35歳以上の結婚・出産が増えています。人生の持ち時間は長くなったけれど、生涯収入の手取りは減少傾向、社会の変化も激しい時代です。常識にとらわれ過ぎないお金との向き合い方を考えます。

会社員の賃金は50歳前後で頭打ち

アラフォー結婚の2人が、20代から30代前半で結婚した夫婦と同じように出産や住宅購入などのライフイベントをこなそうとすると、人生後半に出費がかさむことになります。このことは第1回の「アラフォーで家族になる幸せとリスク」でも説明しました。今回は、大きな支出や日々の生活を支える収入について考えてみます。

日本の会社員の給料は年功賃金と呼ばれています。年功賃金とは、年齢があがり勤続年数が長くなるにつれて給料が増えていく仕組みです。景気が悪くなった1990年代からは、世界的な競争の中で企業が生き残るには実力重視にするべきだと成果主義賃金も取り入れられましたが、年功賃金は根強く残っています。ただし、定年までずっと増え続けるのではなく50歳前後にピークを迎えるのが一般的です。

下は、賃金構造基本統計調査(厚生労働省)から抜粋したデータです。

(※いずれも「平成25年賃金構造基本統計調査(全国)」(厚生労働省)の「学歴、性、年齢階級別賃金」より。)

このグラフの賃金は平成25年6月の所定内給与額です。つまり残業代や休日出勤手当などを除いた給与の額。男女いずれも学歴が高いほど賃金は高く、男性の方がくっきりしたカーブを描いています。大学・大学院卒の男性は50~54歳の52万7800円をピークにその後は賃金が減少しています。女性はそもそも男性より賃金が低く、50代以降に減少するものの男性ほどではありません。

これは平均ですから、実際には、会社ごとに、個人ごとに違っています。ただし、出世して役職についたなどというケースでなければ、今後の収入を考える際の参考になります。

"下り坂"を前提とした資金計画を

"下り坂"を前提になんて、暗い話になってしまいますが、大きな支出については、今後の収入の見通しは、少な目に見積もっておく方が安全です。特に気をつけたいのが、住宅購入の際の住宅ローンの借入額です。余裕があれば笑って済ませることができますが、お金が足りなくなったら、せっかくの2人の幸せも吹っ飛んでしまいます。

40代は働き盛り。若すぎないけど、年をとりすぎてもいない、まだまだ体力もあります。プライベートも充実させたいと考えるのは当然ですが、その後には"収入の下り坂"が控えていることを意識して資金計画を立てたいもの。自分の場合は大丈夫と誰もが思ったりしますが、50歳を超えて、仕事で成果を上げ収入を大きく増やせる人は現実にはそう多くはありません。

さらにショッキングな話もあります。

会社員の賃金カーブはフラット化の流れ?

年功による賃金カーブは、若い世代ほどフラット化していくという説もあります。つまり、勤続年数が長くなっても、あまり賃金が上がらないかもしれないのです。以前、企業の給与体系についてコンサルティングをする立場の方に取材したことがありますが、社員のやる気を損なわず、つまり仕事の成果にはちゃんと賃金で報いつつ、企業全体として人件費を抑える方法を考えているということでした。根強く残る日本企業の年功賃金ですが、上昇率は抑えられることも考えられます。

グラフをみると、男女ともに40代は賃金が大きく上昇する時期にあたります。これまでのように40代で賃金が増えるのか、勤務先の給与体系について、また自分のこれからの仕事への向き合い方について、一度真剣に考えてみるべきでしょう。

共働きは当たり前

だからこそ2人というわけです。2人あわせれば合計の収入は増えますし、賃金カーブの50代以降の下り坂の角度もだいぶゆるやかになります。また、収入が多いうちに計画的にしっかり貯めておくこともできます。

アラフォー結婚では、女性も正社員のケースが多いと思います。仕事はぜひとも続けたい。アラフォー結婚で、出産や住宅購入など大きな支出を予定しているなら、共働きは当たり前です。

会社員の定年は現在60~65歳が一般的ですね。アラフォーから20~25年が現役時代、その後に約20年(女性はもっと?)のセカンドライフがあります。

この期間を2人でどう過ごすのか、どれくらいのお金が必要になりそうか。その前提として、2人の収入と働き方についてもしっかり考えておきたいものです。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。