1951 年に創業したノーリツは、給湯機器やビルトインコンロなど、暮らしに寄り添う住設機器を製造し、全国のビジネスパートナー向けに販売、「お風呂は人を幸せにする」という創業の原点のもと、人々の生活水準の向上と環境・社会課題の解決を目指して事業を展開しています。IT をはじめデジタル技術の活用を積極的に進めている同社では、ビジネスパートナーや販売店向けの会員制ビジネスサイト「お湯net」を運営し、各種営業支援ツール・サービスを提供しています。ただ、これらのツール・サービスは認証方法が統一化されていなかったため、ユーザーの利便性、サービス間の連携における課題が顕在化。同社はその解決に向けて認証基盤の刷新を検討しました。そして複数存在した認証方法を統一化するための基盤として採用されたのは、マイクロソフトが提供する企業・消費者間の ID 管理サービス Azure Active Directory B2C でした。
会員制のビジネスサイト「お湯net」を通じ、ビジネスパートナー/販売店向けの営業支援ツール・サービスを展開
ノーリツが運営している「お湯net」は、同社のビジネスパートナーや販売店向けの営業支援サービスが用意された会員制のビジネスサイトです。ビジネスパートナー/販売店の業務効率化を支援し、その先の消費者に対して優れた顧客体験を提供することを目指しています。マーケティング企画部 企画室 販売推進グループの湊本 氏は、同社がビジネスパートナーや販売店向けに営業支援ツール・サービスを提供する意図をこう語ります。
「建設業界や住宅設備機器業界は、デジタル化が比較的遅れている業界といえます。そこでノーリツでは、製品の技術情報や図面を検索するための『製品データサービス』をはじめ、製品/取替品検索や在庫検索、提案書・見積書作成といった営業支援ツールを『お湯net』上から利用できるようにし、ビジネスパートナー様や販売店様など住宅設備機器業界全体の業務改善を支援しています。また、給湯器やガスコンロの設置現場から製品/取替品を調べたいというビジネスパートナーのニーズに応え、スマートフォンアプリの LINE を利用したチャットボットサービスも提供しています」(湊本 氏)。
※2022年8月よりリニューアルし、コンテンツを「みる」「さがす」「つくる」に分けて、さらに使いやすくアップデートされました。
※LINEチャットボットでは、スマートフォンでの修理進捗の確認や、プッシュ通知でのお知らせなどを利用でき、修理現場でのスピーディな現場対応を支援しています。
これらのサービスは、基本的に「お湯net」からの利用が可能ですが、運用自体は個別に行われており、認証方法も統一されていませんでした。このため、複数のサービスを利用する際にログインし直す必要があったり、サービス間の連携に問題があったりといった課題が顕在化していたと湊本 氏。「お湯net」の基盤刷新を機に、同社の IT システムの企画開発・運用保守を担っている企画管理本部 IT推進部とともに認証基盤の見直しを検討したと、今回のプロジェクトが始動した経緯を振り返ります。
「各種営業支援ツール・サービスを開発する際に認証方法を統一化していなかったため、『お湯net』内でサービス間を移動するときに不具合が起きていました。LINE を使ったモバイルサービスから『お湯net』や他のツール・サービスにログインする際にも、情報がうまく引き継げず正常に動作しないといったトラブルが発生しており、IT推進部と打ち合わせをして認証基盤刷新の検討を開始しました」(湊本 氏)。
サービスごとに個別に認証していたシステムを、Azure AD B2C の導入により一元化
こうして 2020 年末に「お湯net」のシステム基盤再構築プロジェクトが始動します。バラバラに運用してきた認証方式を統一するための認証基盤として同社が採用したのは、企業・消費者間(B2C)の ID 管理サービスとしてマイクロソフトが提供する Azure Active Directory B2C(以下、Azure AD B2C)でした。採用の決め手は、自社で利用している ID 管理サービスである Azure Active Directory(以下、Azure AD)との親和性が高く、社内・社外の認証を統合的に管理できるところにあったと、IT推進部 推進グループの辻 氏は語ります。
