JR北海道は22日、旭川駅で石北本線・富良野線向けのH100形ラッピング車両を一般公開した。11時15分から12時半まで展示され、親子連れなど多くの人でにぎわった。Nゲージの運転や自治体キャラクターとの写真撮影などの関連イベントも行われた。

  • LED表示器に「試運転」と表示したH100形。先頭は「富良野線ラッピング」の車両「H100-81」(筆者撮影)

同社は昨年から、H100形にラッピングを施し、沿線の魅力をアピールする車両を順次導入している。2022年10月、第1弾として「花咲線ラッピング」「釧網線ラッピング」の車両が登場。根室本線新得~釧路間で普通列車として運用を開始した。

今回展示された2両は2022年に完成。「石北線ラッピング」の車両は「H100-80」、「富良野線ラッピング」の車両は「H100-81」で、2023年1月以降に各路線の普通列車として運用に入っている。2両とも昨年12月に旭川駅でお披露目する予定だったが、冬期の悪天候で中止に。日を改めての展示が決まり、4カ月経って実現に至った。

車両見学会は旭川駅7番線ホームで11時15分からスタート。同一ホーム上で、2両を1両ずつ分割した上で展示された。展示開始前の改札内コンコース(中2階)では、すでに参加者の列ができ、JR北海道の社員が列を整理している。参加者を見ると親子連れが多く、ラッピング車両との対面を心待ちにしている様子だった。

当日の最高気温は8度。4月にしては気温が低い上に天気もあいにくの曇り空だったが、多くの人が集まったことからも、沿線住民らのラッピング車両への注目度の高さがうかがえる。

  • 「富良野線ラッピング」の車両。車体側面は青池をベースとしており、先頭部は沿線の花をほうふつとさせる(筆者撮影)

  • 「石北線ラッピング」の車両。オホーツク海や沿線の自然がデザインに生かされている(筆者撮影)

  • 「H100-81」の銘板。北海道高速鉄道開発のプレートもある(筆者撮影)

  • 「富良野線ラッピング」の車両外観。正面には美瑛町にある青池、側面には富良野のラベンダー畑があしらわれている(筆者撮影)

  • 「石北線ラッピング」の車両外観。沿線の四季をテーマにしている(筆者撮影)

2両とも北海道高速鉄道開発が所有し、国や北海道の支援を得て新製された。JR北海道は無償貸与を受け、これらの車両を使用する。外観には沿線地域の魅力的な風景をイラストにしたデザインを採用しており、制作時に各自治体と連携しながら設計したという。山側と海側でイラストが異なり、あらゆる角度から車両を楽しめる。

内装には通常のH100形と異なるシートモケットを採用したほか、木製の机や吊り革を配置し、沿線の観光需要も考慮している。旭川駅での展示中、車両のテーブルに各自治体の魅力をPRするパンフレットが置かれ、参加者にも注目されていた様子だった。中でも遠軽町のパンフレットは、「丸瀬布いこいの森」で動態保存されている蒸気機関車「雨宮21号」の写真を大きく掲載しており、鉄道ファンを意識したアピールが印象に残った。

  • 車内はロングシートと2人掛け・4人掛けのボックスシートを備えたセミクロスシート仕様(筆者撮影)

  • エゾモモンガやタンチョウなど、北海道の自然を象徴する動植物をデザインしたシート(筆者撮影)

  • 4人掛けのボックスシート。木製の机に沿線自治体を紹介するパンフレット類が置かれていた(筆者撮影)

11時15分に7番線ホームが開放されると、入場券を購入した参加者たちが車外・車内を興味深く観察していた。とくにシートの座り心地を確かめる人が多く、このラッピング車両に乗って旅する場面を想像している様子だった。

7番線ホームに続くエスカレーター前に、特設の受付が設置されていた。これは車両見学会に合わせた企画のひとつで、当日に旭川駅の「みどりの窓口」で「いまこそ輝け! 北のキハ183系」記念入場券を購入し、受付で提示すると、先着300名に石北本線全線開通90周年を記念した特別な缶バッジをプレゼントするというもの。缶バッジを見ると、チェック模様にキハ183系のイラストが描かれ、「石北本線全線開通90周年」の文字が記されている。こちらも盛況だったようで、開始15分ほどでずいぶん数が少なくなっていた。

  • Nゲージブース。JR北海道の車両を中心に約200両を展示・走行させていた(筆者撮影)

車両見学会に合わせた関連イベントは旭川駅の東改札口付近で行われた。東神楽町にある複合施設「東神楽大学」の協力でNゲージレイアウトを設置し、キハ183系など往年の名車から、今回展示されたラッピング車両のような最新型まで、JR北海道の車両を中心に約200両の鉄道模型を展示し、走行させていた。ラッピング車両のデザインは、H100形の模型に車両の外観をプリントしたシールを貼り付けて再現している。

「東神楽大学」は学校法人ではなく、廃校となった小学校を利用してオフィスやシェアキッチンなどを設置し、地域交流やビジネスの拡大を図る複合施設である。施設内にある鉄道模型のレイアウトをイベント時に出張させており、時間貸しで持ち込み車両の運転も楽しめるとのこと。レイアウトに携わった男性は、「鉄道のない町に鉄道模型なんて、面白いのでは」というアイデアから「東神楽大学」にレイアウトを設置し、たまたまJR北海道の社員がそれを見かけたことがきっかけで出張展示が決まったという。

模型のコーナーはとくにこどもたちから大人気で、目をきらきらさせながらNゲージの車両が走る様子を眺めていた。Nゲージコーナーの隣で東神楽町の特産品が販売され、こちらも盛況だった。

  • キハ183系はラストラン時と同じくグリーン車3両を含む7両編成での運転(筆者撮影)

  • 旭川市のキャラクター「あさっぴー」も登場(筆者撮影)

また、旭川市、愛別町、当麻町、東神楽町のご当地キャラクター4体が集結し、旭川市のキャラクター「あさっぴー」らが家族連れとの写真撮影や握手に応じていた。これら4自治体は石北本線と富良野線の沿線に立地しており、鉄道で来る観光客に向けてPRも行っている。北海道第2の都市である旭川市は、旭山動物園をはじめ著名な観光地が多く、全国から人が集まる場所でもあるため、その旭川市から鉄道で少しでも足を伸ばしてもらえるように工夫している様子がうかがえた。

12時30分に展示車両の一般公開が終了。「石北線ラッピング」「富良野線ラッピング」の2両はドアを閉めた後、駅構内で連結されて2両編成になった。13時10分、汽笛を鳴らして動き出し、新旭川方面へと去っていった。

当日の参加者は250名。それぞれ自分たちのペースで今回のイベントを満喫していた。新たに誕生した「石北線ラッピング」「富良野線ラッピング」の2両が、各路線の新しい顔として長く活躍していくことを期待したい。