旭化成グループの主要事業となる繊維事業は、日本のみならずアジア・ヨーロッパへビジネスを展開しています。
2014年、繊維事業部はイタリア現地法人であるAsahi Kasei Fibers Italia s.r.l.とドイツ現地法人との合併を10カ月後に控えており、業務システムの見直しを迫られていました。
しかも当時のイタリア法人では、現地のパッケージシステムを利用していたものの、売上・請求・入金管理以外の大部分の業務は手作業で行われていたといいます。

人工皮革「ラムース ®」
つまり合併に伴う業務量の増加と、手作業による内部統制面での課題という2つの側面から改善を求められていたわけですが、同社は実質4カ月という短期間で、業務システムの導入を実現。
合併までの期間が短い中、どのようにしてこの課題を乗り越えたのでしょうか。
高度な技術力と新たな発想で次世代を切り開く製品を開発し未来のくらしをリードする、繊維事業のグローバル企業

キュプラ繊維「ベンベルグ ®」
旭化成グループの主要事業の一つである繊維事業において、その中心的なポジションを担う繊維事業部は、日本だけでなく、アジア・ヨーロッパへビジネスを展開しています。 90年に及ぶ原糸、原綿、生地作りといった経験で培った、独自技術、差別性のあるユニークな繊維素材をグローバルに提供しています。
グローバルに展開する弾性繊維スパンデックス「ロイカ」、世界唯一のキュプラ繊維「ベンベルグ」、多様な原料をベースに展開する「旭化成スパンボンド」などの不織布群、車両資材がメインのナイロン66「レオナ」の4つの事業をベースに、
未来を拓く新たな技術、商材の開発にも力を注いでいます。
欧州拠点の合併に伴い、システムの刷新が急務
イタリア現地法人であるAsahi Kasei Fibers Italia s.r.l.と、ドイツ現地法人との合併を10ヶ月後に控えていた同社は、業務システムの見直しが急務でした。システム導入プロジェクトのリーダーを務めた、旭化成株式会社 繊維事業部 企画管理部 業務推進室 室長 深沢 修氏は、「2014年10月の合併まで、とにかく時間がない状況でした。また、当時のイタリア法人では現地のパッケージシステムを導入してはいたものの、売上・請求・入金を管理する程度で、多くの部分が手作業によって賄われていました。合併に伴う業務量の増加と、手作業による内部統制面での課題という2つの側面から、業務システムの見直しが迫られていました。」と当時を振り返ります。
旭化成グループ内での豊富な実績と、短期導入が可能な点を評価
システムの選定においては、旭化成グループ内で導入実績のある3製品を比較しました。その中から、短期間導入が可能で、且つ低コストである点、また、旭化成グループ内で多くの導入実績があり、高い成果を上げている点が評価され、Microsoft Dynamics NAVが選ばれました。さらに、旭化成グループにおいてDynamics NAVの導入を手がけてきたPBCが、本プロジェクトにおいてもグローバルベンダーとして採用されました。
「システムやベンダーの選定はスムーズに進みました。何よりもグループ内で豊富な導入実績があることと、スピード感・規模感がフィットする製品、ベンダーとして、旭化成グループ内での合意もスムーズでした。」(深沢氏)
実質4ヶ月でのスピード構築

旭化成株式会社 繊維事業部 企画管理部 (左から)加藤様、石川様、深沢様、長尾様
次に着手したのがローカルベンダーの選定です。イタリアの現地ベンダーを選定するにあたり、PBCが推薦した3社を実際に訪問し、詳細な比較を行い決定しました。
「プロジェクトのキックオフを行ったのが4月中旬。イタリアでは8月に1ヶ月間の夏休みがあり、その期間は現地での作業や打ち合わせは行えません。実質的に約4ヶ月という短期間でシステムを稼働させる必要がありました。」(旭化成株式会社 繊維事業部 企画管理部 経営管理室 室長 石川 英治氏)
限られた時間の中でスタートしたプロジェクトですが、特に苦労したのはマスタや分析コードの設計でした。「今回のシステム導入には『見える化』という狙いもありました。具体的には、素材別での損益計算書にJet Reportsを使用し、自動で出力させるということです。このためにどのような分析コード体系を設計すべきかについて、PBCさんと何度も協議を繰り返しました。また、正しい数字を集計するためには、現地のユーザーに正しく情報を入力してもらう必要があります。そのためのオペレーションを徹底してもらうことも苦労した点の一つです。そのため、必要に応じて現地に赴き、システムの導入をサポートしました。」(旭化成株式会社 繊維事業部 経営管理室 ベンベルググループ 加藤 拓也氏)
業務量倍増も人員数はそのままで、ERP導入により効率化を実現
2014年10月に本稼働を迎えたものの、合併に伴う業務量増加に対応するため、2014年11月よりすぐに2次開発に着手しました。2次開発の主な目的は、本社連結パッケージであるDIVAとのデータ連携、委託販売手数料の自動計算や支払条件毎の与信管理表の自動作成、個々の業務内容に最適化されたメニュー画面の設計など、Dynamics NAVのレポーティングツールとして開発されたBIソリューション、Jet Reportsを利用し、日々の業務を自動化することでした。結果として、合併に伴い倍増した業務量に対し、既存のスタッフのみで対応できるしくみを構築することができました。
「これまで手作業で行っていた業務のほどんどをシステム化したことにより、合併に伴う業務量の増加を、これまでと同じ人員で乗り切ることができています。また、業務が標準化されたことによる内部統制レベルの向上も、非常に大きなポイントです。おかげさまで親会社の内部監査組織からもお褒めの言葉をいただくことができました。」(石川氏)

