DXの重要性が叫ばれる一方、従来のシステムや技術への依存により、変革の取り組みが進まないという企業も多い。データプロテクション、特にバックアップの領域においても同様だ。

8月27日に開催されたビジネスフォーラム事務局×TECH+フォーラム「DX Day 2021 Aug. DXの要は経営者の視座」において、ヴィーム・ソフトウェア(ヴィーム) システムズエンジニアリング本部 本部長 吉田慎次氏は、これからあるべきデータ保護の方向性と注意すべきポイントについて解説。また、バックアップ対象が1000台を超える環境への対応やバックアップ時間短縮に成功したVeeamの導入事例についても紹介した。

  • ヴィーム・ソフトウェア システムズエンジニアリング本部 本部長 吉田慎次氏

デジタル変革のなかでもバックアップは従来の方法のまま

吉田氏はまず、データプロテクションに関する市場動向について紹介した。

2021年にヴィームが企業に対して実施したアンケート調査では、バックアップソリューションを変更する理由として「バックアップの信頼性改善」「ROIやTCOの改善」という回答がトップとなった。これらの回答は毎回上位にランクインするというが、着目すべきは、「オンプレミスのデータ保護からクラウドベースのデータ保護サービスへ移行するため」という回答が新たにランクインしていることだ。

  • 2021年にバックアップソリューションを変更する理由(出典:Veeam 2021 Data Protection Research)

また「組織においてデジタル変革の取り組みの推進を妨げている、あるいは妨げていたものは何か」という質問に対しては、「運用の維持に注力しすぎた」「従来のシステムや技術への依存」という回答が上位にランクインし、従来のやり方を変えられないという状況がデジタル変革が進行していかない大きな要因になっていることが伺える。

「従来のやり方を変えられない状況はバックアップの世界でも同じ。システムをレプリケーションしてデータを2つ持っているが、『昔からやっているから』という理由で両側でバックアップをしているケースもある。新しいハードウェアに移行したとしても、バックアップは従来のやり方をそのまま続ければよいという発想で技術的革新に取り組んでいないという問題がある」(吉田氏)

モダンデータプロテクションに重要な8つのポイント

これを踏まえて吉田氏は、モダンデータプロテクションにおいてポイントとなる8つの考え方を解説した。それぞれ順に見ていこう。

1. 包括的なプラットフォーム

近年では、さまざまなワークロードがさまざまなプラットフォームで動いている状況にある。そのため、それらを広範にカバーできる製品を選ぶことが重要となる。

2. クラウド導入を加速

オンプレミスでは、ハードウェア・ソフトウェアの調達にどうしても時間が掛かってしまう。そのため、DXを進めるにあたって迅速性を高めるためにパブリッククラウドの利用を検討している企業は多い。ただし、データプロテクションの観点から考えると、パブリッククラウドベンダーに対応した製品を選ぶ必要があることに注意が必要だ。

3. ランサムウェア対策とセキュリティ

バックアップの考え方として「データは3つのコピーを保持」、「2種類の異なるメディアでバックアップを保存」、「バックアップの1つはオフサイトに保管」という「3-2-1ルール」がよく知られている。

しかしながら、昨今のランサムウェアの流行を考慮すると、ヴィームとしては、「バックアップの1つをオフラインで物理的に隔離するか、もしくは書き換え不能で保存する」という対策を推奨。さらに、「バックアップの自動テストを行いリストアのエラーを0にしておく」という「3-2-1-1-0ルール」を新たに提案する。

現在ヴィームでは米国国立標準技術研究所(NIST)との連携を深め、保護と検知の強化に努めている。さらに、インスタントリカバリ、インスタントフェイルオーバ、細やかなリストア、セキュアリストアなどの機能など、復元方法の多様性も保っているとしている。

4. Kubernetes

海外企業ではKubanetesの導入が進んでおり、日本でも本格普及に入ったといわれている。データプロテクションという視点では、Kubanetesに対応可能な製品選びが重要になっていくだろう。

