ここからは、巷で言われている食事に関わる"神話"の事実を紐解きながら、食生活とガンにまつわる真実を解説していこう。

神話: 肉を食べるとガンになる

真実: 赤身やベーコン、ハムといった加工肉を多く食べることと、腸ガン発症リスク増加に関連性がみられるとする研究もある。実際、加工肉を大量に食べる方が、良質な赤身ステーキを週に2回食べるよりもリスクは高いという。しかも、身体が成長し、脳が発達し、健康な骨を作り、エンドルフィン(幸福ホルモン)を出すために身体が必要とする8つの必須アミノ酸は、良質な赤身ステーキに含まれている。

全般的に、一日に約50g(ハム2枚もしくは1枚のベーコン)の加工肉を食べると腸ガン罹患リスクが20%ほど高くなると言われている。理由として、肉を食べた際に作られる「ニトロソアミン」が、私たちの細胞のDNAを傷つけるためと考えられている。現行のガイドラインでは1週間に500gまでの赤身摂取は許容されており、これだけ食べれば十分にお肉を楽しめることだろう。

神話: ワインはガン予防になる

真実: ワインに含まれている抗酸化物質は、ガンや他の深刻な疾病の予防になるという研究成果はある。しかし、それは実験室の中だけのことだ。実際には、アルコール飲料の飲み過ぎと口腔ガンや咽喉ガン、食道ガン、肝臓ガン、腸ガンの罹患と強い関係があることが研究成果として示されている。女性では、アルコール飲料は乳がん罹患リスクを高める重要要因である。

神話: 乳製品はガンの原因になる

真実: 実は明確な因果関係はまだ示されていない。カルシウムを多く摂取すると腸ガンの予防になると最近の研究で明らかになったが、乳製品が前立腺ガンや卵巣ガンに関係しているという研究もある。乳がんに関しては結論が異なる研究もあり、明確な因果関係があるとは言えない。

神話: 砂糖はガンに栄養を与える

真実: すでにガンに罹患していても、砂糖はガンを成長させない。ガン細胞を含め細胞はすべて血糖(ブドウ糖)で成長するが、砂糖を与えたからといってガン細胞の成長速度が速まることはなく、同様に砂糖断ちをしてもガン細胞が"餓死"することはないとのこと。

トマトとウコンを食べよう

ご存知の人も多いかもしれないが、新鮮な食べ物は口腔ガンや咽喉ガン、胃ガン、肺ガンを含めガンの罹患リスクを下げる効果があると言われている。新鮮な食べ物に含まれる抗酸化物質によって、ガン発生の原因となるフリーラジカルの影響が減る。インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究によると、一日に10人前の異なる果物と野菜を食べると、ガンに罹患するリスクが13%減ったという。以下に紹介する食材は、特にお薦めのものだ。

■ビートの根: 強力な抗酸化作用があるアントシアニンが含まれている。

■トマト: 赤ければ赤いほど、抗酸化作用があるリコピンがより多く含まれている。生ではなく料理すると、トマトのリコピンが濃縮される。

■繊維: 腸ガンなどの消化器系のガン予防に特に重要。繊維の摂取により便が出やすくなり、身体内の毒素が減り、新陳代謝が促進される。果物や野菜、豆類、穀物、全粒粉など一日に18gほどの繊維が必要とされている。

■ウコン: 長期にわたって大量のウコンを食べる国では、ガンの罹患率が低いということが最近の研究で明らかになった。ウコンに含まれる活性成分であるクルクミンが、ガンの罹患リスクを高める細胞を変えたり殺したりするからだと考えられている。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。