「サービスごとに個別の認証サービスを利用していることのデメリットは以前より感じており、『お湯net』の刷新に合わせて認証基盤の統一化を検討しました。『お湯net』で利用できるサービスはビジネスパートナー様向けという位置付けですが、実際には社内のユーザーも多く、認証サービスの選定にあたっては社内・社外ユーザーの認証を共通化できることも重視しました。そこで社内の認証に利用している Azure AD と親和性の高い認証サービスを探していたところ、マイクロソフトから Azure AD B2C を紹介いただき、社内・社外の認証を統合的に管理できる仕組みとして最適と判断し、採用を決定しました」(辻 氏)。
認証サービスの選定にあたっては他のソリューションも比較検討されましたが、Azure AD との親和性において、Azure AD B2C の優位性は揺るぎなかったと辻 氏。同じく本プロジェクトの PM を担当した IT推進部 推進グループの藤井 氏は、セキュリティ面においても信頼性があったと Azure AD B2C 採用の要因を説明します。
「弊社では Office 365 を全社的に導入しており、スマートフォンなどのモバイルデバイスを活用している営業担当者の業務効率化や、Microsoft Teams などを使ったテレワーク環境の利便性向上などを実現しています。社内・社外で利用するソリューションとして、マイクロソフト製品の信頼性・安全性は確認できており、認証基盤の選定における重要なポイントであるセキュリティ面においても、Azure AD B2C は要件を満たすと判断しました」(藤井 氏)。
マイクロソフトの柔軟なサポートもあり、予想以上の短期間で認証基盤の構築を実現
Azure AD B2C を採用したことで、システム基盤再構築プロジェクトは加速。2020 年冬から、わずか数カ月で要件定義を完了、2021 年秋から正式稼働を開始しています。システムの構築に携わった藤井 氏は、Azure AD B2C の機能とマイクロソフトの支援により、予想より短い期間で運用を開始できたと喜びを語ります。
「認証・認可のシステムには高い可用性と安全性が求められるため、当初はそれなりの期間がかかると予想していました。しかしマイクロソフトの柔軟な支援により、Azure AD B2C が我々が課題としていた部分の解決を実現できることが確認出来たため、企画検討・設計期間の大幅な短縮を実現。わずか数カ月で構築・運用を開始することができました」(藤井 氏)。
辻 氏も「IT推進部のなかでは 1 年以上かかるプロジェクトになると考えていましたが、マイクロソフトの支援と Azure AD B2C を採用したことでスピーディに認証基盤の企画検討ができました」と語り、短期間で認証基盤の統一化を推進できたことを高く評価します。
なお、サービスの利用者としては、社外ビジネスパートナーとノーリツの社員を、利用端末としては、PC やモバイルデバイスを想定しています。システム処理構成として、社外ユーザーに対しては Azure AD B2C、社内ユーザーに対しては Azure AD を利用することでセキュリティ向上に成功。Microsoft Azure が提供する API ゲートウェイサービス Azure API Management を活用し、製品データサービスをはじめとした各種営業支援ツールや、LINE を利用したチャットボットなど SaaS 系サービスのシームレスなログインを実現しています。
構築にあたっては、参考となる Azure AD B2C の導入事例が少なかったために苦労したと辻 氏。「まずは Azure AD B2C をどう使うのかというところからスタートし、マイクロソフトと相談しながら実現性を確認して設計・構築を進めていきました。各システムに対してステークホルダーがいるということで、関係各所と調整する必要があったことも苦労したところです」と当時の苦労を振り返ります。
また辻 氏は、技術的な面で工夫したポイントとして、認証部分は Azure AD B2C に統一し、認可(権限の付与)に関しては各システムでの運用としたことを挙げます。その理由は「認可に関してはそれぞれのシステムごとに思想が異なるため」で、認証を統一化しながら、柔軟な権限設定が行える環境を実現したといいます。
