企業の潜在価値を引き出し、成果を最大化させるポイント

ビジネス環境の変化に適応し続けるために、データを基に考え、データを基に会話する組織を作る。このようなデータドリブン組織への変革には、多くの課題が立ちはだかる。

製造業における、現場と経営 両輪デジタル変革 - Domo CARAVAN in 福岡

2024年7月4日開催
主催:ドーモ株式会社

判断の基準となる「データ」が、目的・項目・内容・入力法とそれぞれ異なり、各「データ」も部門・部署でサイロ化しデータの連携が取れておらず、そういった課題を克服するためにツールを導入しても、社員の”データリテラシー”という次の課題に悩まされている、という責任者の方も多いだろう。しかし、特にビジネス環境が大きく変化する製造業において、今までと同じ経営・現場・ビジネスでは、変化に対して適切に対応することは難しい。経営から現場まで全ての社員がデータにアクセスできる体制を構築することは決して簡単ではないが、その壁を乗り越えビジネス成果に繋げている企業がある。「Domo CARAVAN in 福岡 現場と経営 両輪デジタル変革」では、データドリブンな組織への変革を実現し、企業の成長へと結び付けたキーマンが登壇し、企業の「データ活用文化」醸成の仕方まで考察した。本レポートでは、その内容をダイジェストでお届けする。

主催者講演:DXの成功パターンと失敗パターン

「Domo CARAVAN in 福岡 現場と経営 両輪デジタル変革」は、ドーモの鈴木 稔による主催者講演からスタートした。Domo CARAVANは、大阪府、愛知県で実施しており、福岡県は3回目、ドーモ初の九州地域での開催となった。ドーモは、2012年からアメリカユタ州にてビジネスをスタートさせ、現在は全世界2600社以上の企業が導入している。ドーモでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を通して、様々なノウハウを蓄積している。

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経済産業省のDXレポートにおいては、DXとは既存ビジネスをデジタル化により効率化、省力化するだけではなく、デジタルにより新しい価値を作り出すことであると書かれている。ドーモが企業のDXを支援する場合、まずは既存ビジネスの効率化からスタートすることが多いが、成功している企業はそこから既存ビジネスの付加価値向上による収益化、さらにデジタルによる新しいビジネスの創出を目指していると鈴木は話す。

ここで鈴木は、DXを支援してきた経験から、DXを成功させるために必要なものとして次の6つを挙げた。

  1. 経営層のデータ活用に対する理解とコミットメント
  2. 自社ビジネス課題の理解
  3. データ人材(ビジネス課題をデータで因数分解できる人)データアンバサダー
  4. アジャイルに設計できるデジタルソリューション
  5. DXを経験しているアドバイザー
  6. 実際のデータ

DXを成功させるには、まずは経営層が自ら率先してプロジェクトに関わらなければならない。そして、経営層だけでなく、現場レベルまでビジネスの課題を把握することが重要である。3つ目のデータ人材とは、プログラミングスキルではなく、ビジネスの課題を解決するために、どのKPIを改善する必要があるのか因数分解できる人材である。Domoでは、ビジネスとデータをつなげる人材を「データアンバサダー」と呼んでおり、鈴木は「データアンバサダーがいるかどうかが成功を左右する」と述べる。4つ目は、環境やニーズの変化に柔軟に対応できる発想力とソリューションを持つことである。5つ目が、DX経験者によるアドバイスである。最後に、活用できるだけの必要なデータがあることである。

そして、DXはどこから始めるか、という課題がある。鈴木はこれまでの経験から、成功するパターンの流れについて次のように話した。「最初に、経営の観点からビジネス課題を整理し、優先順位をつける。その課題のうち、デジタルで解決できるものを抽出し、さらに解決した場合の経済効果を試算し、その経済効果に見合ったIT投資を行う。そして実施した成果を評価し、成功した事例は社内で横展開をしていく」反対に、成功しないパターンとして、最初にデジタルツールを導入し、ツールから生まれたデータを収集・蓄積し、蓄積したデータを見ながら何ができるか考える。データを見るために可視化するツールを導入する。なかなかうまくいかないので、DX推進チームを作り、さらに別のツールを試してみる。「この流れで成功することは少ない」と鈴木は断言する。