5. データポータビリティとクラウドモビリティ

オンプレミスからクラウドまで、さまざまなプラットフォームでのデータ利用の可能性が高まるなか、バックアップデータはポータビリティおよびモビリティの高い状態にしておくことが重要となる。特定の環境に制限されないポータブルなデータ形式であれば、特定のバックアップサーバーを使用しなくても、ログイン情報を使用して迅速にデータをリストアすることができる。

6. ソフトウェア定義と拡張性

ストレージコンピューティング、ネットワークなどのハードウェアは年々進化し、値段が下がっていく。ハードウェアに依存してしまうと数年前のアーキテクチャのまま、そのうえにソフトウェアが載ってしまう状態もあり得る。一方、ソフトウェアデファインドの製品であれば、常に最新の良いものを安く手に入れ、パフォーマンスよく使うことができる。また、既存の未使用リソースがある場合、ソフトウェアデファインド製品であれば使い回すことも可能。クラウド上での利用もできる。

7. データの再利用とデジタル変革

バックアップデータの利活用という考え方は従来あまりなかったが、DXを進める際には重要なポイントとなる。Veeamでは、インスタントリカバリの機能強化を進めており、SSDなしで複数のマシンを同時に復元できる機能を実現している。

8. 使いやすさの追求、複雑さの軽減(ユニバーサルライセンス)

いくら高機能なものでも、使いこなせなければ宝の持ち腐れとなってしまう。シンプルさや使いやすさも、バックアップ製品選びの重要なポイントの1つとなる。意外と見落としがちなのがライセンス体系だ。物理、仮想、クラウドそれぞれに対して料金が発生する製品もあるなか、Veeamではバックアップ対象の数または容量で課金するユニバーサルライセンスを採用。物理、仮想、クラウドでライセンスを使い回すことが可能となっている。

業種、業界問わずさまざまな用途で活用

続いて吉田氏は、Veeamの最新活用事例を紹介した。業種、業界問わずさまざまな用途で活用されているという。

ユミルリンクでは、かつてvSphere Data Protection(VDP)を用いてバックアップを取得していたが、仮想サーバが1000台を超える頃にはバックアップ時間が大幅に増えてしまい、実運用に耐える状態ではなかったという。さらに、2017年4月にVDPの提供終了がアナウンスされたことで代替手段を考える必要があった。そこで、Veeamへの刷新を決定。導入後、バックアップ時間は従来の約5%、フルリストアの処理時間も約15%まで削減することができたという。

FRONTEOでは、1500-1600台の仮想マシン、1ペタバイトのデータ保護にVeeamを採用している。Veaam導入以前はストレージ製品の機能を用いてバックアップ対応をしていたため環境ごとに設定が必要で、ストレージ専任エンジニアを割り当てるなど管理に手間が掛かっていたという。バックアップ自体に多大な時間が掛かっていることも課題であった。そこで、既存ストレージとVeeamを連携することで、バックアップ処理時間を大幅に短縮。ストレージ専任エンジニアはバックアップ業務から解放され、より戦略的な業務に携わることが可能となった。

日本中央競馬会では、業務システムのバックアップに複数製品を用いており、運用管理の煩雑化が課題となっていた。ミッションクリティカルなシステムに対するデータ保護ツールとしてVeeamを全面採用したことで、バックアップ処理時間が大幅に短縮されたうえ、信頼性向上と運用負荷軽減に成功。バックアップツールを集約したことで、調達費用を約1/3に削減することもできたという。

中央大学では、Office365のメールバックアップにVeeamを利用。学内の仮想基盤とOffice365のデータマネジメント環境を一元化することに成功している。

大手保険会社では、Azureへのシステム全面移行が決まっていたが、今後AWSを利用する可能性も高く、マルチクラウド対応が必須だった。そこで、Veaamを採用し、ベンダーロックインの回避、およびオンプレミスのコスト高を解消することになった。

今回で紹介した事例については、ヴィームのWebサイトでも確認できる。また、最新のデータ保護についてはホワイトペーパーを提供している。興味があればこれらも併せてご覧いただきたい。

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