TECH+は2025年3月、「情シスの業務改革 2025 Mar. 2025年度を見据えた最後のアプデ」と題したオンラインセミナーを実施。DXの進展とともに重要度を増してきた情シスの役割、現状の課題などについて、多くの有識者や企業の担当者による講演が行われた。本稿ではその中から、株式会社日立社会情報サービスの松川 正臣氏による「システム運用部門が『攻めの情シス』に転換! システム運用改革のはじめかた」の概要をお届けする。

  • (写真)株式会社日立社会情報サービス 松川 正臣氏

    株式会社日立社会情報サービス 松川 正臣氏

経営陣と情シスが抱える不満、そのギャップを埋める「システム運用改革」

これまでの情シスはシステム運用や保守を中心とした業務を担ってきた。しかし現在は、「攻めの情シス」として、ビジネス環境の変化に柔軟に対応しながら企業のDXを成功に導く「経営の戦略的パートナー」の役割が求められている。

例えば、AI導入による効果的な活用方法の確立、DX戦略の策定および実行、セキュリティの確保、運用コストの最適化、人財育成とスキル転換の加速など、事業継続に貢献することを目的に、求められる業務内容は多岐にわたる。

しかし現状はどうだろうか。松川氏はGartner社が日本企業のCIOなどに行った調査結果(2024年10月)を引用し、「経営戦略に対して、IT/デジタルを活用した積極的な提案がない」「ITがビジネスにどのように貢献しているかわからない」「経営メンバーが納得するIT/デジタル戦略が描けていない」「IT部門の活動が経営/ビジネスにどのように貢献しているのかわからない」など、経営陣が情シスをはじめとするIT部門に対して抱いている不満を紹介した。

「価値のあるIT/デジタル戦略をつくれておらず、経営陣にIT部門としての価値を示せていないということがわかります」(松川氏)

こうした経営陣の不満を解決するには、「情シスのインフラ運用担当者を、新たな取り組みである戦略企画・立案業務へ移行していくべきだ」という。その理由として、情シス部門に戦略企画・推進担当者の人員・スキルが不足していることに加え、インフラ担当者が抱く「自身のキャリアパスへの不安」や「安定稼働が当たり前とされるインフラ運用業務への評価の低さへの不満」を挙げた。

経営陣と情シスの軋轢を解消するにはシステム運用改革が必要だと、松川氏は続けて語る。この改革で目指すのは、自律的かつ継続的に、運用業務のライフサイクルが改善されていく仕組みだ(図1)。

  • (図1) システム運用業務のめざすべき姿

    (図1) システム運用業務のめざすべき姿

「運用ライフサイクルのPDCAが自動化されることにより、これまで負担が大きかったシステム運用現場の負荷が減るでしょう。その分の稼働をDXやAIなどの技術検討や、戦略企画・設計などの上流工程へシフトすることができます」(松川氏)

では、上流工程に携わる人財育成を行うために情シスは何を行うべきか。松川氏は「まずは業務の棚卸を行い、決済業務や承認行為など、社員でなければできない業務以外はアウトソーシングができるか検討することをおすすめします」と述べる。

IT運用システムのノウハウを統合させたOpeLightサービス

アウトソーシングの選択肢の1つとなるのが、日立社会情報サービスが提供する「OpeLight(オペライト)サービス」だ。1997年から同社が培ってきたIT運用システムに関する技術・ノウハウを結集し、運用事業の実績は累計1500件を誇るソリューションサービスである。

「これまでIT運用コスト15%削減や、エンジニア対応の50%削減などを実現してまいりました。システムオペレーションを支える運用エンジニアや運用資格保持者も多く、お客様のシステム運用改革をご支援するサービスです」(松川氏)

