どんな製品やサービスも、一度のリリースで "完結" することはありません。市場ニーズやビジネス モデルの移り変わり、あるいは法制度の改正に合わせて、常に変化していく必要があります。いかに優れたものであっても、旧態依然とした仕様のままでは、ユーザーからの支持を集め続けることは難しいでしょう。

NEC が提供する中堅中小企業向け ERP ソフトウェア "EXPLANNER" シリーズは、まさに継続して発展することで高いプレゼンスを堅持し続けているソリューションです。同社では 2017 年 9 月、旧来製品からアプリケーション構造を刷新した "EXPLANNER/Z" を新たに市場へ投入。DBMS を従来のものから SQL Server に移行することで、「同じシステムをできるだけ長く使いたい」という市場ニーズに応える高価値な製品を提供しています。

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    NEC

プロファイル

NECは、ICT を活用した「社会ソリューション事業」にフォーカスする総合電機メーカーです。クライアントの経営課題から世界的な社会課題まで、その事業領域は多岐にわたります。設立は 1899 年であり、社名には「日本を代表する電気会社になる」という想いが込められています。

導入の背景とねらい
基幹系システムをできるだけ長く使い続けたい。この顧客ニーズにどう応えるか

EXPLANNER シリーズは、販売、会計、人事、給与などの機能を持つ "EXPLANNER/Ai" を核に、製造業に特化した "EXPLANNER/J" や自動車業界向けの "EXPLANNER/Ja"、ワーク フローを構築するための "EXPLANNER/FL" など、幅広いラインアップのもとで企業の基幹業務をトータルに支援する ERP ソリューションです。年商 500 億円未満の企業におけるワーク フロー市場において EXPLANNER/FL が 2015 年以降 3 年連続でトップ シェアを堅持 (ノークリサーチ調べ) するなど、同シリーズは市場から高い評価を得ています。

この EXPLANNER シリーズについて、提供元の NEC は 2017 年、大型アップデートを実施。EXPLANNER/Ai の後継製品である "EXPLANNER/Z" を提供開始しています。同製品は「ロング ライフ化」を主題に掲げ、10 年以上提供してきた旧来製品をアーキテクトから見直すかたちで開発が進められました。

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    EXPLANNER のシリーズ体系

かつての基幹系システムは、ハードウェアの更新に合わせて数年ごとに刷新されるような運用が一般的でした。しかし、現在は「同じシステムをできるだけ長く使いたい」というニーズが顕著に表れています。企業間の競争が激化する中、業務システムを長期使用することで総保有コスト (TCO) を最適化したいという考えが、あらゆる企業に共通した経営課題となっているのです。こうした動向について、NEC 産業ソリューション事業部 マネージャー 北村 幹也 氏は次のように話します。

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NEC 産業ソリューション事業部 マネージャー 北村 幹也 氏

「ERP に求められる要件は、マイ ナンバーの導入や消費税率引き上げといった法改正への対応、企業の合併や新事業の追加などに伴って常に変化していきます。そのため、導入当時は業務に沿っていた ERP なのに数年後にはさまざまな業務上で問題が生じてしまう、という事態が往々にして発生しま す。だからこそ、ハードウェアの更新に合わせて ERP を再構築するようなことが一般的に行われてきたのです。しかし、コストや業務移行に要する手間を考えた場合、リプレースはなるべく避けたいというのがお客様側の本音でしょう。市場で真に求められているのは、『スクラッチ開発に近いカスタマイズ性を持ち、廉価かつ迅速に開発、運用ができる ERP』だといえます」(北村 氏)。

北村 氏によれば、スクラッチで開発した ERP を利用し続けている中堅中小企業の数は、いまだに少なくないといいます。時代の変化にビジネスが追随していくうえでは、それだけ ERP に細やかな要件が求められるというわけです。しかし、スクラッチ開発の場合、定期開発に要するコストやリード タイムがネックであり、加えて管理業務が属人化する点も問題となります。IT 人材が不足する昨今、先の課題があるスクラッチ開発は、システムの所有自体が企業にとってリスクとなってしまうのです。

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NEC 産業ソリューション事業部 EXPLANNER部 マネージャー 門田 大昌 氏

「中堅中小企業にとって、今は ERP をスクラッチ開発からパッケージ ソフトに移行する過渡期になっているといえるでしょう。スクラッチ開発に近い柔軟性を持つ EXPLANNER/Z は、『パッケージ ソフトで基幹系システムのロング ライフ化を実現したい』というお客様のニーズをかなえるべく投入した製品です」と、北村 氏は大型アップデートの趣旨について説明します。これに続けて、NEC 産業ソリューション事業部 EXPLANNER部 マネージャー 門田 大昌 氏は、EXPLANNER/Z では近年要望が増えつつある「クラウド」や「データ分析」への対応も果たしていると語ります。

