一般向けの公衆PHSサービスが、まもなく終了を迎える。自営PHSはこの影響を直接受けるわけではないが、PHSという仕組みが下火となっていくことは疑いようもないだろう。とくにPHSを構内通話の手段として利用している例の多い病院では、次世代を見据えた代替手段を考えねばならなくなる。そんな状況の中、今注目されているのが「sXGP」というプライベートLTE規格だ。
ビジネス向けスマートフォン「arrows BZ」シリーズを展開する富士通コネクテッドテクノロジーズは、新製品「arrows BZ01」を展開し、いち早くsXGPの普及に取り組んでいる。arrows BZ01には、どのようなメリットがあるのか、病院を例にひもといていこう。
プライベートLTE規格「sXGP」とは
sXGPは、電波法における免許を取得していなくても設営できる、1.9GHz帯の周波数を使った自営通信(プライベートLTE)向けの規格。日本ではデジタルコードレス電話で使用されている1.9GHz帯が、中国の携帯電話会社「チャイナ・モバイル」などのLTEサービスで使用している「バンド39」に含まれていることに着目。仕様を共通化することで、既存のバンド39対応端末を子機として利用できるプライベートLTEシステムとして整備されたものだ。
そのLTE方式の特性から、構内PHSや、Wi-Fiを使ったVoIPシステムの代替として注目されており、病院や工場などの安定性が求められるネットワークを必要とする環境での活用が期待されている。
病院のPHSを代替するsXGPによる内線通話システム
多くの病院では、構内通話の手段としてPHSが利用されてきた。これは携帯電話がまだ2Gのころ、電波の出力が高く医療機器への影響が懸念されたためだ。電波の出力が弱まった3Gや4G LTEでは影響が軽減され、現在では携帯電話やスマートフォンも利用可能となっている。
PHSを代替する手段としては、1つにWi-Fiを使ったVoIP環境が考えられるが、2.4GHz帯は多くの電子機器が使用しており、すでに病院内で利用されているPCや医療機器との干渉が懸念される。一方5GHz帯はWi-Fi専用であるため干渉は少ないが、遮蔽物の影響が大きく安定した通信が行いにくい。セキュリティ面では一般的なWi-Fi同様に不正アクセスなどのリスクを抱えている。
そこでPHSの代替として注目されているのが、プライベートLTEであるsXGPだ。sXGPに割り当てられている1.9GHz帯は、日本ではPHSやデジタルコードレス電話でのみ使われ、公衆LTEサービスでは使われていないため、高度な技術により安定した通信が可能なLTE通信方式を自営通信として利用することができる。加えてLTE通信は、SIM認証システムを採用していることで強固なセキュリティを備えている。もちろん、音声の品質は非常に高く、クリアな通話が行える。
そして、Wi-Fiと比べて電波の受信エリアが非常に広い。障害物の多い病院内、広い敷地内では、Wi-Fiはアクセスポイントを次々に切り替えていかなければならず、安定した通信が難しい。しかしsXGPであれば1つの基地局のエリアが広いためアクセスポイントの切り替え頻度が減り、安定した通信が期待できる。
1.9GHz帯で繋がるIoT機器も開発が進んでおり、sXGPがこれからさらに発展していく規格であることは間違いないだろう。
arrows BZ01が実現する医療現場の働き方改革
富士通コネクテッドテクノロジーズがsXGP対応の端末として提供しているのが、Android™スマートフォンarrows BZ01だ。PHSは通話が基本的な使い方となっていたが、これをスマートフォンに置き替えることでより汎用性の高い使い方が可能となる。
