ラーメンは食べさせてもいい? 乳幼児の食事で気をつけたい塩分量の多い食品(画像はイメージ)

2017年7月、預かり保育中の赤ちゃんが食塩中毒で亡くなったという報道がありました。"離乳食はなるべく素材の味を生かす"など、多くのママ・パパが子どもに与える塩分には気をつけていると思いますが、大人と比べて、乳幼児の食事には特に注意すべきポイントがあるそうです。

2人の子どもを育てながら予防医療の普及活動をしている、管理栄養士の宇野薫さんに、「乳幼児の塩分摂取」について聞きました。

Q.赤ちゃん・幼児に必要な塩分量はどれくらいですか?

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」(2015年度)によると、乳児(生後6カ月~11カ月)にとって適切な食塩相当量の目安量は1日に1.5g(ナトリウムの量にして約600mg)。1~2歳では3g未満、3~5歳では4g未満となっています(数字は男子を対象にしたもの)。

一部、マグネシウムやカルシウムを含んだ塩も売られていますが、一般的な食塩に含まれる成分はほとんどが"ナトリウム"です。現代では、普通の食生活をしていればこの成分が不足することはほとんどなく、むしろ過剰摂取が心配です。

ナトリウムは腎臓経由で尿中に排出されるのですが、腎機能の発育・発達が完成するのは2歳頃と言われています。そのため赤ちゃん・幼児は、ナトリウムの排出が上手にできません。食塩を過剰摂取すると、高ナトリウム血症を引き起こす可能性があり、時に死亡などの危険な状態につながります。大人以上に注意が必要なのです。

Q.乳児でも1.5gの食塩相当量が適切とありますが、ミルクや離乳食で十分に摂取できるのでしょうか?

母乳中には15mg、調製粉乳では140mgのナトリウムが含まれています(100gあたり)。摂取が必要なのは食塩ではなく、食塩に含まれているナトリウムという成分なので、これで必要な摂取量は問題なくクリアできるはずです。また味付けしていない動物性の食品にも、ナトリウムは含まれています。

栄養素面の観点から、離乳食に味付けをする必要はありません。

Q.離乳食によく使われる食品のうち、塩分量に気をつけた方がいいものは何ですか?

穀類: うどん、マカロニ、パン
魚介類: はんぺん、ツナ缶、しらす
乳製品: チーズ
調味料: ケチャップ、マヨネーズ、バターなど一通り

といったものが挙げられます。ちなみにゆでたうどんには100gあたり120mgのナトリウムが含まれていますので、幼児期に入り、めんつゆをつけて食べる場合にも、注意が必要です。

ただこれらの食品は、全く与えてはいけないというものではありません。しらすは湯通しすれば塩抜きできますし、チーズも乳幼児用に減塩したものが販売されています。ツナ缶については食塩無添加タイプを活用するなど、工夫はできます。

Q.ベビーフードにも塩分は含まれていますか?

調味料を加えて味付けをしている商品もあるようです。赤ちゃん用の食事なので、過剰に塩分が入っているものはないと思いますが、食品表示を確認して上手に活用しましょう。

Q.幼児期に注意すべき塩分量の多い食品も教えてください。

ラーメン、ハム、ソーセージ、干物、漬物、せんべい、おかき、ポテトチップス等は要注意です。特にラーメンについては、1食当たりの食塩相当量が汁を含めると7g程度となるので、できれば避けた方がいいでしょう。また外食や加工食品、市販品は、味付けが濃くなりがちです。

食品に含まれる食塩相当量
味噌汁1杯: 1.7g、わかめスープ: 0.9g、梅干し1つ: 2.2g、きゅうりのぬか漬け5切れ: 1.6g、塩鮭甘口1切れ: 2.2g、あじの開き1尾: 1.4g、ちくわ1本: 0.6g、せんべい2枚: 1.0g、きつねうどん(汁含む): 6.6g

理想を言えば、食材を一から調理して、自分で食塩の量を調整するのが一番。しかし、現代社会においては外食も増えていますし、便利な加工食品も上手に活用したいですよね。ですから、これらの食品は"塩分量が多い"ということを認識して、表示を確認してから利用するクセをつけるといいかもしれません。

多くの食品には「食塩相当量」が記載されていますし、記載されていない場合には、面倒ではありますが、「ナトリウム量×2.54÷1,000」で食塩相当量が計算できます。

例えば外食する時は、ドレッシングやしょうゆなどの調味料を使いすぎないようにしたり、加工食品の中でも塩分控えめのものを選んでみたり、工夫をしてみましょう。ソーセージは焼くのではなく、切ってからボイルすると、塩分や添加物が抜けます。調理法を変えてみるのもいいですね。

また塩分量が多くなってしまったと感じた時は、植物性の食品(芋、野菜、果物、海藻、大豆製品など)を積極的に取り入れてみましょう。"カリウム"という成分が含まれており、ナトリウムの排出を促してくれます。

Q.これからの季節、熱中症を防ぐために、水分補給においては塩分摂取も必要ですか?

通常、幼児の水分補給は水か麦茶で十分です。塩分や糖分が入ったイオン飲料も、私の考えでは必要ないと思います。一部の飲料に含まれる人工的に作られた糖分(ブドウ糖果糖液糖)には、血糖値の急上昇・急降下を引き起こすものもあるので、多量の摂取は危険です。

WHOのガイドラインによれば、糖分の摂取量は、必要なエネルギーの5%未満が推奨されています。しかし、これらの飲料の中には500mlのペットボトル1本で、幼児の推奨摂取量を超えてしまうものもあります。幼児が必要とするエネルギーは大人の半分程度。子ども用の小さいパック飲料を活用するなど、与え方を工夫してみてもいいかもしれません。

塩分をはじめとして、糖分、油については、大人の食事の味付けや調味料の使い方などに引きずられることが多いと思うので、注意してほしいです。小さいうちに薄味に慣れておけば、大人になってからの生活習慣病を予防することにもつながります。さらに大人も一緒に薄味の食事を食べれば、家族みんなで健康的な食生活を送ることができますね。ぜひできる範囲で、気をつけてみてください。

管理栄養士 宇野薫

看護師の母、糖尿病の祖父の影響で食事の重要性を痛感。予防医療に貢献したいと管理栄養士を志す。女子栄養大学卒業後、病院、高齢者施設での経験をもとに、疾病予防、アンチエイジングなど、なりたい自分になるための栄養指導に従事している。現在、「子どもの食と栄養」についての講義や、妊婦・女性を対象にした栄養教育に関する研究をする傍ら、聖マリアンナ医科大学東横病院で栄養カウンセリングを担当しているほか、一般社団法人Luvtelliのメンバーとしても活躍。予防医療の中でも、特に"母子健康"に貢献することで、元気な赤ちゃんを1人でも増やせるよう取り組んでいる。2児の母。