『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)という、テレビドラマ化もされたベストセラー本で有名になった心理学者アドラー先生は「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」と言いました。

さきごろ、「ストレスを感じるエピソード」というアンケートをマイナビニュースで実施しました。回答で多かったのは、やはり人間関係でのストレスでした。
※調査期間:10月11~13日、マイナビニュース会員の男女3,000人対象

「上司とあわない」(20代女性)、「同僚のグチに、同意を求められる」(50代男性)、「同僚が仕事を真面目にしない」(40代男性)、「上司から求められるノルマがストレス」(40代男性)、「職場に働かない人が多い」(30代男性)、「部下の成果を自分の成果のようにアピールする上司がいる」(50代女性)というコメントがありました。

いかがでしょう、共感できる人も多いのではないでしょうか?

  • ストレスを人間関係で感じていますか?

ストレス源を解消できない

人間関係のストレスは、コミュニケーションを通じて、ストレス源になっているところを、相手に改善してもらうのが理想です。

しかし、組織にはヒエラルキーがあります。上の立場の人に意見するのは難しいという方も多いのではないでしょうか。

また職場は狭い世界ですから、「たとえ同僚や後輩だとしても、なかなか相手に伝えづらい」という方もいるかもしれません。

ストレスを溜めない人の特徴

色々な企業で人材開発やストレスマネジメントのコンサルティングをしていると、同じ、しんどい上司のいる環境下でも「ストレスを強く感じ、溜めこんでしまう人」もいれば、「ストレスをあまり溜めこまない人」もいることに気づきます。

その違いは(細かくいうと沢山あるのですが)、大きく以下の2点にあるように思います。

1.相手への期待を過度に持たず、「受け流す適当さ」を持つ

ストレスを溜めやすい人は、「こうあるべき」という相手への期待が強い生真面目なタイプの人が多いように感じます。

例えば、「上司Aさんが飲み会にいくとグチばかりきかされてウザイ」という状況がストレス源だったとしましょう。

これは、「上司は、グチをいうべきではなく、部下たちの話を聞くべき立場である」という自分の理想にこだわっているからこそ、現実とのギャップがストレス源になっているのです。

もちろん、上司が自分の理想通りに変わってくれれば、それにこしたことはありません。しかし、現実的には、伝えることすらも難しい状況にある場合もあるでしょう。

課題の分離でストレスを受け流す

こういった「自分では、どうしようもない環境下」において、ストレス処理に長けた人は、「自分がコントロールできること、コントロールできないことを分け、自分のできることに集中する」という「課題の分離」を行っています。

上記でいえば、はじめに「Aさんのグチ吐きをなくすのは、そもそもムリ。上司=全員が優秀であるということは幻想」といった認識をもち「他人は自分の理想通りにはならない」と割りきります。

そこで、「聞かざるをえないときは、きいたフリをして受け流そう」「Aさんのグチがはじまったら、シレっと他の人たちのところに移動してしまおう」といった形で、自分がコントロールできることだけに集中してしまうのです。

一見すると冷たく見えるかもしれませんが、こういった「受け流す適当さ」も、時に必要です。

2.真正面ではなく、「自分に都合よく解釈する」

ストレスを溜めやすい人は、真正面からその状況を受け止める傾向が見られます。例えば、「職場で、同僚が仕事を真面目にしていない」と感じたとします。それを真正面から受け止めてしまえば、腹も立ちますよね?

ストレス処理に長けた人は、こういった場合、無理やりにでも、自分に都合よくポジティブに解釈する方が多いようです。

リフレーミングで無理やりポジティブにする

心理学で「リフレーミング」といいますが、例えば、「やる気のない人をやる気にさせるには、どうしたらいいのか?

自分が将来、マネジメントする立場にたつ際に役立てるための実験台としてこの状況を活用しよう」といったように、自分にとってのポジティブな意味づけを、無理やりにでもしてしまうのです。

いかがでしょう? 些細な工夫に思えるかもしれませんが、かなりストレスの軽減に役立ちます。ぜひ実践してみてください。

執筆者プロフィール : 阿部淳一郎氏

ラーニングエンタテイメント 
代表取締役

若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタント。早稲田大学教育学部卒。筑波大学大学院(ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。社会人教育を行う東証一部上場企業等を経て2004年に起業。「メンタル不調者を減らし、若者の能力を引き出す」をコンセプトに人材開発業務に従事。大企業から中小・ベンチャー企業、学校、行政まで研修登壇実績は約1500本、コンサルティング実績30社。サンフランシスコ・シリコンバレーへも事業展開中。大学での就職活動領域における講師歴も長い。『これからの教え方の教科書(明日香出版社)』など著書3冊。『NHK』『日経新聞』『読売新聞』『日経アソシエ』『週刊SPA!』など取材実績も多数。