コーヒーに含まれるカフェインにまつわる興味深い事実とは

毎日の生活にカフェインが欠かせないという人は多い。コーヒーや紅茶、お茶などさまざまな形で私たちはカフェインの恩恵にあずかっているが、その実態を詳しく知っている人は少ないはずだ。

海外のさまざまな研究を紹介する「Livescience」にこのほど、「カフェインにまつわる10個の興味深い事実」と題したコラムが掲載されたのでその内容を紹介しよう。

カフェインは、日々の生活を安定させる中枢神経系に対する穏やかな興奮剤であるため、適量であれば心身に良好な影響を与える。カフェインが記憶力を高め、身体トレーニングに効用があり、集中力を増すという研究もある。

ただ、各機関や団体によって推奨する量などが異なっている。米国食品医薬品局(FDA)は「健康な成人は1日400mgまでの摂取であれば安全」との見解を示すが、米国産科婦人科学会は「妊婦は1日200mg以下に制限すべき」だとしている。また、米国のある総合病院は「13~19歳の人は1日100mgまでに制限し、子どもは摂取しない方がよい」との考えを示唆している。

また、中にはカフェインの効果が非常に顕著に現れる人もみられる。カフェインの過剰摂取によって頭痛や腹痛、睡眠障害、神経過敏、動悸(どうき)などの原因になる場合もあるという。そこで、カフェインのことをよりよく理解するため、本稿では「興味深い10の事実」から厳選した6つをまとめたので参考にしてほしい。

1.カフェインの禁断症状が朝の頭痛を招く

カフェインは摂取後約45分で血液と組織に吸収されるが、すぐに分解されず、長時間体内にとどまる。完全に体からカフェインが消えるまで12時間ぐらいかかることがあるが、就寝のころにカフェインが身体からなくなると翌朝、「カフェインを摂取したい」という依存性が強くなる。定期的にカフェインを摂取する人が起床時に頭痛やぐったり感を覚えるのは、このように体がカフェイン禁断症状を起こしているためだ。この禁断症状は、朝のカフェイン摂取によって回復する。

2.過剰摂取で死亡することもある

カフェイン過剰摂取による死亡はまれだが、実例もある。2014年に米国のオハイオ州で18歳の男性が、ジョージア州で24歳の男性が、「純粋粉末カフェイン」(pure powdered caffeine)の過剰摂取でそれぞれ死亡した。純粋粉末カフェインの売買は合法で、オンラインなどでも販売されている。FDAによると、茶さじ1杯の純粋粉末カフェインはレギュラーコーヒー28杯分のカフェインに相当する。

3.カフェインは精神にも影響を及ぼす

カフェインは依存性が強く、カフェイン摂取中止後12~24時間で激しい頭痛や疲労、イライラ、意気消沈などの症状が現れる。「これらは、カフェイン離脱症状なのです」とデューク大学医学校のジェームズ・レーン名誉教授は語る。心理学ハンドブックの最新版「診断と精神障害の統計マニュアル」(DSM-5)にも「カフェインの欠如」はメンタルヘルスに関わるとされており、これらの症状が仕事をする際などの妨げとなるのは明白だ。

4.カフェインは脳内化学物質に類似

カフェインは神経伝達物質である「アデノシン」に似た分子構造なので、脳細胞内でアデノシンレセプターに結びつくこともある。そうすることで神経細胞活動が活性化され、一時的に目が覚めて元気が出たように感じる原因となる。

5.カフェイン入りの石鹸もある

現代では、予想もしないところでカフェインが使われている。カフェイン入り水やピーナツバター、シャンプー、頭痛薬、ダイエット食品、サプリメントなどに配合されており、中にはカフェインを含有したお風呂用石鹸もある。「この石鹸は朝の目覚めの手助けになる」と考える人もいるかもしれないが、「カフェインは肌から吸収されるとはいえ、この石鹸が日中の覚醒を促すということには疑問符が付く」とレーン名誉教授は語る。

6.カフェインはストレスを高める

カフェインを毎日摂取するとストレスが増幅し、ストレスホルモンが増えるだけではなく、血圧と心拍数も高めてしまうという結果を示した研究もある。「高血圧症や2型糖尿病(予備軍含む)の人は、コーヒーなどのカフェイン入り飲料をやめることで血圧や血糖値が下がるかどうか試してほしい」とレーン名誉教授は語る。ただし、血糖値の低下を確認するには数カ月かかる場合もあるとのこと。

その他では、「オレンジソーダにもカフェインが含まれている」「植物がもっているカフェインは天然の殺虫剤・除草剤になる」などが興味深い事実として記されていた。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。