本連載の7回目でChromebookにNode.jsの開発環境を整える方法を紹介しました。あれから4年経ち、生成AIが登場してプログラミングの開発現場も大きく変わりました。そこで、改めて開発環境を整える方法を紹介します。Gemini CLIを利用して簡単なQRコード生成ツールも作ってみます。
格安ChromebookをAI用開発マシンとして使おう
開発用のマシンとしてChromebookは使い勝手の良い端末です。最新のChromeブラウザが動きますし、Linuxが動きます。Linuxが動くということは、各種の開発ツールやエディタが使えます。vimやemacsなどCUIベースのエディタが動くのは当然として、多くのプログラマーが愛用しているVisual Studio Codeも動かすことができます。
ChromebookでLinuxを有効にしよう
Chromebookでは、デフォルトではLinuxが無効になっていますが、簡単に有効にできます。設定アプリの「ChromeOSについて > Linux開発環境 > 設定」をタップします。すると、「Linux開発環境をセットアップする」という画面が出ます。そして、ユーザー名とディスクサイズを指定して「インストール」ボタンを押すと、Linuxコンテナが構築されます。
その後、Linuxを利用するには、アプリ一覧から「ターミナル」を選んで起動します。なお、ChromebookのLinuxは、Crostiniと呼ばれる仮想環境で、DebianベースのLinuxが使えます。下記のコマンドを実行してバージョンを確認してみましょう。
cat /etc/debian_version
すると、原稿執筆時点では「12.12」と表示されました。これは、Debian 12(Bookworm)です。
また、メモリの状況などを確認するには、下記のコマンドを実行します。筆者のChromebookはメモリが8GBのものですが、Linuxで利用可能なメモリとして6.5GBが表示されました。(ちなみに、設定アプリの「ChromeOSについて > 診断」をクリックすると実際のメモリサイズが確認できます。)
free -h
Node.jsのインストール
それでは、ここから開発に必要な諸々のツールをインストールしていきましょう。まずは、下記のコマンドを実行して、パッケージを最新バージョンにしておきましょう。
sudo apt update
sudo apt upgrade -y
続いて、Node.jsをインストールしましょう。Debian 12では、nvmで入れるのが便利です。以下のコマンドをコピーして、ターミナルに貼り付けましょう。
curl -o- https://raw.githubusercontent.com/nvm-sh/nvm/v0.40.3/install.sh | bash
その後、以下のコマンドを実行して、シェルを反映させます。
source ~/.bashrc
続いて、Node.jsの最新版(安定版 LTS)をインストールしましょう。
nvm install --lts
インストールができたら、下記のコマンドを実行してバージョンを確認しましょう。本稿執筆時点では、「v24.11.0」がインストールされました。
node -v
なお、「apt install nodejs」でもインストールできますが、Debianパッケージは古いバージョンであることが多いので、簡単に最新版をインストールできるnvmを使うのが便利です。
Gemini CLIのインストール
Node.jsがインストールできたら、Gemini CLIが動く環境が整ったことになります。以下のコマンドを実行すると、Gemini CLIがインストールされます。
npm install -g @google/gemini-cli
インストールできたら、下記のコマンドを実行しましょう。
gemini
すると、Gemini CLIをどのように使うのか表示されるので、「Login with Google」を選びましょう。すると、ブラウザが起動するので、Googleにログインしましょう。
Visual Studio Codeのインストール
次に、Visual Studio Codeをインストールしましょう。Geminiが作成したプログラムを確認したり、微修正するのには、やはりコーディング用のエディタがあると便利です。
Visual Studio Codeをインストールするには、Linux環境を有効にした後で、こちらの配布サイトからインストーラーをダウンロードします。ファイルアプリで、ダウンロードした「.deb」ファイルを実行すると、インストールが始まります。
なお、アーキテクチャが異なると動作しないため、うまくインストールできないときは、ターミナルで「uname -m」を実行して、ご自身のマシンに搭載されているアーキテクチャを確認しましょう。「aarch64」と表示されたなら「Arm64」を選び、「x86_64」と表示されたなら「x64」を選びましょう。
Visual Studio Codeを起動するには、ChromeOSのアプリ一覧にある「Linuxアプリ > Visual Studio Code」をタップします。あるいは、ターミナルで「code (ファイル名)」のようにタイプして起動できます。
ちなみに、4年前の本連載7回目で、Visual Studio Codeのインストールを試した時には、デフォルト状態では、日本語入力ができなかったのですが、今では、しっかりと日本語入力が可能です。ここから、4年の間にChromeOSのLinux環境が大いに改善されたことが分かります。
Geminiで簡単なQRコード生成ツールを作ってみよう
それでは、簡単なアプリをGeminiで作ってみましょう。今回作るのは、QRコード生成ツールです。ターミナルで以下のコマンドを実行してみましょう。
mkdir qrcode_gen
cd qrcode_gen
gemini
Geminiが起動したら、以下のような指示(プロンプト)を与えてみましょう。
Node.jsを使って、QRコードを生成するCLIツールを作ってください。
画像ファイルと一緒に、ターミナルにQRコードを出力してください。
すると、プロジェクトを作り、ライブラリをインストールして、あっという間に、QRコード生成ツールを完成させてくれます。今回、Geminiは「index.js」という名前のツールを作ってくれました。(生成されるファイル名は試すたびに異なる気がします。)次のようにコマンドを実行すると、筆者のWebサイトのQRコードを無事生成してくれました。
node index.js https://kujirahand.com
iPhoneでQRコードにカメラを向けると正しく、URLを認識してくれました。
開発用にどのChromebookを選ぶ?
ところで、開発用のChromebookには何を選んだら良いでしょうか。というのも、Chromebookは、低価格で入手できるのもメリットです。Amazonで「Chromebook」を検索すると2万円から見つかります。
もちろん、安い端末は、それなりなのですが、筆者は持ち歩いて気軽にプログラミングできるマシンを考えていたので、メモリが8GBある2-in-1のタブレットPCを選びました。執筆時点で5万円前後です。
実際のところ、このスペックでは開発ではちょっと力不足に感じる場面もあるのですが、Visual Studio CodeのAI機能(GitHub Copilot)も動きますし、今回紹介したGemini CLIも十分動作します。
まとめ
現在、筆者はメインの開発マシンに、Macbook Pro M4を利用しており、そのマシンと比べると、今回入手したMediaTek Kompanio 520のCPU(8コア2.0GHz)を搭載したChromebookはあまりにも非力です。それでも、スクリプト言語でプログラムを作ったり、ターミナル上でいろいろな作業をする分には、それほど性能差を感じることはありません。どんなマシンでもそれなりに快適に使えるというのはCUIの良い部分です。今回この記事を書くに当たって、改めて4年前に書いた記事を読み直したのですが、ChromebookのLinuxが安定して、使い勝手もかなり改善されたことが実感できました。これからも持ち歩き用のマシンとして重宝しそうです。
自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。技術書も多く執筆している。直近では、「実践力をアップする Pythonによるアルゴリズムの教科書(マイナビ出版)」「シゴトがはかどる Python自動処理の教科書(マイナビ出版)」「すぐに使える!業務で実践できる! PythonによるAI・機械学習・深層学習アプリのつくり方 TensorFlow2対応(ソシム)」「マンガでざっくり学ぶPython(マイナビ出版)」など。






