グループネット 取締役 営業企画部長 有働 亮次氏

業務中に社員が必要な情報を見つけるために、実は多くの時間と手間が費やされている。さらに、存在していることがわかっている資料であっても、それを探す手間がかかることを嫌って、新たに資料を作成してしまう社員も少なくない。これらの時間と手間は、企業にとってコストとして跳ね返っており、企業全体で考えると膨大な金額になっている。その原因となっているのが、「情報検索ロス」だ。7月19日に開催された「マイナビニュース ビッグデータ活用・保全セミナー」のセッションでは、グループネットの有働亮次氏が登壇。「IBM InfoSphere Data Explorer(IDE)」を活用し情報検索ロスを削減する具体的な方策について、最新の市場動向を交えながら解説がなされた。

検索ロスを削減する情報基盤づくり

セッションの冒頭で有働氏は、「検索ロスにより、多くの企業が生産性の低下を招いている。検索ロスが生じると、本来の業務遂行時間を圧迫してしまい、コスト増を引き起こしてしまう。一人ひとりのロスは少なくても、企業全体で考えると数億円単位でのロスが発生していることも珍しくない。現場の力を効果的に発揮するためにも、本来の業務遂行を実現できる情報基盤づくりが不可欠となっているのだ」と訴えた。

これまで企業は、帳票や図面などの各種情報を「紙媒体」に残してきた。「紙媒体」は保存するスペースが必要で、不必要な資料が多いと検索性が低下する。そのため、必要な情報のみを残して利用してきたという歴史がある。しかし、このような状況は、ITの利用で大きく様変わりしている。残される情報は電子データとなり、保存場所はストレージに変わったのだ。そしてストレージの大容量化に伴い、多くのデータが保存できるようになり、最終版のデータだけではなく、作りかけのデータなども保存することが普通となった。こうして企業は、膨大なデータを保持できるようになった反面、必要な情報にアクセスすることが困難になってしまっているのが実情だ。さらに人材の流動性が高まったことにより、情報取得ノウハウや社内システムの利用ノウハウが希薄化しているという点も見逃せない。人材の流動性が低く、企業・部門独自の情報取得ノウハウが蓄積されていた頃であれば、誰かに聞けば、必要とする情報に比較的容易にアクセスすることが可能であった。しかし、そのような手法は現在使うことができなくなっている。その結果として、情報検索ロスが発生してしまっているのである。そこで、検索ロスの発生を防ぐために、検索エンジンを活用した情報基盤を検討する企業が増えているわけだ。

一口に検索エンジンといっても、インターネットサーチと企業内情報を検索するエンタープライズサーチとはアルゴリズムに大きな差異がある。インターネット検索の場合、多くのユーザーが必要とする情報を検索上位に配置するアルゴリズムが確立されているのに対して、エンタープライズサーチでは、役職や部署などにより必要とする情報が異なることから、ユーザーが必要とする検索キーワードを上位に配置するアルゴリズムは確立されていない。そのため、後者では、ヒットしたページそれぞれに関連する情報が分散している状況となってしまうのである。ユーザーはヒットしたすべてのページを閲覧し、情報を収集する必要があるため、どうしても効率が低下しがちだ。

しかし、多くのユーザーは、検索の際に入力するキーワード数は2単語以内、検索結果画面の閲覧ページ数は3ページ以内にとどめている。インターネットサーチであれば、こうした簡単な行動パターンであっても必要な情報を見つけられる可能性が高いが、エンタープライズサーチの場合には、このままでは必要な情報を探すことができないケースが多い。つまり、エンタープライズサーチで必要な情報に効率的にアクセスできるようにするためには、新しい仕組みを取り入れる必要があるのだ。

クラスタやタクソノミーなど、気づきを与える仕組みが重要

有働氏は、その新しい仕組みを取り入れたツールとして「IBM InfoSphere Data Explorer(IDE)」を掲げ、そのデモを交えながら、検索ロスを低減する基盤づくりについて説明した。「IDE」は、「検索エンジン」と、企業内に散財しているコンテンツを集約する「クローラー」、集約したデータを活用する「クラスタリングエンジン」からなる情報基盤システムだ。ユーザーがキーワードを入力すると「クラスタ」という集合体を生成し、頻出するキーワードをリストアップ、自動的に類似した内容に分類する。入力するキーワード数が少なくても、クラスタリングを活用することで、情報を絞り込むことができるようになり、調べたい情報を容易に検索できるようになるのだ。

また、IDEにはタクソノミー(エンティティエクストラクション)機能も追加されており、情報を柔軟かつ効率的に分類することが可能となっている。タクソノミー機能とは、あらかじめ。「AとBという項目についてはCという項目に分類する」といった指示を与えておくことで、分類が容易に行えるようにする機能だ。例えば、一般的な検索システムでは、A社とB社が統合してC社となった場合、統合前の企業名に関連づけられる情報については、統合後の企業名であるC社で検索してもヒットすることはない。しかし、「A社およびB社の検索結果はC社として分類する」といったタクソノミーを指定しておくことで、統合後の企業名で検索しても統合前の企業と関連づいた情報を検索することができるようになるのだ。ここでは企業名を例に紹介したが、同一の商品であるが異なる呼称がつけられているような場合にも、タクソノミーは有効な機能となる。

さらに、IDEは、サムネイル作成ソリューションと組み合わせることで、ファイル本体をダウンロードすることなく、内容の確認をすることが可能となる。昨今、セキュリティを強化する企業が増えるなか、ファイルのダウンロードには承認が必要というケースも少なくない。しかし、情報を収集するだけのために、いちいち承認、ダウンロードといったプロセスを経ていたのでは、検索ロスが増大するばかりだ。IDEとサムネイル作成ソリューションの連携は、こうしたケースでも活用が期待できるのである。

セッションの最後に有働氏は、「単純に"検索エンジン"を導入しさえすれば情報検索基盤を構築できるわけではない。役割や目的、ゴールを明確にして製品選定をすることが大切だ」と主張して壇を後にした。

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