代表的な例が、電子カルテとの連携やナースコールとの連携の強化だ。PHSでは内線やナースコール通知での利用が一般的で、利用用途はあくまで通話がメインだった。しかしスマートフォンなら、ナースコールの呼び出し時に電子カルテに登録されている患者情報やベッド周りのカメラ映像を表示することも可能。さらに電子カルテや勤怠管理システム、音声会議システムとの連携、院内のカメラやスピーカー、電子錠の操作なども行える。さまざまな業務をスマートフォンに置き換えることで、電子カルテ用のノートPCを持ち運ぶ必要がなくなり、業務の負荷軽減につながる。
このように、電子カルテシステムを始めとして、さまざまな医療用ソリューションと連携できるため、高い拡張性が期待できるだろう。加えて、スマートフォン本体のカスタマイズ(キッティング)も富士通コネクテッドテクノロジーズが行うので、プリインストールアプリの削除や追加にも対応可能。カスタマイズした内容は本体のメモリに書き込んだ状態で導入できるため、初期化してもカスタマイズ内容は消えず、また簡易的なMDM機能も備えている。
このようなICTの活用は医療従事者の働き方改革の一助となるだろう。
過酷な医療環境に耐える堅牢性・継続性
医療現場で求められる耐性を備えている点も、arrows BZ01の大きな特徴といえる。
1つ目は、耐薬品性能。医療現場を想定し、次亜塩素酸ナトリウム1%、イソプロピルアルコール99.7%、エタノール99.5%でのふき取り試験を検証しているほか、手袋をしたままでのタッチ操作に対応している。2つ目は、防水・防塵性能。IPX5/IPX8の防水、IP6Xの防塵に準拠し、泡タイプのハンドソープや液体食器用洗剤で洗浄可能。3つ目は、耐落下性能。1.5mの高さから26方向でコンクリートに落としても画面が割れにくい(*)。このような耐久性によりMIL規格23項目準拠を達成しているほか、医療現場でニーズの高い、強固なストラップホールも装備しているので、落下防止のためのショルダーストラップが利用可能。さまざまな物理的負荷が想定される病院内であっても、安全に利用できる。
端末を長期間にわたり継続的に使用したいという法人のニーズにも応える。OSのバージョンアップを行わずにセキュリティパッチのみ適用が可能なため、利用しているシステムの再評価が必要なく安定稼働が行える。そのため院内情シスの負担は低く抑えられるだろう。また、技術トラブルが発生した際に問題解決を助ける技術支援サービスが提供(無償)され、プリインストールされた診断サポートアプリから取得されるログを利用して、専門技術者がサポートしてくれる。
さらに、販売開始から2年以上、同一モデルを継続的に供給し、メーカー保証を通常1年から3年に有償で延長するサービスも提供。長期にわたり安定稼働が期待できる。この際、気になるのはバッテリーの劣化だ。リチウムイオンバッテリーは満充電や電池切れ状態で放置することで劣化が早くなることが知られているが、これを防ぐために充電量の上限を85%や50%に変更し劣化を抑える機能も備えている。
未来のICT環境を視野に入れたPHSのリプレースに
本稿では、PHSによる構内通話システムの代替としてsXGPを利用したスマートフォンarrows BZ01を紹介した。ただし、sXGPは構内PHSとまったく同じ周波数帯を使っているため、現在はまだ同時に利用できないという点は留意しておきたい。
既存のPHS環境と同居させ平行運用するのであれば、Wi-Fiを使ったVoIP環境も一つの選択肢だ。arrows BZ01はWi-Fiハンドオーバーに対応しており、富士通コネクテッドテクノロジーズは細かなチューニングにも応じられるため、病院のような壁などの障害物が多い場所でも、ある程度通信が途切れにくい環境を比較的安価に構築できる。
だが前述したとおり、sXGPは非常に受信エリアが広く、安定した通信とクリアな通話、そしてセキュアな環境を実現できる。しかもWi-Fiと共存させることができるため安全な運用が可能で、管理もしやすい。構内PHSの全面リプレースという大きな刷新を行うのであれば、その将来性も含め、ぜひarrows BZ01を検討してみてほしい。
*無故障、無破損を保証するものではありません。
[PR]提供:富士通コネクテッドテクノロジーズ