はじめに
こんにちは。NTTデータ クラウド技術部です。
2023年5月に米国ボストンで開催された、Red Hat社主催のイベントである「Red Hat Summit 2023」、および「Ansible Community Day」へ参加してきました。 今回は現地で伺った内容や新製品の動向に関する参加レポートをお届けします。
Red Hat Summitとは
Red Hat Summitは、商用Linuxとして良く利用されているRed Hat Enterprise Linuxの提供元のRed Hat社が年に1度開催しているイベントです。 Red Hat社は、OpenShiftを利用したクラウドネイティブ化や各パブリッククラウドとの協働も積極的に推進しており、従来のLinuxだけではなく様々なオープンソースを元にした製品を展開しています。
今年のイベントはコロナ禍も落ち着いたこともあり、久しぶりにオフラインでのイベントとなりました。 会場は幕張メッセのようなコンベンションセンターを貸し切っており、関連企業のブース出展やテーマ別のセッション、ハンズオンでの研修会が行われました。
また、今年は同タイミングでRed Hat社もサポートしているオープンソースプロジェクトAnsibleのイベントとして、Ansible Community Dayも同時に開催されました。 Ansible Community DayがRed Hat Summitと同時に実施されるのは、今回が初とのことでRed Hat社がAnsibleへ力を入れていることが窺えます。
Keynote
今回のイベントでは3つのKeynoteセッションがあり、執筆時点ではRed Hat社の公式YouTubeで公開されています。
- Red Hat Summit 2023 Keynote: Innovation doesn’t rely on your IT budget
- Red Hat Summit 2023 Keynote: Optimize to innovate at scale
- AnsibleFest at Red Hat Summit Keynote: The automation moment?and beyond
ここからは、新製品の中で筆者が興味を持った4点について、個人の意見・見解を交えながらご紹介していければと思います。
新製品ピックアップ
Red Hat Developer Hub
今回のイベント内で Red Hat Developer Hub という新製品が公開され、6月末を目途にDeveloper Previewが利用可能になると発表されました。
Red Hat Debeloper Hubは、Backstageというオープンソースプロジェクトを元にしており、OpenShift・Kubernetesのシステム開発者の体験向上のため利用するポータルを提供して、システム開発者の生産性向上のために利用するものとのことです。
このポータル上では、社内のサービスやAPI、オーナー、リソースをカタログとして表示することで、社内の資産を活用したり、効果的に他のアプリケーションやサービスと接続できるようにすることをシステム開発者へ提供し、さらに、プラグインを追加していくことで、機能を拡張していくことができるようです。
参考: Red Hat、開発者の生産性向上に役立つRed Hat Developer Hubを発表
興味深いと考えているのは、システム開発者用のエンタープライズ用途のプラットフォームをオープンソースプロジェクトとして開発している点です。 オープンソースプロジェクトとして開発することで、世界規模で様々な企業のシステム開発におけるナレッジを蓄積・反映していくことができると考えるため、利用する社内のシステム開発者のレベル・生産性を向上させることに寄与していくだろうと感じました。今後利用してみるのが楽しみです。
Red Hat Trusted Software Supply Chain
DevSecOpsを促進するソリューションとして、 Red Hat Trusted Software Supply Chain が発表されました。
参考: Red Hat、「Red Hat Trusted Software Supply Chain」を発表
DevSecOpsは、当社でもベストプラクティスの作成を行うなど注力している領域の1つですが、Red Hat Trusted Software Supply Chainを利用することで、Red Hat社がオープンソースのコミュニティで培ったナレッジを利用できます。また、それを特定のパブリッククラウドのサービスではなく、ハイブリッドな環境で活用できることは大変魅力的であると思います。 ソリューションには複数のサービスが組み込まれており、現時点ではService Preview前のサービスも含まれていますが、近々Service Previewになるとの発表もありましたので実際に利用してみたいと考えています。
Event-Driven Ansible
Red Hat Summit、Ansible Community Dayの両イベントにて Ansible の新機能である、
Event-Driven Ansible が紹介されました。
Event-Driven Ansibleは、従来、基盤自動化・IaCとして利用されている、Ansibleに追加される拡張機能であり、イベント内での発表内容としては、Red Hat Ansible Automation Platform2.4の一部として、一般提供が開始されるとのことです。
参考: Red Hat、Event-Driven AnsibleでIT自動化を加速
筆者は、オープンソースプロジェクトのEvent-Driven Ansibleを実際に稼働させたことがありますが、この機能を用いることで、より運用目線でのAnsibleの利用が可能になると考えています。 Event-Driven Ansibleは、システムへの負荷が増大したり、特定のログを検出したりといった、事前に定義したイベントを契機にAnsible playbookを実行することができる機能です。 このEvent-Driven Ansibleの機能とAnsibleの基本概念である「冪等性」を組み合わせることで、イベント発生時にシステムを期待通りの状態に強制することが可能になり、有用なシーンが多数あると感じました。
Ansible Lightspeed
さらにAnsible関連では、Ansible Lightspeed という新製品が公開され、今年の後半にTechnology Previewが開始されることが発表されました。
Ansible Lightspeedは、Playbook内のタスクのnameをIBM Watsonが自然言語解析し、AIを用いて自動的にタスクを記述する機能です。
参考: Red Hat、AIを活用したIT自動化のための「Ansible Lightspeed」を発表
イベント内ではデモとして実際にAnsible Lightspeedがタスクを自動記述する様子を拝見することができました。 実際の開発現場ではただ動くだけのPlaybookではなく、変数の利用や保守性といった様々なことを考慮して記述していくことになるためAnsible Lightspeedがどこまで実用的かをデモから推し量ることはできませんでしたが、今後実際に利用してみるのが楽しみだと感じました。
おわりに
今回は、Red Hat Summit 2023参加レポートのご報告をさせていただきました。 まだ提供前の製品の発表もありましたが、早期に検証を行い、みなさまのご支援ができるように準備を進めてまいります。
また、来年の予定も発表されRed Hat Summit 2024はコロラドで開催とのことでした。 NTTデータでは、今後も継続して新技術の動向を探っていけるよう努めてまいります。
余談ですが、会場にはCool Stuff StoreというRed Hat社のグッズを販売するコーナーがありました。 Red Hat社のファンの筆者は今回のイベントのTシャツを購入できましたが、3日間に渡って開催されたイベントの2日目午前にはサイズによっては欠品がでるほど盛況でした。
また、当日はグッズだけでなくステッカーやバッグなど、各種ノベルティもたくさん頂戴し大変楽しむこともできました。 引き続き個人としてもRed Hat社のファンとして活動していければと思います。
[PR]提供:NTTデータ