ソニーは10月20日、独自の立体音響技術を活用した音楽体験「360 Reality Audio」(360RA)の普及に向けた取り組みを紹介した。Amazon Music Unlimitedにおける360RA楽曲のヘッドホン再生対応など、対応機器を拡大する。また、ゴスペラーズやYOASOBI、アリシア・キーズといったアーティストの人気楽曲を配信するなど、対応コンテンツの拡充も進める。

  • 360 Reality Audio

既報の通り、Amazon Music Unlimitedで配信されている360RA楽曲が、iPhoneやAndroidスマートフォンと既存のヘッドホンの組み合わせでも楽しめるようになった。

Amazon Musicの空間オーディオ(従来は「3Dオーディオ」と呼んでいた)を本格的に楽しめる環境は、これまではAmazonのスマートスピーカー「Echo Studio」や、ソニーの立体音響を楽しめる2つのワイヤレススピーカー「SRS-RA5000/RA3000」(2021年4月発売)などに限られていた。今回から新たに手持ちのスマホとヘッドホンだけで聴けるようになり、360RA体験を始めるハードルが大幅に下がったかたち。

  • Amazon Music Unlimitedの「空間オーディオ」

  • 再生画面から空間オーディオ(360 Reality Audio)に切り替えているところ。スマートフォンと既存のヘッドホンの組み合わせでも楽しめるようになった

同サービスで空間オーディオを楽しむのにアプリや加入プランなどのアップグレードの必要はなく、追加料金もかからない。個人プランの月額料金は、プライム会員が月780円、非プライム会員が月980円。

  • Amazon Music UnlimitedでYOASOBI「夜に駆ける」を360 Reality Audioで再生しているところ

また、Googleが提供するAndroid 12においては、360RAが準拠する国際標準MPEG-H 3D Audioのサポートが開始される。これにより、Android 12搭載デバイスでは従来より360RAが実装しやすくなり、対応機器の拡大が見込まれるとしている。

ソニーでは、ワイヤレススピーカーやスマートフォン、ヘッドホンのほかにも、ホームシアターシステム「HT-A9」、サウンドバー「HT-A7000」といったさまざまな製品で360RAをサポート。さらに、オーディオテクニカやラディウスのヘッドホン、ゼンハイザーのサウンドバー、マッキントッシュのAVプロセッサー、AmazonのEcho Studioなど、ソニーがライセンス提供をしている他社製のオーディオ製品もあり、360RAを楽しめる環境を拡大していくとのこと。

360RA対応楽曲については、すでに7,000曲以上を複数のストリーミングサービスで提供しており、国内ではAmazon Music Unlimited、Deezer、nugs.netで聞ける。

ゴスペラーズやYOASOBIといった邦楽アーティストから、アリシア・キーズ、デュラン・デュラン、リル・ナズ・X、P!NK、ピンクフロイドなどの洋楽アーティストに至るまで幅広いジャンルの人気楽曲を配信しており、今後も拡充に取り組む。

■アリシア・キーズ氏のコメント

この一年、音楽エンジニアとともに360 Reality Audioのアルバム制作に情熱を傾けてきました。これまでも音楽には愛情を注いできましたが、今回の制作で、改めて音楽性を徹底的に追求しました。曲を特徴づける要素ながら、ミックスの際に隠れてしまう細部にまでこだわり抜いた今回の制作過程は、私たちにとって忘れられない時間となっています。非常にすばらしいコンテンツになったと自負しています。Amazon Musicから配信されるので、ぜひ聴いていただき、私の楽曲を愛していただければと思います。

■デュラン・デュラン ニック・ローズ氏のコメント

大きな進化を遂げたオーディオのテクノロジーが登場する度に、その技術を使った音楽表現の可能性を探りたいと思うのですが、360 Reality Audioでの楽曲制作の提案を頂いた際にはとても興奮しました。ニューアルバム『Future Past』の楽曲を360 Reality Audioにミックスしましたが、これまでヘッドホンでは体験できなかったような没入感のあるサウンドに感動しました。今後、デュラン・デュランの全曲を360 Reality Audioでお届けできるようにしたいと考えています。

■ゴスペラーズ 北山陽一氏のコメント

今回の楽曲制作では、360 Reality Audioの特長のひとつである音源の配置を意識して、リードヴォーカルの音の位置が360度にどんどん動く様を楽しんでもらえるように仕上げました。「なるほど、こうしたか!」と、聴いて、楽しんでもらえたらと思います。

  • 360 Reality Audioのコンテンツ例

また、独立系アーティスト向けの360RAコンテンツ配信サポートサービスにも技術協力。ストリーミングサービスへの音楽配給を行うサービスプラットフォーム「Tully App」を運営するVertical Craft、およびそのプラットフォーム開発を行うEVEARAが共同で開始するもので、時期については2021年中を予定している。

独立系アーティストが制作した360RA対応コンテンツをTullyにアップロードするだけで、コンテンツ管理やストリーミングサービスへの配信を可能にするという。幅広いアーティストの楽曲配信を支援し、360RAコンテンツの裾野を広げるとのこと。