毎年8月は、厚生労働省によって「食品衛生月間」と定められているのをご存じだろうか。気温も湿度も高い夏は、食中毒の要注意シーズン。統計上、食中毒は飲食店で発生することが多いが、家庭での軽い食中毒の発生数も多数にのぼるという。風邪による下痢だと思い込んでいた不調がなかなか治らず、病院を受診したら食中毒だったといった話もよく聞くだろう。

そこで本稿では、楽しく安全に夏の食を楽しむために知っておきたい食中毒の予防法を紹介する。

身近に潜む食中毒のリスクを回避しよう

知っているようで知らない食中毒のおさらい

食中毒とは、細菌やウイルスなどの病原微生物や、動植物に含まれる自然毒、有害な化学物質などが混じったものを食べたり飲んだりして起こる病気のことを指す。症状や注意点をまとめた。

主な症状と注意点

「腹痛」「下痢」「嘔吐」「吐き気」などの急性の胃腸症状を伴うものが多いが、発熱や頭痛なども起こるケースがある。大半は対症療法で治るものの、時には生命に危険が及ぶ場合もあるため、油断は禁物だ。

食べてから数時間程度で発症する場合もある一方で、潜伏期間が1週間以上のケースもある。下痢や嘔吐が治まらないときや発熱がある場合は、すぐに病院に行くのが正解と考えよう。

また、嘔吐や下痢で体内から急に水分が失われると脱水症状を起こしやすいので、水分をこまめに補給すること。

原因となる主な細菌・ウイルス

ふぐやきのこのような自然毒によるものもあるが、食中毒の原因の大半は細菌やウイルスなどの病原微生物への感染によるものとされている。

■細菌性食中毒の主な例
腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O157など)、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など

■ウイルス性食中毒の主な例
ノロウイルス、A型肝炎ウイルスなど

これらの細菌・ウイルスのうち、カキなどの貝類によるノロウイルスや、肉食の増加に伴って増えているカンピロバクターによる食中毒を近年、耳にした経験を持つ人も少なくないだろう。

食中毒予防の原則

菌やウイルスを「付けない」「増やさない」「やっつける」が食中毒予防の3大原則とされている。

菌を付けない

調理前や生の肉・魚、卵などを取り扱う前後には手洗いをしよう。調理途中でトイレに行ったり、鼻をかんだりした後などにも忘れずに。生の肉や魚などを切ったまな板や包丁、スポンジなどのツールも使うたびによく洗い、台所用殺菌剤を使うなどして殺菌をするようにしよう。

菌を増やさない

細菌の多くは高温多湿の環境で増殖が活発になるが、10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下では増殖が停止する。食品は10℃以下で保存し、早めに食べきることを心がけるように。

菌をやっつける

加熱すべきものは十分に加熱する。特に肉や魚は「中心部を75℃で1分間以上の加熱」を目安にする。

さらに見落としがちだが、調理環境全般への意識としてシンクや水道の蛇口、キッチンの調理台なども清潔に保とう。

これらの項目に気をつけたうえで、免疫力を低下させない生活を日頃から心掛けることも大切。年齢や体調、ストレスの有無などは個人で状況が異なるものの、同じものを食べても食中毒を起こす/起こさないの差が出るのは、免疫力によるところも大きいであろうからだ。

BBQなど、アウトドアでの食中毒に要注意

夏休みにBBQやキャンプなどのアウトドアを満喫する人もいるだろうが、そのような場面は特に食中毒に注意が必要。以下にまとめたルールの徹底が基本となる。

・調理の直前まで食材は冷やして保管する
・お肉や生魚を加熱不十分な状態で食べない&生野菜などにはくっつけない
・生ものを扱ったトングや箸は、調理済みのものを食べるときに使わない
・おにぎりを握るときはラップ、ビニール手袋などを使う
・鶏肉を生や半生で食べることは避け、十分に加熱する

普段調理をしない人が調理するときや、抵抗力の弱い乳幼児やお年寄りなどがいる場合にも、食品衛生への意識を忘れないでおこう。

少し気をつけるだけで、食中毒のリスク低減は可能。予防のポイントでも触れたが、日頃から体調管理や生活習慣に気をつけ、免疫力を落とさないことも食中毒に対抗できるからだづくりとして重要だ。

また、十分な睡眠や休息を取るのはもちろん、免疫機能を担っている腸のコンディションを整えることも手段として有効。「さまざまな種類の発酵食品で乳酸菌を摂取する」「食物繊維をたっぷり摂(と)る」などして、腸内環境の改善も試してみるといいだろう。

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