「中堅中小企業の人材不足は深刻です。IT 要員が不足する中、工数負荷を最適化しつつ安定稼働とセキュリティを担保するという観点から、オンプレミスではなく IaaS での構築を希望するお客様が増えています。また、ビッグ データが実用フェーズとなっている今日、ERP の役割も、従来の『業務効率化、標準化』から競争力を高めるための『データ活用』へとシフトしつつあります。容量や性能を自由に拡張できる IaaS は、このデータ活用との相性にも優れているといえるでしょう。EXPLANNER/Z では、IaaS に対応するとともに、レポーティングなどデータを有効活用する機能についても旧来製品から大幅に強化しています」(門田 氏)。

システム概要と導入の経緯
ロング ライフ化を実現すべく、DBMS を SQL Server へ切り替える

「ロング ライフ化」というユーザー ニーズを反映すべくアップデートが進められた EXPLANNNER/Z。既述のとおり、同製品は開発過程において、アーキテクチャの抜本的な見直しが図られています。中でも特に大きな変化が DBMS (database management system) の切り替えです。

旧来モデルの EXPLANNER/Ai では、他社製の DBMS を採用してきました。この DBMS は、ERP に強く求められる性能や安定性、信頼性については申し分がないものの、IaaS や仮想マシンで利用する場合には総コア数に係数を乗じた数のライセンスが必要になるなど、ライセンス体系が複雑だったといいます。そしてこの複雑性は、ロング ライフ化やクラウド対応を進めるうえでは大きな障壁だったと、門田 氏は語ります。

「お客様が ERP を長期運用する間には、事業や規模の変化に応じてインフラに手を入れることもあるでしょう。最初はオンプレミスで運用し、途中で IaaS に移行するというケースも十分に想定できます。しかし、旧来の DBMS では、インフラを刷新するたびにライセンス体系を確認し、またそれを調達しなければなりません。お客様が負担するコスト、工数負荷はどうしても大きくなり、結果としてアジリティ (IT の俊敏性) を奪うことにつながってしまいます。ソフトウェアとインフラの両側面で柔軟性を高めて『ロング ライフ化』に対応するには、DBMS の切り替えが必須といえました」(門田 氏)。

NEC では 2015 年より EXPLANNER/Z の開発プロジェクトを開始。この初期から DBMS の切り替えについても検討が進められ、約 1 年が経過した 2016 年夏、SQL Server へ DBMS を切り替えることに決定します。

北村 氏と門田 氏は、SQL Server の採用理由について、次のように語ります。

「SQL Server に注目したポイントとして、まずサポートやライセンス体系のシンプルさが挙げられます。さほど重要ではないように思われがちですが、長期間の利用を前提とし、なおかつその過程で次々とカスタマイズされていくようなシステムの場合、先のシンプルさは運用工数の軽減やコスト削減に直結するのです。特にオンプレミス、IaaS 問わず仮想マシン単位でライセンスが結べるという SQL Server のライセンス体系は、DBMS が IaaS 移行の障壁にならないという大きな優位性がありました」(北村 氏)。

「SQL Server は標準機能も魅力的なものを揃えています。たとえば信頼性の担保に不可欠な冗長構成を取る場合、ほかの DBMS では追加ライセンスを契約して冗長構成をとる必要があります。一方、SQL Server の場合は、Always-On 機能によって追加投資なしにこれが行えます。ほかにも標準機能の中で特に有用と感じたものとして、レポーティング ツールの SQL Server Reporting Services (SSRS) が挙げられます」(門田 氏)。

SSRS は SQL Server 上にあるデータを可視化、レポート化するツールです。ERP である EXPALNNER/Z は、その業務データを帳票として出力することを標準機能として求められます。門田 氏は「標準機能でこれが実装できることは、コスト減や利便性の向上を実現するうえで大きな優位性でした」と SSRS について高く評価。SQL Server のサービス機能である SSRS をベースにプロダクト開発を進めることで、ロング ライフ化を見据えた運用管理の容易さや高い経済性という顧客ニーズへも応えることができたと語ります。

「EXPLANNER/Z には、SSRS によるレポート作成を支援するツールを組み込んでおり、またマイクロソフトが提供する Power BI との連携も検討しています。NEC 側で Power BI のテンプレートを整備して公開することにより、お客様は特別な知識なしにレポートの作成と展開を行えます。大きな追加投資を必要とせずオプション機能で Power BI による分析テンプレートを利用可能なため、お客様がデータを活用するまでのハードルを大きく引き下げることができると考えています」(門田 氏)。

導入効果
マイクロソフトの ISV 向け支援プログラムを活用することで、短期ながらスムーズな開発を実現

NEC では、SQL Server への切り替えを決定した後、本格的な開発作業に着手します。約 1 年間の開発検証作業を経て、2017 年 9 月より EXPLANNER/Z の提供を開始しました。

同プロジェクトではシステムの柔軟性を高めるべく、DBMS の切り替えに加え、業務領域ごとに必要な機能をサービス化するなどアプリケーション構造の刷新も図られています。規模の大きな開発プロジェクトでしたが、マイクロソフトのサポートもあり作業はスムーズに進めることができたと北村 氏は語ります。