成功するパターンでは、課題を解決するためにデジタルの力を使うという方針が定まっており、そこに適切な投資を行う。失敗パターンでは、方針がないままにツールを導入しているので、途中で停滞しがちである。鈴木はこのようにDXの大枠を整理し、「これからDXに取り組む方のヒントにしてほしい」と話した。

事例講演:島津製作所が語るDomoの活用と浸透 ~人とデータと現場課題をつなぐ~

最初の事例講演では、島津製作所の山川氏が登壇し、Domoの導入経緯、課題、活用事例、人材育成の取り組みなどについて紹介した。導入当初は製造部門のみで活用されていたが、徐々に他部門にも広がり、データ活用文化を浸透させつつある。

島津製作所は1875年に創業した。2023年度の売上高は5,119億円と4期連続で過去最高を記録している。分析機器、医療機器、産業機器など、幅広い事業を展開しており、世界中で製品・サービスを提供する。「科学技術で社会に貢献する」を社是に、最先端技術の開発に挑戦し続ける企業である。島津製作所は2019年からDomoを活用している。Domo導入のきっかけになったのが、当時製造担当常務執行役員で現在の社長が「データに基づいた製造」を打ち出し、MAIC(Measure, Analyze, Improve,Control / 測定、分析、改善、管理)で的確なアクションを起こす方針を掲げたことである。

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しかし、山川氏は2つの壁にぶつかった。1つ目は、製造拠点、事業部間で情報のつながりがないこと、2つ目は情報収集とデータ加工に時間がかかることである。この壁を乗り越えるために、BIツールを検討したところ、Domoを見つけ、データ分析に必要な工程がオールインワンでできることに魅力を感じ導入を決めた。導入後、棚卸削減の対策と効果振り返りに寄与し「仕事のやり方そのものが変わることを実感した」と山川氏は振り返る。製造担当常務からのトップダウンであったことも功を奏し、製造部門での認知が高まり、活用事例が増えていたが、ここでまた新たな壁にぶつかることになる。

1つはツール選定問題。他の部門では別のBIツールが使われていたため、Domo選定理由の説明を求められたり、別のBIツールとの比較検証を行ったりする必要があったという。2つ目は、データ活用文化が定着しないことだった。工場部門向けに予測データをダッシュボード化したものの運用には至らなかった。こうした状況を打破するために、山川氏はDomo布教活動として、Domoを活用する企業との交流会や社内勉強会を開催した。

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    山川氏講演資料:「島津製作所が語るDomoの活用と浸透」より

それでも定着しない中、ある時山川氏は「Domoの本質は単なるデータ可視化ではなく、経営課題解決のためのKPI設定であり、そこから行動につなげることだ」と気付いた。そこで、事象のストーリーを構造化して、アクションを前提としたダッシュボードの構築を意識し、「課題解決に向けたアクションとストーリー設計」を重視するようになった。

ちょうどその頃、SCM部門からの依頼があり、需給バランスの崩れによる物流停滞、部材入手難、納期遅延の課題解決に取り組むことになった。課題解決に向けたアクションとストーリー設計を実現できるチャンスとみた山川氏は、SCM担当者と協力し、Domoを使ったダッシュボード作成により、情報共有にかかる工数を最大51時間削減した。この取り組みは、後に改善活動の全社大会で大賞を受賞することになる。受賞をきっかけにDomo利用者数が急増し、データ活用が定着するようになった。

そこで、SCM担当者をビジネスアナリストと命名し、彼をロールモデルとしてビジネスアナリストを研修で育成することになった。この伴走型の人材育成プログラムを「Domo Dive Program」と名付け、Domo社協力の元、ビジネスアナリスト育成を行う他、テクニカル研修、相談会の開催など、様々な施策を展開している。研修は、実際の業務課題に取り組み、ラフスケッチを行うなど、実践的な内容となっている。さらに社内PRとして、実践者を紹介するショートムービーを作成したり、中期経営計画のDX人材育成とDomo Dive Programの活動をリンクさせるなど、組織的な取り組みを継続中である。このDX人材育成の目標値に対する進捗についてもDomoで管理している。さらに、Domoの利用状況に応じて部門をセグメントに分けてダッシュボード化し、活用状況を把握し、それぞれのセグメントに適したアプローチで活用を促進している。

