Microsoftは現地時間2023年9月21日、「Surface Laptop Go 3」および「Surface Laptop Studio 2」を発表し、日本国内でも2023年10月3日から販売を開始。Surface Laptop Go 3は142,780円から、Surface Laptop Studio 2は336,380円からだ(いずれもMicrosoft Storeの税込み価格)。
合わせて日本マイクロソフトは10月3日、米国本社の担当者Pete Kyriacou氏を招いて、記者向けのラウンドテーブル&タッチアンドトライを開催した。ここではPete Kyriacou氏をはじめとするSurface担当者による説明内容を紹介する。Surfaceシリーズの革新性について「我々の焦点は常にイノベーション。(今回のSurfaceシリーズで)重視しているのは顧客の声に耳を傾けること。(消費者やビジネスユーザーが)変化を望んでいる場面だけではなく、変えてはいけない部分を把握する際にも役立つ」(Microsoft CVP, Microsoft Devices, Pete Kyriacou氏)と語る。
各Surfaceの概要は別記事『軽量エントリーノート「Surface Laptop Go 3」、性能強化で満足度アップ』、『Surface Laptop Studio 2、2倍高速になりIntel NPUも搭載、ポート不足にも対応』をご覧いただくとして、今回の催しでMicrosoftは、Surfaceシリーズの設計で重視しているのは「アクセシビリティ」「サステナビリティ(持続可能性)」の2つと述べている。
アクセシビリティについては、本社内にあるInclusive Design Lab(インクルーシブデザインラボ)にて障がい者にも適応するデバイスを設計し、Surface Laptop Studio 2が備えるPrecision Haptic Touchpad(プレシジョンハプティック タッチパッド)と、OSもしくはアプリのAdaptive Touch Mode(アダプティブ タッチモード)を組み合わせれば、指先が欠損しているユーザーでもマウスカーソルを自由に操作できるとした。健常者でも右クリック操作と判断する領域の調整やダブルクリック速度の調整といった恩恵を受けられる。
「ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって、あらゆる人々が利用しやすいタッチパッド体験を生み出している。人生のさまざまなニーズのみならず、年齢を重ねる世代を超えたユーザーへの配慮」(Kyriacou氏)であると、一連のソリューションをSurface Laptop Studio 2に導入した理由を説明した。
後者のサステナビリティは、Microsoftが2030年までをゴールと定めた目標のひとつ。二酸化炭素排出量の削減を実現するため、Surfaceシリーズは「環境負荷の少ない材料を使用し、修理可能で堅牢なデバイスを作っていくことが大事」(Kyriacou氏)とし、目標に近づけようとしている。もっとも、Microsoftは以前からサステナビリティ活動に取り組んでおり、活動の幅がSurfaceシリーズにも適用されたと考えるべきだろう。
Kyriacou氏のプレゼンテーションでは、Microsoft自身の戦略もあってAI機能、特にWindows CopilotやMicrosoft 365 Copilotを強調していたが、ここではデバイスに絞ることにする。
Surface Laptop Studio 2に関しては、Adobe Photoshopのデモンストレーションを交えつつ紹介。「将来的にはスタジオモードでペンを使用し、背景除去も容易に実行可能。Adobeの生成AI『Firefly』でより多くの背景を生成できる」(Kyriacou氏)と。クリエイティブな活動に十分応えうるとした。
一方のSurface Laptop Go 3については、携帯性と性能の両立を実現したとも述べている。
「SurfaceのノートPCは高い顧客満足度を示している。我々はPセット(Product Satisfaction Score:製品満足度スコア)と呼んでいるが、顧客が『タイピング』『画面サイズ』『携帯性』について何を望んでいるのか把握してきた。以前のSurface Laptop Studioはバッテリー寿命やパフォーマンス、USBポートの増加を求められており、今回、初代機にはなかったUSB Type-A、microSDカードスロットを追加している」(Kyriacou氏)