Asahi Kasei Fibers Italia s.r.l プロジェクトメンバーの皆様
エンドユーザーであるイタリア現地法人と、それをサポートする日本本社メンバー、PBCコンサルタント、そしてイタリアの現地ベンダーの4社が連携することで、短期間での本番稼動、またそれに続く2次開発まで、遅延なく終えることができました。
「まずは最低限の機能で本番稼動させ、ユーザーが製品に慣れた状態で2次開発を手がけたことが良かったと思います。」(深沢氏)
「タイトなスケジュールでしたが、強いチームワークと、各々が強い責任感を持って臨んだことで、無事にやり遂げることができました。ステップ毎に状況をチームで共有することで、プロジェクトの進捗と現状を常に把握し、理解しながら進めることができました。」(旭化成株式会社 繊維事業部 企画管理部 経営管理室 ベンベルググループ グループ長 長尾 博彦氏)
「イタリアの外注先の会計事務所含め、ローカルスタッフが、時間外業務を厭わず、かなり頑張ってくれました。またPBCさんには、UATやトレーニングと同時進行でFine Tuneに対応するなど、効率的にサポートしていただきました。」(加藤氏)
データ連携を強化し、リアルタイムでの情報共有を狙っていく
わずか4か月間でのスピード導入にも関わらず、業務の大幅な効率化と内部統制の向上を実現した同社は、今後の展望として、Office365連携とデータの有効活用というテーマを掲げています。
「グループ全体の経営管理を行うためのグローバルDBへの分析用データ受渡しや、グループ内取引の自動化など、Dynamics NAVが持っている経営データを活かすことで自動化できる処理や、見えてくる情報はまだまだ多くあります。PBCさんのサポートを受けながら、これらを実現していきたいと考えています。」(深沢氏)
関係者からのコメント
Asahi Kasei Fibers Italia s.r.l .President 中嶋 康善氏
「Dynamics NAVの導入により、今まで手作業でやっていた作業のほどんどを自動化させることができました。Jet Reportsが自動でDynamics NAVからデータを抽出、分析してくれるため、本当に便利です。まだ使い始めたばかりですが、これからもっと勉強し、使いこなしながら、更なる業務改善を図りたいと考えています。」イタリア現地ベンダー担当コンサルタント
「本プロジェクトに現地ベンダーとして参画できたことを嬉しく思います。旭化成繊維の皆様はとても親しみやすく、また全力でプロジェクトに取り組んでくださいました。またPBCは、グローバルプロジェクトに長けている優れたパートナーだと思います。グローバルな視点で取り組むことが求められたプロジェクトで、とても良い経験になりました。関係者全員がベストを尽くし、距離や時差を感じさせない程、スピーディで正確なコミュニケーションをとっていたことが印象的でした。」株式会社パシフィックビジネスコンサルティング
「日本本社による応援が今回の成功に大きく影響したと思います。重要なタイミングには、都度イタリアまで足を運んで現地のサポートをしていただきました。また、イタリア現地の皆さんも、昼夜を問わず積極的且つ精力的に取り組んでくださいました。さらに現地ベンダーも、最後まであきらめずに対応して頂いたことに感謝しています。2次開発の結果を受けて、ユーザーの皆さんがとても喜んでくださったことが何よりも嬉しく思います。単に問題点の修正というだけでなく、業務改善を実現できたことに達成感を得ることができました。」
■会社名
旭化成株式会社 繊維事業部
Asahi Kasei Corporation.
■創立 2003年10月
■資本金 30億円
■本社所在地 〒530-8205 大阪市北区中之島三丁目3番23号 中之島ダイビル
■URL www.asahi-kasei.co.jp/fibers/
■事業内容
ポリウレタン繊維「ロイカ ®」、不織布(スパンボンド「エルタス ®」、人工皮革「ラムース ®」、
キュプラ不織布「ベンリーゼ ®」など)、キュプラ繊維「ベンベルグ ®」、ナイロン66繊維「レオ ®」 の製造・販売。
■ソリューション
Microsoft Dynamics NAV 2013 R2
■導入モジュール
財務管理
固定資産
販売&売掛金管理
仕入&買掛金管理
在庫管理
イタリア商習慣対応アドオンソリューション
Jet Reports
■同時接続ユーザー 8ユーザー
■導入拠点 イタリア(ミラノ)
■導入言語 英語・イタリア語
(2015年6月現在)
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