「マイクロソフトから開発技術者向けのトレーニングを提供いただいたこと、Web 上に技術シートが十分に用意されていたことを要因とし、大きな混乱なく開発を進めることができました。現場の開発者からは『最初は多少のトレーニングが必要だったが、結果としてパッチ適用や機能強化作業をより迅速化できる環境が構築できた』という意見が挙がっています。これはお客様側にとっても同様で、『慣れさえすれば運用性が大きく向上するシステム』が完成できたと考えています。旧来の DBMS で優れていた性能、信頼性なども、同水準を担保することができました。同水準で満足するのではなく、今後も SQL Server が備える性能監視機能『クエリ ストア』などを活用することで、パフォーマンスを高めていきたいですね」(北村 氏)。

マイクロソフトのサポートは、開発面に限らず、保守運用やセールス面においても大きく機能しています。マイクロソフトが ISV 向けに用意している支援プログラムでは、NEC グループおよび販売店に向けてオンライン トレーニングが提供されました。これによってサービス イン後のセールス、導入、保守運用のスキルを短期間に習得することができたのです。

門田 氏は「サービス インまでの開発フェーズだけでなく、サービスの拡販フェーズにおいてもマイクロソフトには強固にサポートいただいています」とこの点を評価。迅速に拡販を進めていくことで、中堅中小向け ERP のトップ シェアをねらっていきたいと続けます。

「現在、中堅中小企業向け ERP のシェアは上位の製品が常に変動しています。当社製品は 5 位前後を推移していますが、ERP はニーズの移り変わりも激しいため、まだまだ首位をねらうことができると考えています。EXPLANNER/Z は SQL Server をコア テクノロジーに採用したことで、お客様が長期間利用できる柔軟性を確保し、さらにデータ活用の機能も大幅に強化できました。これは間違いなく市場ニーズを適えたものだと確信しています。クラウドにも対応したことで、お客様が求める ERP を、お客様が希望するプラットフォームで利用いただくことができるようになりました。今後、マイクロソフトとも連携しながら、市場でもっとも評価される製品を目指していきます」(門田 氏)。

  • EXPLANNER/Z のシステム概念図版画像

    EXPLANNER/Z のシステム概念図。オンプレミス、IaaS のいずれにも対応し、IaaS は NEC が提供する「NEC cloud IaaS」に加えてマイクロソフトの Azure もサポートする

今後の展望
NEC が持つ総合力を活かし、ソリューションの価値を最大化していく

ERP の役割が「業務の効率化、標準化」から「データ活用」へとシフトしつつあることにも現れているように、いまや ERP は、単体で機能するものではなく、周辺システムとの連携を前提とするものとなっています。社内にある全システムの情報資産を活用してビジネスを伸張させることが、ERP の命題となっているのです。

それゆえに、これからの ERP に求められるのは、社内のあらゆるシステムとの連携を可能にする柔軟性だといえるでしょう。そしてこの視点でいえば、EXPLANNER/Z はまさに市場ニーズに即した進化を果たしたことになります。

北村 氏は、「今回のプロジェクトでは、クラウド対応と並行してマイクロソフトの Azure もサポート対応しました。Azure は Office 365 などマイクロソフトが提供する周辺システムとの親和性が高いです。当社の強みは、お客様の IT 環境をトータルで支援できるという総合力にありますが、今回のプロジェクトで ERP の柔軟性を高め、また周辺システムとの親和性も強化したことで、この総合力を最大限活かすことができると考えています」と、EXPLANNER/Z と NEC のソリューションに強い自信を覗かせます。この自信のとおり、同社では EXPLANNER/Z について、今後 5 年の間で旧来製品の倍の出荷数にまでビジネスを拡大することを見通しています。

絶えずユーザー ニーズを反映してきたことで、市場において高いプレゼンスを堅持している EXPLANNER シリーズ。同シリーズは今後、周辺システムとの連携を、そして NEC の総合力をもって、その価値をいっそう高めていくに違いありません。

  • 北村氏と門田氏の画像

「現在、中堅中小企業向け ERP のシェアは上位の製品が常に変動しています。当社製品は 5 位前後を推移していますが、ERP はニーズの移り変わりも激しいため、まだまだ首位をねらうことができると考えています。EXPLANNER/Z は SQL Server をコア テクノロジーに採用したことで、お客様が長期間利用できる柔軟性を確保し、さらにデータ活用の機能も大幅に強化できました。これは間違いなく市場ニーズを適えたものだと確信しています。クラウドにも対応したことで、お客様が求める ERP を、お客様が希望するプラットフォームで利用いただくことができるようになりました。今後、マイクロソフトとも連携しながら、市場でもっとも評価される製品を目指していきます」

NEC
産業ソリューション事業部 EXPLANNER部
マネージャー
門田 大昌 氏

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