4月から新社会人! 初めてもらうお給料に心躍らせる人も多いのでは? でも、自分で働いてもらったお金だからといって、無計画にお金を使ってしまってはダメ。社会人としての責任と心構えを持って、貯蓄をするクセをつけていきましょう。

入ってきた給料から先取りで貯蓄分を差し引き、貯蓄分はなかったものとして残りのお金で生活をする。この給与天引きによる「先取り貯蓄」こそ、新社会人の方にオススメの貯蓄法なのです。

先取り貯蓄のススメ、使ってしまう人こそ活用すべき!

先取り貯蓄を始めたいと思っていても、「使えるお金が減ってしまう」と考えると、続けていけるかどうか不安を感じる人が多いようです。でも考えてみれば、私たちが受け取る毎月の給料からは、既に税金と社会保険料が天引きされています。これが手取り給料です。

例えば月給約20万円の場合、3万5,000円程度が事前に引かれて、約16万5,000円の支給額となります。税金は所得税と住民税の2種類、社会保険は健康保険料・年金保険料・雇用保険料の3種類があり、いったい何がいくら引かれているのか、気にしない人がほとんどではないでしょうか。

つまり、受け取る金額は気になるけれど、事前に差し引かれてしまうとそれについては気にならないものです。手取りから貯蓄分を差し引いて、その額を自分の給料だと考えてしまえば、知らない間に毎月貯蓄額が増えていきます。一度手続きをすればあとはもう放っておくだけ。今、財布の中にどのくらい現金が入っているか、今月クレジットカードでいくら使ったかを把握せずについ使ってしまう人は、先取り貯蓄をしていることすら忘れてしまうかもしれません。そんなお金に関して計画性のない人こそ、この給与天引きでの先取り貯蓄を活用すべきなのです。

思い立ったが吉日! 金利の高い商品で長く積み立てよう

先取り貯蓄は早く始めれば始めるほど後になってみると大きな効果が期待できます。例えば1カ月に1万円貯めることにしたとして、それが1年で12万円、2年で24万円と増えていき、9年後には100万円を超える額が貯金できていることになります。正に「チリも積もれば山となる」。毎月同じことをするなら10年も20年も同じこと。「チリ積も」パワーを味方につけるためには、1カ月、1年でも長く、つまり一刻も早く積み立てをスタートすることが重要です。

また、お金をコツコツ積み立てる際には、利用する金融商品の金利にも着目しましょう。貯めていた元本に利息が付き、それがまた元本になって利息が付く…というふうに、利息は雪だるま式に増えていきます。この「複利効果」を享受するには、積み立てる期間が長い方がいいというのはもちろんのこと、金利が高いに越したことはありません。そのため0.01%でも金利の高い商品を選ぶようにしましょう。

先取り貯蓄の適性額は? 無理のない貯蓄プランを考えよう

先取り貯蓄にありがちなのが、子供の教育費や家のローンなど大きな出費が続いてしまい、積み立てを途中でやめてしまうこと。家計が苦しくなると、目先の生活費で手いっぱいとなり、貯蓄まで手が回らなくても仕方ないともいえます。しかし、たとえどんなライフスタイルになっても、月の手取り収入の1割は何とか貯蓄にまわせるのではないでしょうか? がんばらない「10分の1貯金」は、家計を圧迫せず無理なく続けることができる適正額であるとされています。

人生には貯め時が3度あるのをご存知でしょうか? 一つ目が、就職してから結婚するまでの間。人生で一番お金が貯められるのが、自宅で暮らす独身時代といわれています。手取りの10%の10分の1貯金を基本として、少し余裕があるなと思ったら手取りの20%の5分の1貯金や、手取りの25%の4分の1貯金など貯蓄の比率を上げていきましょう。

貯め時の二つ目が、結婚してからまだ子供が小さい間。結婚後すぐはまだ子供もいなくて、夫婦二人で共働きをしていることもあるでしょう。共働きで子供がいない時期は二人の手取りを合計した額の4分の1貯金をすることも可能ではないでしょうか。

最後三つ目の貯め時が、子供が独立して退職するまでの間。ここは自分たちの老後資金を貯めるラストスパートの時期です。

人生の「貯め時」と「使い時」

ボーナスが出るときには、住宅ローンの返済でボーナス払いを利用しているならボーナス手取り額の20%、ボーナス払いがないなら30%以上貯蓄できるように計画するといいでしょう。そして、家計に余裕がある人は更に1割を上乗せすることも検討してみましょう。

老後の準備は勤務先・金融機関の制度を活用しよう

ここからは実際にどんな商品を活用すればいいのかについてご紹介していきましょう。

まずは、勤務先の会社の「財形貯蓄」です。これは給料から自動的に天引きされる制度なので、確実に一定額のお金を貯蓄に回すことができます。積立額は原則1,000円以上かつ1,000円単位で指定可能なので、給料が少ないうちは数千円から始めてもOKです。

使う目的が自由である「一般財形貯蓄」の場合、積立期間は3年以上。中断も可能で、引き出す際は預け入れ後1年経過していることが条件になります。財形貯蓄には一般財形貯蓄のほかに、住宅の購入やリフォームに利用できる「財形住宅」、年金として利用できる「財形年金」あり、どちらも原則5年以上の積立期間が定められています。

財形貯蓄を取り扱っていない企業に勤めている人は、銀行などの「自動積立定期預金」を代わりに利用するのもいいでしょう。手数料は無料で、金額は5,000円~1万円以上1,000円単位などが一般的です。期間は最長10年などの範囲内であれば自由に決めることができ、中には満期の期日を指定できるところもあります。いずれにせよ、給料日に自動的に引き落とされるように設定しておくことが大切です。金利は固定ですが、一般的にネット銀行の方が金利は高めです。

最後にもうひとつ、給与天引きで利用できる貯蓄制度に「確定拠出年金」があります。自分で作る私的年金とも呼ばれ、毎月一定額ずつ積み立てていくだけでなく、そのお金を投資信託などに投資・運用することで増やすことができるというのが特徴です。ただし、確定拠出年金は「年金」なので、積み立てたお金は原則60歳以降でないと引き出しや受け取りができません。

確定拠出年金には企業型と個人型があり、勤務先が企業型を導入していればそれに加入すれば企業型のメリットを受けられますが、企業型がなくても個人型に加入できます。個人型は2017年1月から加入対象者が拡大され、専業主婦(夫)・公務員を含め、基本的に60歳未満の全ての成人が利用できるようになりました。確定拠出年金は運用益が非課税になるだけでなく、所得税や住民税の控除など税制優遇が受けられます。

自分の老後なんてまだまだ考えられないという新社会人のみなさんも、自分の将来のために給与天引きでの先取り貯蓄を上手に活用して、10年後、20年後の自分が笑っていられるように今から準備しておきましょう。

株式会社回遊舎


"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。