OpeLightサービスには、先述した自律的・継続的にPDCAサイクルを回すために必要なサービスが用意されている(図2)。

  • (図2) OpeLightサービスの適用範囲

    (図2) OpeLightサービスの適用範囲

まずはシステム運用に関する業務を第三者視点で整理・可視化し、改善策を提案する「運用診断サービス」だ。このサービスには、IT運営のオペレーション部門を対象とした「運用現場診断」と、IT運用の管理部門を対象とした「運用管理診断」の2つがある。

例えば現場で運用ミスが頻発している場合、運用現場診断で現場のリスクを測り、運用管理診断で運用プロセスや管理形態の妥当性を、客観的な視点から評価してもらえる。運用管理診断の結果は、求められているレベルと実際のギャップがグラフで可視化されるので分かりやすい。

「当事者だけでは見落としがちなリスクを抽出し、改善につながるサービスをご提案します。ヒヤリハット撲滅対策を立てやすく、中長期的な改善計画を検討することができます」(松川氏)

2つ目は、運用診断サービスによって示された改善策に基づく「運用設計サービス」だ。 同社の運用スペシャリストが、長年にわたり蓄積したノウハウをもとに、ユーザー企業のシステム運用など、全体の流れを理解した上で適切な運用設計を行うという。

「リモート運用サービス」では、高レベルの堅牢性、可用性、機密性を有したオペレーションセンター機能が提供される。リモート運用サービスにはアラート検知、報告、復旧対応などを行う「システム監視サービス」と、事前に合意した運用手順をもとに定型作業を実施する「システムオペレーションサービス」がある。

システム監視サービスの利用メニューには、「営業時間内」「営業時間外」「24時間365日」、システムオペレーションサービスのメニューには「営業時間内(定時)」「24時間365日(定時)」「24時間365日(随時)」があり、料金は作業量をベースに算出されるため、ニーズに合わせて利用することでコストを抑えることも可能だ。

なお、このOpeLightサービスのオペレーティングセンターは、BCP対策にも利用できる。

「自社で環境を準備するよりも、短期間かつ安価で業務継続の仕組みを構築することが可能です。当社では東京と沖縄にオペレーションセンターをご用意し、お客様のニーズに合わせて環境をご提供します」(松川氏)

休日稼働の人件費など、約20%のコスト削減に貢献

松川氏はOpeLightサービスのユースケースとして、かんぽシステムソリューションズ株式会社(以下、かんぽSOL)の事例を映像で紹介した。

同社はかんぽ生命保険に関わる基幹系、オープン系、クラウドなど、20~30種類の業務システム20~30を運用しており、その安定稼働を徹底するためにOpeLightサービスの1つであるオンサイト運用サービスを導入したという。日立社会情報サービスでは、まずかんぽSOLの業務分析を行い、メインセンター、バックアップセンターそれぞれでの運用業務に、オンサイト運用サービス適用することで大幅な効率化を図ったという。

かんぽSOL担当者からは「休日の稼働のために人を配置していたが、それをアウトソースしたことで約20%のコスト削減ができた」「コストだけでなく品質維持にも献身的に対応してもらえた」「高度な運用ノウハウ、経験値があるので、経験則で障害対応に取り組んでもらえる」、さらに「現状に甘んじず改善を行ってくれている」といったコメントが寄せられており、同社がOpeLightサービスを高く評価していることがうかがえた。

講演の締めくくりとして、松川氏はOpeLightサービスの今後の展開を次のように語った。

「OpeLightサービスにより蓄積された統合ナレッジと、生成AI基盤を活用して、AIエージェント・デジタル基盤を実現します。 AIOps/NoOpsの積極活用による少人化の徹底と、人材育成+生成AI活用による最終意思決定、信頼関係構築、感情理解など、人にしかできない業務に集中していきます。システム運用の地位を向上しつつ、ITシステムの安定運用と事業貢献による提供価値の最大化を目指してまいります」(松川氏)

IT運用はもとより、ITを活用した戦略の企画・遂行に携わる人材の確保という、どの企業にも共通した課題解決のために、OpeLightサービスのようなアウトソーシングサービスは、今後ますます存在感を高めていくだろう。