幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第48回は俳優の豊川悦司さんについて。現在、再放送中の『愛していると言ってくれ 2020年特別版』(TBS系)に主演する豊川さん。この再放送にTBSさんからのどんなメッセージが込められていたのでしょうか。一報を聞いたときに歓喜の悲鳴をあげてしまいました……。今から25年前、まだスマホもなかった時代に当時の若者(私含む)の間で、一斉風靡した作品です。すでに数話が放送されて、SNSでトレンド入りするほどの話題に。試聴した、今の若者たちの目にどんな印象が残ったのかが気になりますが、作品熱血ファンの私から見どころをいくつか。

豊川悦司

"不自由さ"が二人の愛を倍増しにする

耳の聞こえない画家、榊晃次(豊川悦司)と劇団に所属する女優、水野紘子(常盤貴子)。二人は運命的な出会いを経て、一緒に暮らすようになった。ただ晃次のかつての恋人や、紘子に片思いをする幼なじみたちの存在が少しずつ恋の歯車を狂わせていく。

というのが『愛していると言ってくれ 2020年特別版』のあらすじだ。作品の大きなカギになるのは、晃次の耳が聞こえないこと。電話もできないし、まともな会話は不可能だ。でも二人はそんな障害を超えて、向き合う。紘子は慣れない手話を勉強して、伝えたいことはファックスや手紙で送る。

すぐにスマホで連絡が取ることが当たり前で育った、平成生まれから見たら疑問に思うこともたくさんあるだろう。でもこの作品ではそういった不自由さに注目してほしいのだ。 二人は普通のカップルに比べたら、愛を育んでいく速度が遅いかもしれないけれど、そのぶん深い愛を構築しているように、私の目には映る。例えばあなたは大事な人から直筆の手紙をもらったことがあるだろうか? そんな返事を書かなくてはいけないものは、面倒くさいと思うかもしれないけれど、スマホで世界中の誰もが持てるフォントで送信する文章に、100%の愛情は通っているのかと疑問になる。24時間肌身離さず持っているスマホ、それは便利な連絡ツールに過ぎない。そんなツールを通して送られた文字は後世まで残したい文章ではないと思う。

不便なファックスを何通もやり取りをして、いつも目を合わせて手話で会話を重ねる晃次と紘子。それでも会おうとすると、相手を好きと言う気持ちばかりが先行して、すれ違いを繰り返してしまう。このすれ違いも愛がある証拠。二人はドラマの中でやたら疾走を繰り返し、自分の気持ちを伝えていく。このじれったさが25年前の作品の醍醐味。韓流ドラマに少し似た、レトロなドラマティックさがそこかしこに溢れている。

25年以上、現役スターであり続ける原点がここに

それからこのドラマの魅力を挙げるとすれば、なんと言っても豊川悦司さんのエロかっこ良さ。ここに執着する。同じタイミングで『キムタク』と呼ばれた木村拓哉さんも大きないい男ブームを起こしていたけれど、また違ったベクトルの満足度があった。

まずは186センチの長身と大きな手。晃次はいつもオーバーサイズのシャツに、ゆったりとしたパンツにサンダル。簡単そうに見えて、凡人が着たら事故になりかねないコーディネートをまるでユニフォームのようにさらりと着こなす。そして、やたら走っていた。紘子もそうだけど、ドラマ内で二人はやたら走る。まるで二人の間には存在しない”音”を、走ってお互いに伝達しているかのように、常に走り続けている。放送時期は夏、きっとキツかっただろうに。

話をトヨエツに戻そう。晃次は公園へスケッチに行くときに、いつも自分でおにぎりを握っている。それも大きな手で握った、ビッグサイズだ。豊川さんに限らず、手が大きくて綺麗な男性はそれだけで魅力を増す。こちらを包んでくれるような大らかさを感じるからだ。身長と大きな手。この2つの武器を手に晃次の魅力の幅をさらに広げている。他にも爬虫類顔とか、やたら仕草がエロいとか並べたいことはたくさんあるけれど、本日はこの"大きい"ことを推したい。

この名作を久々に見ていて思ったことがある。ドラマオタクなので

「あー、このバイプレイヤー、今どうしているんだろう?」

と、オープニング映像に名前の上がらない人たちを見る。令和の現在、ほぼ顔を見ない人がほとんどだ。それだけ芸能界が厳しい世界なのだと思い知らされる。でもそんな戦々恐々とした世界で、豊川さんも常盤さんも第一線を走り続けている。きっと彼らには凡人には察知できない、底知れぬ努力と才能が詰まっているのだと、改めて思い知った2020年の6月。またこのドラマを見ることがだから、自粛も悪いことばかりではない。