ついにプールで泳ぎながら使える完全ワイヤレスイヤホンが登場しました。ドイツ・ベルリンで開催中のイベント、IFA2018でソニーが発表した完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP900」を紹介しましょう。
WF-SP900は、いま注目を集める左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンです。ヨーロッパでは11月以降に各地域で順次出荷を予定。価格は280ユーロ(36,500円前後)を見込んでいます。カラーバリエーションはブラック/ホワイト/イエロー/ピンクの4色が展示されていました。日本での発売は未定とされていますが、登場をぜひ期待したいイヤホンです。詳細をみていきましょう。
特徴は大きく3つ
ソニーのブランドから発売される完全ワイヤレスイヤホンはこれが4モデル目になります。WF-SP900の大きな特徴は、「プレーヤー機能を内蔵したこと」「泳ぎながらでも使える高い防水性能」「左右の低遅延・接続性の安定」の3点です。
本体のデザインは、日本で2018年4月に発売されたソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」と似ています。よく見ると本機の方がやや形状は縦長。そして両者の大きな違いは、WF-SP700Nに搭載されていたノイズキャンセリング機能がWF-SP900にはついていないこと。ただ、音楽を聴きながらでも内蔵マイクで周囲の音をモニタリングできる「アンビエントサウンドモード(外音取り込み機能)」は、WF-SP900にも備わっています。本体質量は約7.3gと、WF-SP700Nの約7.6gよりもわずかに軽くなりました。
イヤホン単体で音楽を聴ける
WF-SP900の大きな特徴のひとつは、イヤホン本体に4GBの内蔵ストレージがあることです。つまり、スマホを携帯してBluetoothでストリーミングしなくても、イヤホン本体に音楽ファイルを入れて単体でリスニングを楽しめるのです。体を動かすシーンで重宝しそう!
専用ケースにイヤホンを入れた状態で、専用ケースをパソコンに接続すると、音楽ファイルをイヤホンへ転送できます。Windows PCには「Music Center for PC」という転送に使うアプリケーションがありますが、Macでもファイルのドラッグ&ドロップで転送可能。
WF-SP900が再生できるファイルの形式は、WAV/FLAC/AAC/MP3/WMA。FLAC/WAVはリニアPCM形式で、最大48kHz/16bitのファイルまで再生可能。イヤホンに転送した楽曲ファイルの管理には、Android/iOS対応のスマホアプリ「Music Center」を使えます。Music Centerアプリは、スマホで楽曲再生をコントロールするときにも使用します。
また、イヤホンだけで音楽の再生操作ができるよう、イヤホン本体にリモコン(ボタン)が搭載されています。左側イヤホンのボタンは、外音取り込みのオン・オフや、内蔵メモリーに保存した音楽ファイルのリスニングモードへの切り替えなどに使うもの。右側イヤホンのボタンでは曲飛ばしや一時停止、ハンズフリー通話への応答ができます。
イヤホン本体の側面には、加速度センサーによって反応するタッチパネルリモコンも搭載しているので、音量を素速くアップダウンしたいときに便利です。それぞれ2回タップで、左側がボリュームダウン、右側がアップで固定されています。
アンビエントサウンドモードの切り替えやイコライザー調整、音質設定などは、ソニーのスマホアプリ「Headphones Connect」からも設定可能。音質についてですが、Extra Bassシリーズのコンセプトである豊かな低域再生を踏襲したWF-SP700Nと違って、WF-SP900はニュートラルなバランスを重視し、中高域の見晴らしが良く、音場が広い印象を受けました。スポーツシーンで気分を高めるために低音を増強、あるいはボーカルを前に出したいときには、あらかじめアプリのイコライザーで好みの音質を設定して、イヤホン本体のリモコンボタンから設定を一発で呼び出せる「クイックサウンドセッティング」を登録しておくと便利でしょう。
泳ぎながら音楽を聴ける
ふたつめの特徴は高い防塵・防水性能を持っていることです。ソニーでは、ウォークマン「NW-WS620」シリーズなど、泳ぎながら音楽を楽しめるポータブルオーディオ製品をこれまでも発売してきました。本機は泳ぎながら使える完全ワイヤレスイヤホンになります。IPX5/8相当の防水性能(イヤホン本体のみ)に加えて、ソニー独自の検証による海水対応も合わせて実現しています。砂浜で使うときに頼もしい防塵性能もIP6X相当。使ったあとに水洗いをしてヨゴレを落とすことも可能です。さらに-5度までの耐寒性能も備えているので、スキーやスノボもOK。なお耐性温度の上限は35度までなので、風呂場やサウナでのリスニングはサポート対象外になります。
水泳するときに使えるといっても、水流でイヤホンが耳から落ちてしまわないか心配な人もいるでしょう。WF-SP900のパッケージには、WF-SP700Nで好評を得た、耳のくぼみに装着するフィン状のアクセサリー「アークサポーター」が付属。アークサポーターは、WF-SP700Nよりもひとつ多い「3サイズ」を用意しました。泳ぐときには左右のイヤホンを付属のリーシュコードでつなげばさらに安心。ネックバンド型ワイヤレスイヤホンのようなスタイルで身に着けられます。注意事項として、泳ぐときは付属の水泳用イヤーチップに交換しましょう。水泳用イヤーチップはノズル穴の部分に、水の侵入を防ぐための膜をつけてあります。
NFMI対応で接続性能が安定
そして3つめのポイントは、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンにとって悩み所である「左右の接続性」。WF-SP900ではさらに安定しました。本体の通信用アンテナの構造を見直しつつ、左右間の接続に音途切れやノイズの影響が少なくなるNFMI(近距離磁気誘導)の技術を採用。NFMIは、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンとしては、Xperia Ear Duoに次ぐ搭載となります。左右の接続性能が上がるだけでなく、左右間の信号遅延を極限まで少なくできるので、ハンズフリー通話は左右から音が聞こえるステレオ再生に対応。ますます快適になりました。
ふだん使いにも安心。バランス良好なサウンド
WF-SP900はソニーの完全ワイヤレスイヤホンとして初めて、フルレンジのBA型ドライバーを1基搭載しています。これがナチュラルな音楽再生にも寄与するポイントです。ソニービデオ&サウンドプロダクツでWF-SP900の開発を担当する井上千聖氏は「スポーツシーンだけでなく、ふだん使いにも心地よいサウンドが楽しめるようにチューニングしました」とコメントしています。
BluetoothのオーディオコーデックはSBCとAACに対応。付属のシリコンイヤーチップは装着位置を2段階で調節できるので、より快適なフィットと遮音性能が得られそうです。
イヤホン本体に内蔵するバッテリーは、Bluetooth再生が約3時間、内蔵メモリー再生で約6時間のスタミナを実現。充電ケースでチャージが3回できるので、Bluetooth再生では最長約12時間、音楽を楽しめる計算になります。ケースに設けた充電用コネクタはUSB Type-Cになりました。
完全ワイヤレスイヤホンは、スポーツで使える音楽再生用のアイテムとして注目されていますが、「泳ぐ」シーンにも活用できるとなればさらに人気を後押ししそう。ソニーのWF-SP900が最初の火付け役になりそうです。