練習にもなります。

受験に成功するご家庭は、勉強をつらいと思わせない、明るい雰囲気作りができています。お子さんが自分の成功を予感できるような「あなたならできそうね! 」という励ましはご家庭でしかできません。楽しく中学受験の勉強をやってきた子は「学ぶことは楽しい」という体験があるので、中学、高校でも伸びていきます。勉強の指導はプロに任せて、親は子どものモチベーションを上げるための声をかけ続けること、これが一番大切な心構えといえるでしょう。

次回は気になるイマドキの中学受験の傾向について、引き続き西村氏のインタビューをお届けする。

西村則康

首都圏・関西圏の難関校に2500人以上を合格させてきた実績を持つ、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。中学受験情報サイト『かしこい塾の使い方』は16万人の読者が参考にしている。