コロナ禍を経て、生活環境の変化や情報の多様性、選択肢の増加により、顧客はより個別化されたサービスを求めるようになっている。この変化に対して、サービス提供側はどのようにアプローチすればよいのだろうか。そうした中で存在感を高めているのが、世界トップクラスの音声プラットフォームベンダーであるCiscoである。2023年9月15日にユニアデックスとシスコシステムズの共催で開催されたセミナーでは、顧客満足度の向上はもとより、オペレーターの人手不足にも備えたクラウドコンタクトセンターサービスの現在とその将来像が紹介された。

Ciscoが提供するAI充実のクラウドコンタクトセンターサービス

シスコシステムズ合同会社 コンタクトセンター営業部 部長 柳原 照憲 氏

シスコシステムズ合同会社
コンタクトセンター営業部
部長 柳原 照憲 氏

CX(カスタマーエクスペリエンス)というキーワードが注目されるようになって久しい。特にサブスクリプションを利用するユーザーが増加する昨今、どのような製品を提供するかだけでなく、顧客にどのような“体験”を提供できるかが自社サービスの生死を分けるといっても過言ではない。「Webexでおもてなしの向上を」と題した講演で、シスコシステムズの柳原照憲氏が「2回以上品質の悪い対応を受けただけで、59%もの人がその企業を見限っています」と指摘する。

そうした中、顧客に対してより良い体験を提供していくためのプラットフォームとして、重要な鍵を握るのがコンタクトセンターだ。Ciscoはコンタクトセンター製品のグローバル市場でトップシェア(2023年第1四半期)*を有するリーダー企業であり、3万6000社の360万人のエージェントが利用している。

*Q4 CY‘2022 Enterprise Voice / Contact Center Market Share/Synergy Research, March 2023

  • シスコのコンタクトセンター製品の実績

    出所:シスコシステムズ 柳原照憲氏 講演資料より

もっとも日本市場では、そんなCiscoといえどもこれまであまり存在感を発揮できていなかったのが実情だ。大規模向け製品はカスタマイズが必要で手間がかかり、一方で手軽なパッケージ版では対応できる規模が小さすぎるといった点が、国内企業のニーズに応えきれていなかった一因と考えられる。

だが、そんな状況は大きく変わりそうだ。「我々は生まれ変わります」と柳原氏は宣言する。そのきっかけとなったのは、小規模から超大規模まで対応可能なクラウドネイティブなコンタクトセンターサービス「Webex Contact Center」の展開である。「2022年11月に日本リージョンをローンチし、すでにお客さまの本番環境にて稼働済みです。現時点では最大5000席ですが、将来的に2万席まで対応を予定しています」と柳原氏は話す。

Webex Contact Centerの最大の特徴は、AIテクノロジーの導入である。コンタクトセンターを通じた顧客対応品質に大きな影響を及ぼす音声について、「例えば在宅エージェントが対応する際のまわりの生活音や、お客さまが屋外から電話をおかけになる際に近くを走る緊急車両のサイレンや鉄道の音など、周辺環境のノイズをAIによって除去し、やりとりする声だけをしっかり伝えることで、お客さまとエージェント双方のストレスを軽減します」と柳原氏は説明する。そして、「もともとネットワークを専門としてきたCiscoならではの、通信のゆらぎやパケット遅延、パケットロスなどの指標を利用し、品質の悪いコールを自動的に分析する音声品質測定ツールも無償で提供しています」と強調する。

  • ノイズ除去機能とトラブルシューティング

    出所:シスコシステムズ 柳原照憲氏 講演資料より

さらにWebex Contact Centerは、同ブランドでWeb会議機能を提供するWebex Meetingsやビデオ会議専用デバイス Cisco Devicesと組み合わせることで、需要を高めているビデオコンタクトセンターの機能をワンストップで提供できることも、大きな特徴のひとつだ。ビデオコンタクトセンターはお客さまと表情の見えるやりとりを実現してより良い印象を与えるほか、耳の不自由なお客さまに対して手話対応を行うなど、平等なアクセシビリティを提供していく観点からも、昨今需要を高めている。

コールセンターからクラウドコンタクトセンターへの転換

ユニアデックス株式会社 マーケティング本部 戦略企画推進部 プロモーション推進室 室長 木村 修 氏

ユニアデックス株式会社
マーケティング本部
戦略企画推進部
プロモーション推進室
室長 木村 修 氏

Ciscoによるクラウドコンタクトセンターサービスの紹介を受け、「今までのコールセンター これからはクラウドコンタクトセンター」と題したユニアデックスのセッションでは、社内で行っている大きく2つのお客さま向けの電話関連業務に関する課題と解決策を紹介した。

