新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークや外出自粛など家で過ごす日々が続いている。外に行けないと家での一杯が至福のひと時という人も多いことだろう。巷ではオンライン飲み会も流行しており、お酒を飲む機会が増えている人もいるのではないだろうか。

また、ストレスで飲酒量が増えている人もいることだろう。そんなときに気を付けたいのが「アルコール依存症」だ。家飲みが増える今、どのようにアルコールと付き合っていけばよいのか、精神保健指定医で精神科専門医の髙木希奈医師に話を伺った。

  • 家飲みはアルコール依存症になりやすい?

    家飲みはアルコール依存症になりやすい?

家飲みは依存症の第一歩?

ずっと家にいることで、ストレス発散や不眠の対処として飲酒をするようになり、流行りのオンライン飲み会に誘われ、飲酒の機会が多くなり、さらに、店で飲むよりも安く済むことや、帰宅、終電などを考えなくてよいし、飲酒を止める人もいないので心ゆくまで飲むなど、飲酒量も増えていくといったことが予想される。

「依存症の患者さんの中では、仕事を退職してから何もすることがなくなり、これといった趣味も出かけるところもなく、家でお酒を飲んでばかりいて依存症になってしまったというケースが少なくありません。

依存症のなりやすさは飲む“頻度”に関係してくるため、会社に行かず、プライベートでもほとんど外出することがなくなり、家にいる時間が増えたら、やることもなくてストレスがたまり、飲酒の頻度や量が増えてしまった……ということは容易に考えうることです」

また、家にいることで生活リズムが崩れたり、活動量も落ちたりして運動不足になり、夜に眠れなくなり寝酒をするようになった、あるいは飲まないと眠れないという人もいることだろう。髙木医師は家飲みが続く危険性を指摘する。

「依存症の患者さんは、大体の方が家で飲んでいることがほとんどです。私たちも家飲みの機会が増えてくれば、アルコール依存症に移行する可能性があります」

ストロング系は飲みすぎ注意

ここ最近、ストロング系チューハイの危険性がニュースではよく取り上げられている。ストロング系チューハイは安価で誰でも手に入れやすく、飲みやすい割にアルコール度数が高いのが特徴だ。一気にたくさんの量を飲むことができてしまうため、アルコール中毒や異常酩酊が起こりやすいことが問題となっている。

一気に摂取するとアルコールの血中濃度が急激に上昇して、泥酔、昏迷状態に陥ったり、脱抑制となり衝動性が高まり、興奮して大声を出す、怒りっぽくなる、暴れたり物を壊したりとトラブルを起こしやすくなる可能性がある。また、自傷行為や他害行為にまで至ってしまう危険性もあるといわれている。

「通常のお酒よりも、ストロング系チューハイは、問題行動が多く出現している印象があります。依存症の患者さんが飲んでいるお酒を見てみると、『安くてアルコール度数が高く、少量でもすぐに酔える』お酒を飲んでいることがほとんどです。高級ワインやアルコール度数が低いお酒を飲んでいる人はほとんどいません」

髙木医師によると、安価なもの、酸化防止剤や保存料、酸味料、香料、着色料などの添加物が多いもの、合成酒、質の悪い醸造酒などは避けたほうが賢明だという。

アルコール依存症になりやすい人は?

依存症かどうかを測る最も分かりやすい飲酒パターンとして、小宮山分類という分類方法がある。

A型 : 機会飲酒(飲み会、宴会、会合など、何かの機会があるときだけ飲酒)
B型 : 習慣性飲酒(晩酌や寝酒など習慣的に飲酒するが、飲む量や時間帯が概ね決まっている飲み方)
C型 : 少量分散飲酒(一人で週2日以上連続して、日常生活の合間合間に少量ずつちょこちょこと飲酒する)
D型 : 持続深酩酊飲酒(一人で週2日以上連続して、飲んでは寝て、起きてはまた飲む、を繰り返す)

A、B型は正常、C、D型はアルコール依存症とみなされる。

実際には、BとCの中間くらいのグレーゾーン(例えば、仕事が終わって家に帰ってきてから寝るまでずっと飲み続ける、連続していないものの、週2日以上、C型もしくはD型飲酒があるなど)の人もかなりいることが予測されている。

依存症になるかならないかは、個人のアルコールに対する脳の感受性によって決まり、驚くべきことに、お酒が全く飲めない人でも依存症になる。依存症のなりやすさは、飲む“量”ではなく“頻度”により、同じ量を飲んでいても、依存症になる人とならない人がいるのは、脳の感受性と飲酒頻度の違いだといわれている。

「依存症は、誰しもが必ずA型→B型を経てC、D型に移行するため、お酒を飲みだしてからそんなに急激に依存症になるわけではありません。正常域から依存症になるまでは、早くて数年、長いと20年~30年かかります。このため、若い方でも依存症になりますが、飲む頻度が多く年数が長い中高年のほうが多くなります。ちなみに、人間が200歳くらいまで生きることができれば、全員依存症になるといわれています」

アルコール依存症になったらどうなる?

アルコール依存症になったら現れる症状には以下のようなものがある。

・精神依存

快楽を得るため、または量を減らすことによる苦痛(離脱症状など)から逃れるために、「有害である」ことを知りつつも「連続的あるいは周期的に摂取したい」という自分の意志では抵抗できない強い欲求が起こり、飲酒せずにはいられなくなった状態(身体疾患のため飲んではいけないことを知っているのに飲酒する、社会生活上飲んではいけないことを知っているのに飲酒するなど)となり、強化された摂取・探索行動(飲むために嘘をつく、隠す、脅す、泣き落とす、約束を破るなど)をとる。

・身体依存

アルコールが体内から消失したときに出現する、離脱症状や遷延性退薬症状

・耐性

アルコールを飲み続けることにより、同じ量の飲酒でも効果が弱くなり(酔えなくなるなど)、同一の効果を得るために飲酒量が増えていく状態

・アルコール性脳障害

ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群、前頭葉委縮、小脳変性、認知症、慢性硬膜下血腫、幻覚、嫉妬妄想、気分障害(躁・うつ)、不安障害、睡眠障害など

・アルコール性身体障害

脂肪肝、肝炎、肝硬変、心筋症、膵炎、食道静脈瘤破裂、胃潰瘍、ガン(口腔、咽頭、食道、肝臓など)、糖尿病、高血圧、末梢神経障害、性機能障害など

正しいお酒の付き合い方は?

アルコール依存症の危険性は誰しもがあるもの。しかし、お酒好きにとっては全く飲まないというのは難しいだろう。髙木医師は、飲む量や時間を決めることが大切だと語る。

「家にいるからといってダラダラ飲むのではなく、夕食時だけ、休みの日だけ、といったように時間や1日の摂取量を決めて飲むことが大切です」

飲酒量については、「健康日本21」の中の「節度ある適度な飲酒」において、「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である」と定義されているため、これを参考にするとよい。

20gとは大体「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チューハイ(7%)350ml缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などに相当する。ただし、性別、年齢、基礎疾患などで個人の適正量は変わってくるため、注意が必要だ。

「ストレス発散や不眠の対処法として飲酒だけでなく、ほかに何か気分転換できることを見つけたほうがよいでしょう。家にいてもできる楽しめること、趣味などを見つけたり、軽い運動や散歩、ストレッチなどを取り入れたりしながら、規則正しい生活リズムとバランスのよい食生活を送ることが何よりも重要です」