ドイツ・ベルリンで開催されたエレクトロニクスショー「IFA 2023」では、ワイヤレスオーディオに関連する新しい製品が数多く発表されました。日本にも近々上陸しそうなワイヤレスイヤホン、ワイヤレススピーカーをまとめてレポートします。

  • IFAで見つけた最新ワイヤレスオーディオ製品。左上から時計回りに、AVIOTの新しい完全ワイヤレスイヤホン「TE-Q3」、シュア(Shure)のワイヤレスヘッドホン新機種「AONIC 50 Gen 2」、無線LAN/Bluetooth対応スピーカー「JBL Authentics」シリーズ、JBL初の耳をふさがないワイヤレスイヤホン”「Soundgear Sense」を試聴する筆者

JBL初の耳掛けオープンイヤホン、レトロな立体音響無線スピーカーも

JBLのオーディオ製品を展開するハーマンインターナショナルは、IFAの期間に合わせてベルリン市内でプライベートショウを開催しました。

要注目製品は2つあります。ひとつは左右独立型の完全ワイヤレスイヤホン「JBL Soundgear Sense」。耳に乗せるように装着する“耳をふさがない”オープンスタイルのワイヤレスイヤホンです。ヨーロッパの販売価格は149.99ユーロ(約2.3万円)。8月31日から販売を開始しました。カラバリはブラックとホワイトの2色。

  • JBL初の“耳をふさがないワイヤレスイヤホン”「JBL Soundgear Sense」

イヤホンは耳掛けスタイル。商品パッケージには左右のイヤホンに装着するネックバンドが同梱されています。バンドを首の後ろ側に回すと装着感がさらに安定するので、スポーツなどで身体を動かしながら音楽を聴きたいときに便利です。

  • 耳掛けスタイルだが、左右のイヤホンをつなぐネックバンドを装着できる

骨伝導方式ではなく、耳に近接した位置で16mm口径の大型ドライバーを力強く鳴らす方式なので、オープンスタイルなのに分厚い低音が楽しめます。それでいて耳をふさがないスタイルなので、長い時間音楽を聴いても疲れを感じにくいところも特徴です。

  • IFA会場でサウンドを試聴する筆者。オープン型なのにパワフルな鳴りっぷり

ノイズキャンセリング(NC)機能は搭載していませんが、4つの通話用マイクによりクリアな通話音声をピックアップします。本体はIP54相当の防水防塵仕様。マルチポイント(2台の機器と同時接続する機能)に対応します。本体の詳細な機能設定は、JBL Headphonesアプリから行えます。

もうひとつの注目製品は、無線LAN/Bluetooth対応のワイヤレススピーカー「JBL Authentics」シリーズ。サイズと仕様が異なる3機種がヨーロッパで9月15日に発売を迎えます。最上位の500は629.99ユーロ(約9.9万円)、最もコンパクトな200が329.99ユーロ(約5.2万円)。

  • 「JBL Authentics」シリーズ。左が500、中央が200、右が300

JBLが1970年代にオリジナルモデルを発売したHiFiスピーカー「JBL L100」のデザインを模した、“newstalgia”(newとnostalgiaを掛け合わせたキーワード)をコンセプトに掲げ、レトロなデザインに最新鋭のワイヤレスオーディオ技術を詰め込んでいます。

特に最上位のJBL Authentics 500は、ワイヤレススピーカーとして初めてGoogleアシスタントとAmazon Alexaによる音声操作の「同時待ち受け」に対応。JBL Oneアプリでセットアップを済ませれば、それぞれのウェイクワードで起動して本体の音楽再生や宅内に配置したスマート家電を声で操作できます。

また本体のユニット構成は3.1chですが、発売後に予定しているソフトウェアアップデートにより、Apple MusicやAmazon Musicで配信されているドルビーアトモス(Dolby Atmos)ベースの立体音楽コンテンツが楽しめるようになります。

  • JBLからは、初のドルビーアトモス再生に対応するパーティースピーカー「PartyBox Ultimate」も発表

シュア新ヘッドホン「AONIC 50 Gen 2」登場、さっそく聴いた

シュア(Shure)は9月1日の情報解禁に合わせて、新しいNC機能を搭載するワイヤレスヘッドホン「AONIC 50 Gen 2」をIFAの会場で披露しました。日本でも9月29日に発売されることが決まっており、会場で試聴したインプレッションを報告します。

  • シュアの新しいワイヤレスヘッドホン「AONIC 50 Gen 2」

デザインは初代のAONIC 50とよく似ていますが、イヤーカップ側面のブランドロゴや、長さを調節できるアームの色がシルバーからブラックに変わり、見た目がだいぶ落ち着いた雰囲気になりました。

会場で試聴もしました。初代のモデルと同様にNC効果はかなり高く、アプリから選べる消音効果を「Max」にして機能をオンに切り換えると、隣にいる人の話し声が聞こえなくなるほど強力です。なお、NC設定の中に新しく加わった「MaxAware」に切り換えると、ノイキャンを効かせながら外の環境音が取り込めます。

シュアの担当者によると、コロナ禍の中でAONIC 50をリモートワークに使うユーザーが増え、「ノイキャンをかけて静かな環境で通話をしながら、同時に外の音にも気を配りたい」という声を受けて、MaxAwareを追加したそうです。

会場で試聴したサウンドはバランスがニュートラルで、音楽ジャンルの得手不得手がない印象です。自然な立体感、低音の厚みも心地よく、HiFiクオリティのリスニングに深く没入できるワイヤレスヘッドホンとしておすすめです。