1つはアウトバウンドで、セミナーやイベントのフォローアップ、新規ソリューションのご紹介、市場調査などテレマーケティング施策を担うもの。もう1つはインバウンドで、機器/システムのトラブル連絡や障害対応のご依頼、お問い合わせなど、いわゆる保守サポートコールセンターに該当するものだ。 ところがこの2つの業務は、異なる仕組みが連携することなく稼働しているのが現状だ。ユニアデックスの木村修氏は、「結果として大量の手動入力が発生するなど、オペレーターにも重い負担を強いています」と説明する。

そこでユニアデックスが目指すのは、従来型のコールセンターから、お客さまとのコミュニケーションの起点となる“コンタクトセンター”への転換だ。「データの自動入力と高度な分析によりオペレーターを全員で支えます。また人手頼み、KKD(経験・勘・度胸)頼みの状態から脱却し、豊富な外部機能とのスムーズな連携を図ることが重要です」と木村氏は語る。そうした中で注目しているのがCiscoのWebex Contact Centerで、「クラウド化による外部連携の強化で、これらの課題解決に貢献するものと確信しています」と話す。

ユニアデックスは、日本におけるユニファイドコミュニケーションの創成期からWebへの移行に向けCiscoと協業を続けてきた。国内屈指のエンジニア数とナレッジを蓄積しており、さまざまなアワードを受賞してきたことにも言及し、「多くの音声ノウハウを持ち、AI領域にも着手しているユニアデックスの強みを生かし、これからのコンタクトセンターの確立に貢献していきます」と木村氏は訴えた。

  • 本当はこうあってほしいコンタクトセンター

    出所:ユニアデックス 木村修氏 講演資料より

Ciscoとユニアデックスが語り合うコンタクトセンターの未来

ユニアデックス株式会社 マーケティング本部 戦略企画推進部 プロモーション推進室 高橋 優亮 氏

ユニアデックス株式会社
マーケティング本部
戦略企画推進部
プロモーション推進室
高橋 優亮 氏

多くの企業のビジネスで欠かせないコンタクトセンターだが、ERP(Enterprise Resources Planning)やCRM(Customer Relationship Management)などのシステムと比べると“裏方感”を感じる人も多いようだ。「Cisco × ユニアデックストークセッション」のファシリテーターを務めたユニアデックスの高橋優亮氏は、パネリストに「コンタクトセンターの投資価値はどれくらいあるでしょうか」と問いかけた。

「お客さまとの最初の接点を持つ基盤という意味で、コンタクトセンターは非常に重要な位置づけにあり、投資価値は高いと考えます」と答えたのが、ユニアデックスの木村氏である。

ユニアデックス株式会社 マーケティング本部 ビジネス企画開発部 第一企画開発室 清水 規 氏

ユニアデックス株式会社
マーケティング本部
ビジネス企画開発部
第一企画開発室
清水 規 氏

ユニアデックスの清水規氏もマーケティングの観点から木村氏の意見に賛同し、「コンタクトセンターは顧客満足度の向上に寄与することもさることながら、お客さまの声を直接聞くことができる貴重なチャネルとして、社内的にも重要度を高めています」と語る。

さらにシスコシステムズの柳原氏は、コンタクトセンター投資の即効性に言及。「例えば製造業が自社製品の機能や性能、あるいは品質をいきなり数倍に高めるのは極めて困難です。ところがCXはそれが可能なのです。コンタクトセンターの対応を刷新することで、その日を境にお客さまが自社に対して抱く印象をガラリと変えることができます。それは確実にビジネスにつながっていき、コンタクトセンターにはまさに“金脈”が眠っているのです」と訴える。

そんなコンタクトセンターの将来を展望すべく、高橋氏は「コンタクトセンターは今後どんな変化が必要ですか」と問いかけた。

これに対して柳原氏は、「セルフサービスの拡大」と主に優良顧客を対象とした「手厚い有人サービス」の二極化を予想するが、いずれにしても課題となるのがコンタクトセンターの慢性的な人手不足であり、「AIの力を効果的に活用することが、今後のコンタクトセンターのあるべき姿ではないかと考えています」と語る。 ユニアデックスでは、柳原氏が提示したサービスの二極化の流れを、顧客対応を自動化できる「簡単なニーズ」と、オペレーターの専門性が求められる「複雑なニーズ」の多様化として捉えている。

清水氏は「特に自動化に関してAIをはじめとする他サービスとの機能連携が非常に重要になるとともに、環境変化に対してシステムの柔軟なアップデートを行えるクラウドが必須となります。コミュニケーション領域だけではなく、ネットワークやセキュリティまで含めたそのソリューションをトータルで保有していることが、私たちから見たCiscoの強みです」と語る。

これを受けて高橋氏も「コンタクトセンターの新たなニーズにフルクラウドで対応していくためにも、Ciscoに対する期待がますます高まっています」とし、本トークセッションの登壇者一同は、今後に向けてCiscoとユニアデックスのパートナーシップをさらに強化していくという意向と決意を表明した。

[PR]提供:ユニアデックス