ビットアイルは2014年3月、ハイブリッドクラウド利用事例紹介セミナー「ユーザー目線で考えればやっぱりハイブリッドクラウド!AWS×オンプレ×プライベートクラウドで見えてきた次世代クラウド活用法」を開催した。本稿では、同社が考えるハイブリッドクラウドの考え方を解説するとともに、当日紹介された具体的な運用事例やハイブリッドクラウドの活用方法について、3回に分けてお伝えする。
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適材適所でシステムを効率化。ハイブリッドクラウドのススメ
ITインフラとしてのクラウドコンピューティングは、自社の管理下で構築・運用されるプライベートクラウドと、サービス事業者が提供するサービスを共同利用するパブリッククラウドの2種類に大別される。
これまでは業務用途や性質に応じてどちらか一方が選択されるパターンが多かったが、ビジネスの複雑化・細分化・迅速化といった変化が進むなかで、プライベートクラウドが選択されるケースが多かった業務の根幹を支えるようなシステムについても、パブリッククラウドのような柔軟性が求められるケースが増えている。
そこで注目されているのが、「プライベート」と「パブリック」のメリットを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」という運用形態である。
ビットアイル マーケティング本部長 高倉敏行氏は当日のセッションにおいて、「"最適なシステム" の条件は、業務内容やタイミングによって異なります。ビジネスが複雑化する現代では、これに対する解は1つではありません。そこで、様々なシステムを組み合わせて最適な解を求めるハイブリッドクラウドが注目されているのです」と説明した。
一般的には、プライベートクラウドとパブリッククラウドの組み合わせがハイブリッドクラウドと考えられている。しかし高倉氏は、「今後は、クラウド化されていないオンプレミスのシステムも含め、あらゆるシステムを検討し、用途に応じて組み合わせていくこと」を推奨している。
独立系ならではの柔軟なクラウドインテグレーションを実現
ビットアイルは独立系のデータセンター運営事業者である。完全に中立な立場だからこそ上述のような考え方を具現化できるのである。「単一のベンダーやサービスに縛られることなく、必要であればAWS(Amazon Web Services)などの他社サービスと自社のデータセンターを柔軟に連携させる」(高倉氏)、それがビットアイルの考えるハイブリッドクラウドだ。
ビットアイルは、グループ傘下にクラウドインテグレーションなどを提供するアクセルビットや、システム監視・運用サービスを展開するサイトロックなど、役割に応じた強みを持つ企業を有している。
このような自社のリソースを生かしながら、顧客拠点やビットアイルのデータセンター、他社が提供するクラウドをセキュアかつ高速に接続し、システムの最適な配置とシームレスな連携を実現する。その成果物として「最適なハイブリッドクラウドを実現するためのサポートを行うクラウドインテグレーションの提供、それがビットアイルの目指すものです」(高倉氏)。
では、実際に同社がハイブリッドクラウドをどのようにして実現するのか? この点について、アクセルビット 取締役 長谷川彰博氏による、「マルチクラウド管理とOpenStackプライベートクラウド」についてのソリューションの解説が行われた。ここではその内容について簡単に紹介しよう。
ハイブリッドクラウドの操作を一元管理する「SCALR」
ハイブリッドクラウドを運用する際の課題として、それぞれのGUIが異なるため、管理操作がわかりにくくなるといったことが挙げられる。この課題を解決するものとして同社が提供するサービスが、マルチクラウド管理ツール「SCALR」である。米SCALR社から委託を受けたビットアイルが、2014年1月から同社国内データセンターを拠点とし、日本やアジア地域へのサービス提供を開始している。
「SCALR」では、GUIによる単一の管理画面から、複数の異なるクラウドサービスを操作することが可能となる。さらに注目すべき点としては、サーバの負荷状況に合わせて自動的にスケールイン・アウトを行うオートスケール機能がある。繁忙期にスケーリングなどの準備作業が不要になり、運用コストを最小限に抑えることが可能となる。
注目の「OpenStackベース」によるクラウド構築システム
さらに、新たなソリューションとして紹介されたものが、OpenStackベースのプライベートクラウドソリューション「Piston OpenStack」である。
OpenStackは、NASAと米国のデータセンター事業者であるRackspace Cloudが中心となって開発が進められているオープンソースのクラウド構築ソフトウェアで、近いうちにAWSをも凌駕する可能性があるものとして大きな注目を集めている。
今回のセミナーでは、OpenStackベースのプライベートクラウド環境を構築するシステムとして「Piston OpenStack」が紹介された。
ダウンタイムなしでのスケールイン・アウト、わずか数分で立ち上げ可能なスピード感など、その優れた特色について、活用事例を交えた解説が行われた。
なお、ビットアイルは2014年秋をメドに、東京文京区に新たな「第5データセンター」をオープン予定となっており、同社の「ハイブリッドクラウド」を支える新たな重要拠点となる見込みである。
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