外見から見えない部分では、Intel NPU(Neural Processing Unit)を搭載しているのも特徴のひとつ。
「Intelから初めて出荷されるNPUをWindowsとSurfaceで初めて使用する。NPUはエッジベースでリアルタイムのAI処理を行い、カメラのオートフレーミングによるユーザー追跡や背景ぼかし、視線補正に用いる」(Kyriacou氏)
搭載GPUも、CPU内蔵のIntel Iris Xe、NVIDIA GeForce RTX 4050 6GB、同4060 8GB、NVIDIA RTX 2000 Ada 8GB から選択可能。グラフィック性能を必要とするアプリも難なく動作するだろう。
Surface Laptop Go 3
携帯性を優先するなら、Surface Laptop Go 3は魅力的な選択肢。前モデルからの性能向上や、4色から選べる配色は、自宅からのリモートワーク+週1~2回の出社といったハイブリッドワーク環境でも有用だろう。
個人的には長く2in1のSurface Proシリーズを使ってきたのだが、取材先では机が用意されないこともあり、打鍵に苦労する印象が強い。それでも重さを含めた携帯性を考えてSurface Proシリーズを選択してきたが、Surface Laptop Go 3は約1.13kgと直近のSurface Proシリーズと大差ない。また、クラムシェルの安定感は改めて述べるまでもないだろう。用途しだいではあるが、ハイエンドな処理を必要としないのであれば、コストパフォーマンスにも優れたSurface Laptop Go 3に注目してみてほしい。
さらに国内発売時期は未定だが、「Surface Hub 3」「Surface Go 4 for Business」も実機の紹介と展示があった。前者は50インチオーバーのタッチディスプレイを備える会議用デバイス。50インチモデルと85インチモデルがあり、映し出したコンテンツをWindows 11ベースで操作する。
Kyriacou氏の説明によれば、CPU性能は前モデルと比較して約60%アップ、GPU性能は約160%アップとのこと。ディスプレイを縦置きにするポートレートモードも備え、設置場所に合わせて利用できるだろう。Kyriacou氏は「人間のインタラクション(応答性)やコンタクト(接触)を追求し、遠隔地にいる人々との接続性を高める」と述べ、インク機能やCopilot機能を搭載したMicrosoft Whiteboardによってアイデアの創造を支援するとした。必要に応じて出社する場面も増えてきた現在、前モデル同様にSurface Hub 3の有用性に注目が集まりそうだ。
Surface Go 4 for Businessは、「エンタープライズ市場に焦点を当てたフロントラインワーカー向け」(Kyriacou氏)である。前モデルと比較すると、Intel N200プロセッサによって約80%の性能向上を実現し、最大12.5時間の利用が可能だ。ただし、公式サイトの技術仕様を見ると、メモリーは8GB LPDDR5 RAM以外の選択肢がない。8GBでは心細く、Kyriacou氏の「アプリをスムーズかつすばやく実行できる」は言い過ぎの印象があるのだが、それでもコンパクトなフォームファクターや携帯性を踏まえると魅力的なデバイスだ。なお、一般消費者向けのSurface Go 4が登場するかどうかは分からない。
Surfaceシリーズは熟成期を迎え、代表的なSurface Proシリーズの新モデルは今回登場しなかった。個人的には、日本マイクロソフトによる2023年10月1日からの価格改正に合わせて、Surface Pro 9を購入するか1カ月ほど悩んでいた。主な目的は現在埋め切れていない「ベータチャネルのWindows 11 Insider Preview用デバイス」なのだが、あれこれと逡巡したまま10月を迎えてしまい、購入に踏み切れなかった。
机上の設置場所を踏まえるとSurface Laptop Go 3だが、デスクトップPCの代替としてはSurface Laptop Studio 2へと食指が動く。ただ、Surface Thunderbolt 4ドックを使用しても、接続できる4Kディスプレイは2台まで。既存のマルチディスプレイ環境を引き継げない。これは個人的な事情だが、筆者のような縛りがなく性能を優先するならSurface Laptop Studio 2、携帯性を優先するならSurface Laptop Go 3に注目すると良いだろう。筆者も今回の2製品を横目にしながら、Surface Pro新モデルの動向をうかがいたい。