なぜ少女は、ネット上で出会った見知らぬ男性と会おうと思ったのか

小説家の小池一夫氏が、出会い系サイトを通じて知り合った男性に誘拐された岡山市の女子中学生について「倫理観も貞操観念もない女」と批判したTwitter投稿が議論を巻き起こしている(その後、小池氏は自身のブログにて謝罪)。報道によれば、少女は出会い系サイトに「家出をしたい」と投稿。これがきっかけで知り合った男性からその後のLINEのやりとりを通じて誘拐されたという。

「少女に責任はない」などの意見が寄せられる中、なぜ少女がネット上で出会った見知らぬ男と会おうと思ったのか、理由が知りたいと考える人も多いのではないだろうか。その背景を、ネットと子どもの関係に詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。

家出したい女の子が書きこむ「神待ち」掲示板

少女が書き込んだとされる出会い系サイト。「彼女の場合はわからないが」と前置きした上で高橋さんは、「家出をしたい女の子が家に泊めてくれる人を募集するサイトは山ほどある」と答えた。ネット上では、このような女の子の行為を「神待ち」と呼ぶ。その行動は大胆に思えるが「誰かに話を聞いてもらいたい、などの気軽な気持ちだったりする」とのことなのだ。

さらに未成年の女子が、このような気軽な気持ちを実行に移してしまうネット上のサービスは、ほかにもたくさんある。「神待ち掲示板」のような出会い系サイトもあれば、Twitterでのやりとり、それに異性との出会いの場を提供する「出会い系アプリ」と呼ばれるものなどだ。「『出会い系サイト』は規制がかけられているため少なくなってきているが、規制されていない『出会い系アプリ』は増えている」と高橋さん。さらに実際は出会いの場を想定しつつも、「LINEのIDを交換する」という名目で設置されている「ID交換掲示板」というものもあるという。

LINEのID規制は意味がない!?

このような気軽な出会いの場で異性と知り合ったあと、つながっていくのが今回の事件の発端ともなったLINEでのやりとりだ。「文字でのやりとり、通話、動画や写真の送信が手っ取り早くできるツール」として重宝されているのだとか。しかし、18歳未満のユーザーは、相手を友達登録するためのID検索が利用できないはずだ。どうしてこのような事態になっているのか。

高橋さんは、「ID検索ができなくても、QRコードで友達登録ができます」と答えた。LINEのサービスには、自分のQRコードを表示したり、相手のQRコードを読み取ったりする機能がついている。QRコードのスクリーンショットなどを送りあえば、見知らぬ相手とLINEで友達になるのは容易なことだという。

ネットでやりとりしたら「友達」という意識

未成年の女子がアクセスしやすい異性との出会いの場。最近の少女たちにはこのようなサービスが「出会い系という意識すらない」とのことだ。「小学生でもSNSを使い、女子高生に関してはネット上で知り合った人と会うことは普通のことになっている。ネット上の彼氏というのも存在し、"ネットでやりとりをしたら友達"という意識がある」と話した。

高橋さんは、いじめにあったり、仲のいい友達がいなかったり、周囲に知られたくない悩みがあるなどの場合、話せる相手を探す場として「ネット上の出会い」があると推察する。はじめは気軽な気持ちでやりとりをするが、LINEなどでの会話が進むにつれて、信用に値する相手へと認識が変わっていくのだ。

子どもたちがこのような被害にあわないためにはどうしたらいいのか。大切なことは「ネット上で知り合った人には会わない」という基本を徹底して子どもに教えること。そして通信機器にできる限りのフィルタリングをかけ、日頃から会話を増やして子どもの様子を把握しておくことだという。

日々変化を遂げるネットの世界。子どもたちの心理を知るためにも、大人が理解していく必要があるようだ。

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