JR東海は14日、リニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」の工事現場で「さがみはらリニアコンサート」を開催した。あわせて同駅の工事現場も報道関係者らに公開された。

  • 地下空間の音響が印象的なコンサートの会場

リニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮称)」は神奈川県相模原市にあり、JR横浜線・相模線と京王相模原線の橋本駅から徒歩圏内にある。大部分において旧相原高等学校の土地を活用しており、開削工事による建設が進む。現在、駅中央部の最深部まで掘削が進み、開削工事の箇所はほぼ掘り進められた状態だという。

■地下約30m・横幅最大50m、駅の延長は約680mの規模に

「神奈川県駅(仮称)」の東端部は第一首都圏トンネル、西端部は第二首都圏トンネルにそれぞれ接している。駅の一部分は国道16号と交差するため、非開削工事により建設されている。駅は地下約30m・横幅最大50m、駅の延長は約680mの規模になる。駅自体は3層構造で、ホームは2面4線となる計画で工事が進む。

  • 法面エリアの奥に支保工エリア

  • 地下深くにコンサート会場が設けられる

  • 大量の鉄骨を使用した支保工

  • 支保工を設置しながら工事を進める

近接構造物のある箇所については、連壁を打設してつくるという、都心部では一般的な工法を採用。土を抑えるための仮土留壁を構築し、それを支えるための支保工を設置しながら段階的に掘削を行っている。

「神奈川県駅(仮称)」は大半の箇所で高校跡地の広い土地を活用できるため、法面で一定の深さまで掘削し、そこから仮土留壁を構築、それをアンカーで支えながら段階的に掘削する工法も採用している。工事現場は地下水が低く、地層も関東ローム層であり、固い安定した地盤に。その下の砂礫層は地盤の強度が高い地層となっている。

現在は深さ約30mまで掘り進められた。今後、底部から駅の構造物を構築していくことになる。法面で掘削したエリアは、駅構造物を構築しやすくなっている。

  • 駅の構造がどうなるかをJR東海の吉川太郎担当課長が説明

  • 法面掘削エリアの土留壁

  • 支保工エリアのホーム予定地

  • この土を埋め戻しに使用する

駅構造物を構築した後、土を埋め戻す。「神奈川県駅(仮称)」で埋め戻す土は、工事現場の敷地内に仮置きしてある。ここに土を置けることで、移動のコストを削減できるとのことだった。

地上から地下を見ると、かなり深くまで掘り進められたことがわかる。坂道や階段を通って地下に行くと、法面で掘削したエリアは空が広く見える。一方、仮土留壁と支保工を使用したエリアは鉄骨を多く使用しているとわかる。

■広い地下空間の音響を生かしたコンサート、丹羽社長も参加

「神奈川県駅(仮称)」の地下空間はかなり広い。この地下空間の品川寄りにステージを設け、「さがみはらリニアコンサート」が開催された。

JR東海代表取締役社長の丹羽俊介氏は、JR東海音楽クラブの会長も務める。「さがみはらリニアコンサート」で挨拶した丹羽社長は、「地域の皆様のおかげで、なんとか工事が進められています」と感謝の意を述べた。相模原市長の本村賢太郎氏も挨拶し、「相模原でしか味わえないコンサートをご堪能いただきたい」と話した。

  • JR東海代表取締役社長の丹羽俊介氏

  • 相模原市長の本村賢太郎氏

JR東海音楽クラブの演奏では、丹羽社長もトランペット奏者として参加した。同クラブはJR東海や関連会社に勤める幅広い年齢の従業員がメンバーになっている。当日は各メンバーが仕事で着用している服装で舞台に立った。続いて神奈川県立相原高等学校吹奏楽部、神奈川県立相模原弥栄高等学校吹奏楽部の演奏が披露された。

演奏終了後、JR東海の丹羽社長と、相原高校吹奏楽部の佐藤玲さん、相模原弥栄高校の德江音羽さんが取材に応じた。相原高校の佐藤さん、相模原弥栄高校の德江さんは地下空間での音響の良さを評価。佐藤さんは空間の良さについても触れ、「ホールで吹いているようです」と話した。

  • JR東海音楽クラブの演奏。それぞれ仕事時の服装を着用

  • 相原高校の演奏

  • 相模原弥栄高校の演奏

  • 各演奏者の代表

丹羽社長は中学生時代に吹奏楽部へ入部し、そこで音楽にのめり込んでいったという。なお、JR東海音楽クラブは国鉄時代の1963(昭和38)年から存在しており、1964(昭和39)年の東海道新幹線開業の式典でも演奏したとのこと。

「さがみはらリニアコンサート」は、リニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」の大きな地下空間で、演奏の響きを堪能できたコンサートだった。