最後に、Domoを導入する6年前の自分に向けてのメッセージとして、「必ず足踏みする時期はある。データ活用は可視化にあらず役に立ってなんぼ、本や動画で学習も大事だが手を動かしてなんぼ」と伝えたいと山川氏は話した。今後の展望として「データ活用を通じて社会課題の解決につなげていきたい」という決意を示して講演を終了した。

事例講演:現場から変革を起こし業務改善へ ~データの専門家でなくてもDXは推進できる~

次の事例講演では、大村氏が登壇し、DXによって、データ収集や分析作業に多大な時間を費やしていた業務プロセスを自動化し、より創造的な業務に専念できるようになったことを紹介した。

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オムロンは、血圧計などのヘルスケア製品で知られているが、実際の売上のうちヘルスケア事業が占める割合は約16%に過ぎない。主力事業は、工場の自動化に必要な制御機器事業であり売上の55%を占めている。その他、自動改札機などの社会システム、太陽光発電のパワーコンディショナーなどの環境事業も展開している。

大村氏は、1992年にオムロンに入社、2020年までは半導体の開発に携わっていた。2020年11月からグローバル購買・品質・物流本部 サプライヤ監査部に異動になり、半導体サプライヤの工程監査と基幹システムのDX推進プロジェクトに携わることになった。事例では、グローバル購買・品質・物流本部でのDXについて紹介した。

同社の課題は情報のサイロ化(分散、散在)だった。大村氏が異動した2020年当時、データが様々なデータベースに蓄積され、ファイルも散在し、サプライヤ監査部ではデータの収集と分析作業に大量の時間を費やしており、本来のクリエティブな業務に専念できていなかった。収集したデータはExcelを使って手作業で集計・分析を行っていたため、非常に非効率的で、会議でデータを共有する際にも、必要なデータが揃わない、情報の質や量、鮮度に課題があるなど問題が山積していた。

この状況を見た大村氏は、時間がもったいないと感じ、疲弊している同僚を見て「自分はこんな仕事をしたくないと思った」と胸の内を明かす。上司から「品質パフォーマンスをモニタリングする仕組みを作りたい」と命じられたことをきっかけに、データ集計と分析の課題を解決するためにDXを推進することになった。

オムロンでは「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という創業者の言葉が哲学として根付いている。普段の業務でもこれを実践したいと考えた大村氏は、「脱Excel」と「ツークリック」でデータの集計と分析ができることをDXの目標とした。分散したデータソースを統合し、リアルタイムで最新の客観的なデータを可視化できるポータルサイトを構築し、これにより、「脱Excel」と「ツークリック」でデータドリブン経営ができる環境を構築することを目指した。

ツール選定にあたっては、最初はDomo以外のツールでPoCを実施した。ベンダーが構築したダッシュボードでやりたいことは実施できたが、別のデータを見るためにはSQLのスキルが必要だった。そのためダッシュボードを変更する場合はその都度ベンダーに依頼することになり、時間やコストの問題から導入を見送ることになった。

その後、ノーコードで扱えるツールがあることを知りDomoにたどり着いた。Domo担当者から2時間のレクチャーを受けたところ、大村氏自身でダッシュボードを作成できた。「Domoがすごいのか、私がすごいのか?」と悩んだ大村氏は、他のグループメンバーに教えてみたところ、そのメンバーも自分で作成できるようになった。「DXはアジャイルにできないと意味がない」と大村氏は考えており、Domoはそれが実現できるツールだとわかり、導入を決定した。

大村氏は、業務効率化のためのDXは「守りのDX」と評する。この実現のために3つのステップがあった。一つ目のステップは「ビジネスクエスチョンを立てること」。業務フローを整理し、業務フローごとにビジネスクエスチョンを抽出し、ビジネスクエスチョンに関連するデータとデータベース、ビジネスクエスチョンの答えに対する判断とアクションを整理した。次のステップとして、判断やアクションをするために、必要なデータの統合を行う。3つ目のステップで、アクションにつながるデータをグラフやマップに変換し可視化する。