認証基盤の統合から新たなビジネスを創出し、ビジネスパートナーや消費者に価値を提供していく
本プロジェクトは、統一認証基盤の構築と、各種サービスへの適用という 2 つのステップで推進されました。第 1 ステップとなる認証基盤は、前述したとおり 2021 年 秋から正式稼働を開始。既存の認証基盤からの移行はスムーズに進み、大きなトラブルが発生することなく、現在は 24 時間 365 日(メンテナンス時を除く)、安定稼働しています。その認証基盤を各種サービスに適用し、認証の統一化を実現する第 2 ステップは 2022 年の春に完了し、一度ログインすれば「お湯net」が提供する各種サービスを利用できるようになりました。湊本 氏は、今回のプロジェクトで得られた成果についてこう語ります。
「これまでのシステムと比較し、業務工数は明らかに減っています。たとえば、従来は『お湯net』の会員登録を行う場合、弊社社員が社員用の管理画面からビジネスパートナー様や販売店様が紙に書いてくださった情報を管理画面で入力し、そこから ID やパスワードを作成して FAX でお知らせした後、台帳管理をしていました。それが、『お湯net』と Azure AD B2C を連携した認証基盤を導入したことで、ID やパスワードは自動採番されるようになり、パスワードの問い合わせに対しても、ユーザー自身がパスワードを再発行できるようになるなど、業務工数の大幅な削減を実現できています。権限設定に関しても柔軟に行える仕組みを構築できているので、今後はビジネスパートナー様の業種や特性などに応じた丁寧なサービスを提供できるようになればと期待しています」(湊本 氏)。
湊本 氏は、ビジネスパートナーや販売店の業務が、今回の取り組みによって「お湯net」上でシームレスに行えるようになったと語り、これは Azure AD B2C の導入で各種サービスの統一した認証が可能になったことで実現できた成果であると、手応えを口にします。辻 氏も「これまで以上にスピーディに業務を処理できるとなれば、それはビジネスパートナー様や販売店様の生産性向上につながり、その先にいる消費者の顧客体験や利便性の向上にも大きな効果が期待できます」と語り、より多くのビジネスパートナーや販売店に「お湯net」のサービスを利用してもらいたいと力を込めます。
今回の取り組みを踏まえ、ノーリツでは更なる業務のデジタル化と、システム間の連携、データの利活用を進めていく予定です。湊本 氏は、業務部門の視点から今後の展望を語ります。
「今回のプロジェクトで、『お湯net』の会員情報を管理するための環境は構築できました。今後は管理の効率化を進めて、さらにお客様へのサービス提供のスピードアップや利便性の向上を図りたいと考えています。将来的には、『お湯net』や LINE チャットボットを通して、ビジネスパートナー様や販売店様と一緒に業界全体の更なる効率化を通じた生産性向上を実現出来ればと考えています。」(湊本 氏)。
その実現に向けた第 3 ステップを見据える IT推進部は、マイクロソフトが提供している Microsoft Azure のサービスを注視し、有効なソリューションの活用を模索しています。
「今回構築した認証基盤を効果的に使ったサービスの展開に向けて、Microsoft Azure の最新機能やサービスに関する情報を収集しています。Azure AD B2C と同様、システム構成や活用方法に悩むこともあると思いますので、マイクロソフトには最新情報の提供から製品選定、システム構築まで幅広く支援していただけることを期待しています」(辻 氏)。
「マイクロソフトには、試してわからない部分について親身に相談に乗っていただき、プロジェクト全体を通じて多くの“気づき”を得ることができました。今後も柔軟なサポートをいただきながら、ノーリツとビジネスパートナー様、販売店様が一体となってデジタル化を推進し、その先にいる消費者に対して新たな価値を提供していきたいと考えています」(藤井 氏)。
自社だけでなく、住宅設備機器業界全体のデジタル化と生産性向上を見据えて IT 環境の改善に取り組むノーリツ。その新たなチャレンジには、今後も目が離せません。
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