JabraからAtmos/ヘッドトラッキング対応のワイヤレスイヤホン

デンマークのオーディオブランド・Jabra(ジャブラ)が、NC機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンのフラグシップモデル「Jabra Elite 10」を9月に発売します。8月には先行して、スポーツシーンにも最適な防水防滴仕様のハイエンドモデル「Jabra Elite 8 Active」が登場しました。価格はElite 10が249ドル(約3.6万円)、Elite 8 Activeが199ドル(約2.9万円)。

  • ドルビーアトモス再生に対応する「Jabra Elite 10」

  • アウトドアでも使いやすい「Jabra Elite 8 Active」

Elite 10は10mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載。半密閉型のハウジングを採用したことによってクリアで切れ味に富んだサウンドを鳴らせるイヤホンですが、NC機能の遮音性能も一級品。耳に触れる側の本体形状を一新して、楕円形のイヤーピースを採用。耳にぴたりと密着させて環境音の浸入を防ぐ構造とした効果が、高い遮音性能と快適なリスニング感に反映されています。

さらに、Jabra独自の設計によるシステムチップを搭載したことで、ドルビーアトモスによる立体サウンドで楽しめる映画・音楽コンテンツを再生したときに、周囲を包み込むようなイマーシブサウンドが楽しめます。イヤホンを装着したユーザーが顔の向きを変えても、音が鳴っている位置があるべき場所に定位するドルビー・ヘッドトラッキングにも対応。Jabra Sound+アプリからドルビーアトモス系機能のオン・オフが選べます。

筆者も実機で体験しましたが、圧倒的に豊かな情報量のサウンドにより、とてもリアルな包囲感が楽しめました。足もとから突き上げてくるような低音の底力も魅力的です。

Elite 8 Activeは本体がIP54相当の防水防滴、落下等にも強いショックプルーフ仕様です。ドライバーは6mm口径。本機はドルビーアトモス再生には非対応ですが、NC機能の効果は、現行モデルのElite 7 Activeより強化されているように感じました。

ふたつのイヤホンともにBluetoothオーディオの新世代規格であるLE Audioにも、ソフトウェアアップデートによる対応を予定しています。日本での正式発表を楽しみに待ちましょう。

AVIOT、ベストセラー「Q」シリーズ最新機を初披露

日本のオーディオブランド「AVIOT」が、現在開発を進めている完全ワイヤレスイヤホン「TE-Q3」を、初出展のIFAで披露しました。

  • AVIOTの完全ワイヤレスイヤホン「TE-Q3」

  • 全6色のカラーバリエーションがそろう

AVIOTのベストセラーである、NC機能を搭載したスタンダードモデル「TE-D01q2」の後継機。今回は参考出展として紹介されている製品なので、発売時期や価格は明らかにされていませんでした。カラーバリエーションは全6色を予定しているそうです。

10mm口径のダイナミックドライバーは現行機種から継承。コンパクトな本体は装着感がとても心地よく安定します。サウンドは解像度重視のクールな印象を受けました。騒々しい会場の中で試したので、NCがよく効いていることがわかりました。

イヤホン単体での連続再生時間は約11.5時間。これだけでも驚くべきスタミナですが、充電ケースによるチャージを繰り返せば最大42時間の連続使用に対応します。現行機種のTE-D01q2が最大34時間なので、8時間近くも長く使えることになります。

  • IFAに初めて出展したAVIOTのブース

筆者は今回、久しぶりに飛行機でヨーロッパに移動しました。現在は世界情勢の影響により、日本からヨーロッパに乗り込むとき空路が変わっているので、東京からオーストリアのウィーンまで往路が約14時間もかかりました。イヤホン単体で11時間も再生できるワイヤレスイヤホンがとても頼もしく感じられる時代です。

太陽や照明の光でチャージ! Urbanistaのワイヤレススピーカー

最後にスウェーデンのブランド、Urbanista(アーバニスタ)の「光充電に対応するエコなオーディオ」の新製品を紹介します。Bluetoothワイヤレススピーカーの「Malibu(マリブ)」です。

  • UrbanistaのBluetoothスピーカー「Malibu」

本機はBluetoothワイヤレススピーカーとして初めての「self-charging outdoor activity speaker」であるとアーバニスタが紹介しています。9月の最終週に発売が予定されており、価格は149ドル(約2.1万円)。

天面には太陽光や人工照明の光でバッテリーをチャージするためのシートが組み込まれています。光充電の技術にはスウェーデンの企業であるExegerの「Powerfoyle Technology」を採用。スピーカーは内蔵バッテリーによる連続約24時間の駆動を実現していますが、アプリから設定を「パワーセービングモード」に切り換えるとさらに連続使用時間が長くなります。

  • 本体天面には光充電シートを搭載

光充電のスピードは、光の強さや環境条件にも影響されるため数値化が難しいところですが、同社のスタッフに聞いたところ目安として「曇天の日中の屋外光に相当する50,000ルクスの明るさで、充電ゼロから100%まで約60時間でチャージが到達」するそうです。使わない時間は本体の電源をオフにしてなるべく明るい場所に置いておけば、電気代をかけることなくバッテリーをリカバリできる機能として役立ちそうです。

デザインはシンプルですが、サウンドはパンチが効いていて個性的なワイヤレススピーカーです。本体はIP67相当の防水防滴対応なので、通常のワイヤレススピーカーよりも「アウトドアでバッテリーが減りにくい」特徴が活かせると思います。