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    大村氏講演資料:「現場から変革を起こし業務改善へ」より

ビジネスクエスチョンの例として、購入部材に不具合が発生したケースをあげた。この場合、仕入先、メーカー、不具合が発生している拠点、過去の不具合発生件数、部材を利用している工場、購入件数、利用している製品、出荷先などがビジネスクエスチョンとなる。これらのデータを得るための情報ソースを整理すると、4つのシステムをまたがって確認する必要があることがわかった。

必要なデータを統合したら、データを集計し可視化する。この結果から、仕入れ先、メーカー、利用している工場などがすぐに確認できるようになる。なお、データを集計するにあたっては、データ登録時の会社名に表記の揺らぎが発生しており、別の会社として集計されるという問題が発生した。この問題に対しては、あらかじめ用語のマスターを作成して、揺らぎのある名称を登録しておき、統合前に正式名称に変換するようにした。これにより、揺らぎがあっても、正しい名称で集約できるようになった。集計結果は、ビジネスクエスチョンに対応する形でデータを確認でき、不具合への対応が必要なのかどうか、アクションの判断ができるようにしている。ダッシュボードではツークリックで必要な情報にアクセスできるようになり、目指していた姿を実現することができた。

最後に、Domoを導入する3年前の自分に伝えたいメッセージとして、大村氏は次のように話した。「データ集計分析作業、社内会議に明け暮れ疲弊した同僚たちを救い出し、皆が生き生きした明るい職場を実現せよ。反対勢力に負けずやり切れ。」そして、創業者の「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という言葉を再び引用し、「今やっている仕事は機械に任せられると感じるのであれば、どんどん機械にやらせればいい」と聴衆にDXを促して、講演を終了した。

パネルディスカッション:福岡を支えるメディア企業が挑むDX ~福岡放送のデータ活用ジャーニーを紐解く~

福岡放送(FBS)にてDX推進を行う白木氏と松浦氏に、ドーモの後藤がモデレーターとして取り組み内容についてお話をうかがった。FBSでは、視聴率だけに頼るのではなく、SNSデータやWebデータなど様々なデータを取り入れて、番組の評価方法の改善や営業支援などに活かしている。 FBSは1969年に開局した日本テレビ系列の基幹局。福岡エリアのローカル局としてテレビ番組制作やイベント事業の他、ドローンスクールやキャンプ場の運営なども行っている。またCSRとして「バカチンガー」というキャラクターが福岡から未来をちょっと明るくするために様々な活動に取り組んでいる。

SNSや動画配信サービスなど新しいメディアが普及する中、これまでメディアの主だったテレビが「One of Them」に成りさがり、今後テレビ局はどうあるべきなのかを考える必要があったと松浦氏は課題を語る。そんな中2022年7月に発足したリーチ戦略部は、地上波放送・Web展開・リアルイベント・新規事業などあらゆる手段を駆使してFBSのコンテンツをエリア600万人にリーチすることを目的としており、その目的達成のために、データ戦略による組織のDX化、番組支援、営業支援を実施することになった。

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FBSのデータ戦略においては2つのポイントがあったと松浦氏は話す。一つは視聴率という大きすぎる指標である。テレビ業界では視聴率が最重要指標だが、近年YouTubeなどが台頭する中で、100万回再生と視聴率7%ではどちらがよいのか評価が難しい。あらゆる手段での展開を考えるリーチ戦略部では、メディア横断的な評価をするため、視聴率を視聴率以外の数値で表現できるようにする必要があった。もう一つは、組織内にデジタルへの苦手意識を持つ人が多く、新しいシステムへの抵抗が強いことである。「この2つのポイントから、データドリブンな組織にするためには、誰にとってもわかりやすいデータの管理や集約方法、プラットフォームの構築が必要と考え、様々なツールを比較検討しました」と松浦氏は振り返る。

