2017年3月28日、政府が「働き方改革実行計画」を決定して以降、企業は事業規模に関わらず、「働き方」を巡って様々な施策と、急速なデジタル社会への適合も積極果敢に取り入れ展開してきた。その中で近年、働き方改革実現の手段として、RPAを活用した社内プロセスの自動化が注目されている。

本記事では、2019年6月27日に開催されたマイナビニュースフォーラム「働き方×生産性向上の両輪経営を目指して」にて公開された、RPAによる自動化で約4万時間もの業務時間創出に成功したサントリーグループの事例を紹介する。

RPAは働き方改革の新たな武器

サントリービジネスシステム グループ情報システム部 細川 大輔氏

サントリービジネスシステム グループ情報システム部 細川 大輔氏

ウイスキーやビール・清涼飲料・健康食品の製造・販売等、多種多様な事業を展開しているサントリーグループ。同社では働き方改革を「競争戦略」の一環として捉えており、そのための様々な取り組みを実行している。

「サントリーでは、RPAは働き方改革のための新たな武器であると考えています」と語るのは、RPA導入プロジェクトを担当したサントリービジネスシステム グループ情報システム部 細川 大輔氏だ。

サントリーグループがRPAの導入が本格的に動き出したのは2017年2月。トライアルやテストを兼ねた一部部門への先行導入を経て、2018年より全社展開を開始。2019年には、すべての部門にて活用推進が開始されている。

スムーズな導入を実現するために、同社では人事部門とシステム部門とが連携する横断的組織「RPA全社推進プロジェクトチーム」を結成。RPAについての解説やRPAを先行導入している部門からの効果報告などを全社へ発信し、ナレッジを共有。RPAに対する理解度を高めていった。その結果、わずか1年でRPAの全社導入が実現した。

  • サントリー 働き方改革ナレッジサイト「変えてみなはれ」に掲載されたRPAの効果報告。出勤に余裕ができた、などポジティブな意見が目立つ。

    サントリー 働き方改革ナレッジサイト「変えてみなはれ」に掲載されたRPAの効果報告。
    出勤に余裕ができた、などポジティブな意見が目立つ。

ポイントはRPAに適した業務種類の選定

同社ではRPA化をする業務について一定のルールを設けている。例えば、PC上で完結しない業務(印刷した上での処理が必要な場合など)、人間の判断が入る業務、デザインが頻繁に変更される業務、承認業務のように権限が必要な業務などはRPA化に適さないものと判断している。

一方、RPAに任せる業務としては、「毎日15分(週次で1時間以上)かかる定例化された業務」「マニュアルが作成できる定型化された業務」などの条件が設けられている。これらの前提条件がある業務は、以下にある図1のような流れに沿ってRPA化され、その情報が同社の「働き方改革ナレッジサイト」にて共有されるようになっている。

  • サントリーグループにおける標準的なRPA化の流れ

    サントリーグループにおける標準的なRPA化の流れ

人はより高い付加価値を生み出す業務に集中する

講演の中で細川氏は、RPAの開発・運用をIT部門主体でRPAの導入を行うメリットとして「開発生産性」「運用安定性」「IT視点での業務分析」を挙げた。

●開発工程をRPAにあわせた手法に見直すことで「開発生産性」は向上し、新たな開発に集中する体制が生まれた。

●開発ナレッジ・コーディング作法を標準化・ドニュメント化して共有。標準策定による「開発生産性」と「運用安定性」が向上した。また、2018年7月より物理PCからVDI環境へと移行しており、本番移行時のサービス安定化や運用効率のアップ、そしてハード障害の対応力の向上も実現できた。

●ロボットのSLA(Service Level Agreement)を策定。開発受託前にRPA化に適した業務の絞り込みを行い、RPAのサービスレベルを事前合意することで「運用安定性」を向上した。

●IT部門が持つ最大の資産である「データ」を活用。例えば、業務システム利用回数を分析し、特に頻度が高い部門や人物をターゲティング。ヒアリングなどで要望などを吸い出し、より使いやすい内容にカスタマイズするなどした。

AIを組み合わせて更なる自動化を目指す

現在、サントリーグループでは約200体のロボットが60台の専用PC(VDI環境)上で稼働している。そして、グループ全体で2019年末までに約12万時間という時間削減を達成する見込みである。なお同社では、将来的にはAIとRPAを組み合わせたより高度な特化型AI(文字、音声、画像認識)を用いて、転記業務の自動化も検討していく。

「自動化を使いこなし、人はより高い付加価値を生み出す業務に集中する。それこそが、サントリーの目指す働き方改革の姿です」

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