35歳以上の結婚・出産が増えています。人生の持ち時間は長くなったけれど、生涯収入の手取りは減少傾向、社会の変化も激しい時代です。常識にとらわれ過ぎないお金との向き合い方を考えます。

キャッシュフロー表を作ってみよう

アラフォー結婚では、住宅購入費や教育費といった大きな支出が後ろ倒しになりがちなため、しっかり家計管理をしないと大変ですよということを第1回で書きました。

また、住まいをどうするかにより収支が大きく違ってくることを前回、説明しました。将来、困ったことにならないように、目の前のやりくりのみならず、長期間での収支がちゃんと取れるかを確認しておきたいもの。その判断の材料となるのがキャッシュフロー表です。

キャッシュフロー表は、毎年の収入と支出(生活費、教育費、住居費など)を予測して、1年ごとの収支がどうなるか、その結果10年後、20年後の収支がどうなるかをシミュレーションするものです。

相談料を払ってファイナンシャルプランナーに作成してもらうこともできますし、無料のソフトを使い自分で作成することもできます。無料のソフトとして、「知るぽると」(金融広報中央委員会)の「生活設計診断」などがあります。

「知るぽると」(金融広報中央委員会)の「生活設計診断」

ただし、キャッシュフロー表の注意点は、前提となる数字や、変動率(物価や収入の変化の割合)により結果が大きく違ってくることです。入力した数字よりも実際の収入が少なかったり、逆に支出の方が多かったりすると、データ上では大丈夫だったはずのキャッシュフローが実際には赤字になります。当然といえば当然ですね。つまり入力する数字や変動率の設定が重要なのです。

一度ぜひ、無料のソフトを使って入力してみてほしいのですが、数字をどうするか、けっこう迷うものです。入力する数字についてあれこれと考えることは今後の生活について考えることでもありますから、この作業をすることもとてもいいヒントになります。

収入は増えないことを前提に

アラフォー結婚に限らず、キャッシュフロー表を作る際は、次のことを考慮しましょう。

  • 収入…シミュレーションソフトにより、額面の収入を入力すると自動的に税金や社会保険を計算して差し引いてくれるタイプと、最初から手取り収入を入力するタイプがあります。無料のソフトは手取りを入力するタイプがほとんど。年末にもらう源泉徴収票に記載された収入金額から所得税・社会保険料をひき、さらに毎月の給与明細で住民税を確認して1年分を合計して引けば手取り収入がわかります。面倒な人は、源泉徴収票の収入金額に0.8を掛けて手取り額を出してください。そして今後の収入の予測ですが、これはとても難しいもの。仕事上の立場や勤務先の経営状況にも左右されますし、第3回で書いた通り50歳前後で頭打ちになる人が多いのが現状です。お金の計画を立てる際の鉄則は、収入は少なめに、支出は多めに見積もること。予測とのズレによるリスクを減らすためです。収入は現状の横ばいで入力しておきましょう。変動率が設定されていて、現在の収入を入力すると自動的に少しずつ増えていくタイプのソフトもあります。その場合は、その点をしっかり把握しておきます。

子どもの費用は平均値以上に

共働きで子どもを持つ場合の保育料。これが意外な盲点です。子どもの教育費は進学状況に応じて、公立、私立などによる目安の金額があり、進路を選択すると自動的に支出として計上されるソフトが多いようです。2つ注意点があります。

  • 首都圏で生活している人は教育費を多めに

  • 共働きは教育費以外に保育料がかかる

教育費の平均値は、全国的な家計調査をもとにしたもので、キャッシュフロー表作成のソフトでも使用されていますが、東京で子ども2人を育てている私自身の正直な実感としては、もっとかかる! もちろん、塾や習い事は最小限に抑えるという考え方もあります。子どもをどう育てたいかは人それぞれ。しかし首都圏に住む人なら平均値よりも多めに入力するのが現実的です。

また、アラフォー結婚で子どもを持つなら共働きが当然だと私は考えています。その際の経費である保育料がキャッシュフロー表作成のソフトでは考慮されていません。というのも保育園の保育料は、子どもの年齢により、自治体により、所得により、違ってくるからです。この部分は、自分で金額を入力しなければなりません。

また小学校に上がった後は放課後、学童保育に通わせることになります。学童保育の保育料は公的なところならそう高くはありませんが民間なら数万円かかります。いわゆる学校教育費の他に、共働きはこういった保育料がかかるわけです。目安として2人とも正社員の場合は、子どもが生まれてから小学校を卒業するまでの間、子ども1人当たり月3~5万円程度(収入が多い人ほど多めに)の保育料を計上しておきましょう。住んでいる自治体のホームページで確認することができるなら、それを入力します。

平均値を活用しつつ、平均値以上かかる費用は別途項目を立てて入力したり、生活費に加えたりしながら、これからの生活になるべく近い数字を入れて、わが家のキャッシュフロー表を作るのがポイントです。エクセルが得意な人なら自分で作ってしまってもいいですね。

そして、ほとんどのキャッシュフロー表ソフトでは、老後までの数字が出てきますが、現時点においてしっかり確認したいのは65歳までの状況です。この間に赤字にならないか、65歳までに積み上がるお金はどれくらいあるかをチェックします。

もし大幅な赤字になる、65歳時点でほとんど貯蓄がないという結果がでたら、今後の支出についてよく検討する必要があります。余裕があるという人も、入力モレの支出がないかを確認しましょう。キャッシュフロー表を使って、これからのお金の流れを俯瞰し、うまくいかないところは現実の細部に戻って、どうするかを考えるということです。

キャッシュフロー表は一度作ったら終わりではなく、状況が変わったときには修正していくことで、今後の収支について道しるべの役割を果たしてくれます。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。