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    講演資料:「福岡を支えるメディア企業が挑むDX」より

同社ではもともと、AWSのBIツールQuickSightを活用していたが、AWSのデータソースを扱うにはITスキルが求められ、また新たなデータの可視化には都度開発が必要といった課題があった。様々なツールを検討した結果、ワンプラットフォームでの利用が可能で、異なるデータソースでも簡単に取り込むことができ、且つITスキルが無くても利用できるといった点から2022年11月よりDomoを導入することになった。また、Domoの営業担当者の熱意も導入を決めたポイントの1つだったという。「こういうことはできますか?」と聞くと、他のツールの担当者は「できます」と伝えてくるが、Domoの担当者は「なぜそれが必要なのか、その先に何を求めているのか」を尋ねてくる。「課題を浮き彫りにしながら先を見据えた提案に信頼を感じた」と松浦氏は話す。

導入後、Domoで可視化したデータの一つが「視聴データ」である。視聴データは、FBSが独自に取得するネットに接続されたテレビの視聴数だ。「番組視聴を視聴率以外の数値で表現できるようになったことでネット配信やSNSデータと比較しやすくなったし、誰がどれくらいの時間視聴したのかといったデータから、特定の人に深く刺さったのか、広く浅く多くの人にリーチしたのかがわかるようになりました。エンゲージメント、フリークエンシー、リーチなどをDomoで可視化して営業支援につなげています」(白木氏)

データ活用は視聴データに限らない。番組ごとにSNSのアカウントを運用しているが、ADなどの立場の人が撮影後や仕事の合間に投稿するケースが多く、投稿のモチベーションはそう高くなかった。しかし、Domoで投稿への反響などをダッシュボード化することで、担当者の努力が可視化され、モチベーションアップにもつながっているという。「定点観測をする中で変化に気づき、頑張っている人を見つけ、その成果を可視化し、それがその人の評価に結びつく環境をつくりたい」と白木氏は話す。同様に、ネットに掲載したニュース記事の閲覧状況をレポート化することで記者の意識が変わったり、高校サッカー選手権のネット動画配信状況をレポート化することで、その後の新たな展開にもつながっている。

他にも、これまで活用できていなかったデータを番組制作に活かすケースもある。例えば、テレビリモコンのdボタンによる視聴者参加型の企画だ。参加者数などの数値をDomoに取り込み分析し、その後の番組演出に活かしている。

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    講演資料:「福岡を支えるメディア企業が挑むDX」より

福岡県という地域特性でいえば、地域創生、インバウンド対応、災害報道などローカル放送局として力を入れるべきカテゴリーがあり、これらにもデータが果たす役割は大きいと白木氏は話す。自社内のデータに限らず、自治体や企業が提供するデータも取り込んで、それらを掛け合わせることで様々な活用が可能になると期待している。例えば、観光客が特定の箇所に集中しているようであれば、その周辺の情報を発信したり回遊施策を実施したりすることで、人流を他の場所に動かすことができるかもしれない。そしてさらにそのデータを取得し分析することでオーバーツーリズムという地域課題を解決できる可能性がある。

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今後はより活用を広げていくために、Domoのライセンス数を拡大し、全社利用を目指したいと松浦氏は語る。番組ごとのダッシュボードを用意しているので、全社で利用できるようになれば、レポート作成や会議でのデータ確認の時間が削減され、よりクリエイティブな時間に当てられるようになるという期待がある。

白木氏はDomo導入前は上司や会議のためのレポート作成に膨大な時間を費やしており、その分、視聴者が二の次になっていたと振り返る。今はDomoがあるので、レポート作成が簡単になり、会議で過去のデータを求められてもすぐに対応できる。2年前の自分には「時間の無駄遣いをしているな、今はタイパの時代だぞ」と伝えたいと話し、会場の笑いをさそった。最後に松浦氏は、「FBSは番組にとどまらず、様々なチャレンジをしてエリアの発展に寄与していきたいと考えています。なにか一緒にできることがありましたらお声がけ下さい」と締めくくった。

※本レポートは2024年7月4日(木)時点の情報を元に作成しております。