今回のテーマは「Wikipedia」
世界の各国言語に対応し、オンラインでフリーの百科事典を提供する「Wikipedia」。インターネットを使ったことがあるなら、誰もが一度は触れたことのあるサービスではないだろうか。コンテンツは有志により編集されているが、品質は保たれており、世界中の人々から参照されている。
まさに「知の集約」が見られるWikipedia。世界中の出来事に対して敏感に反応し、事件発生のわずか数分後には関連コンテンツが編集されている。そんなリアルタイム性がこれまでの紙媒体とは一線を画す点だろう。今回はそんなWikipediaを使ったWebアプリケーションならびにオープンソース・ソフトウェアを紹介しよう。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『WikipediaVision』 コンテンツ編集状況をリアルタイムチェック
『Navify』 Wikipediaの弱点! メディアコンテンツを補完する
『Wikimedia Mobile』 モバイルデバイス向けに表示を最適化する
『Okawix』 いつだって読みたい派はオフラインビューアで
コンテンツ編集状況をリアルタイムチェック
名称 | WikipediaVision |
---|---|
URL | http://www.lkozma.net/wpv/ |
『WikipediaVision』は世界中で行なわれているコンテンツの編集をリアルタイムで閲覧できるWebサービスだ。IPアドレスからとれる地域情報をもとに、Googleマップに投影して表示される。提供されるのは英語/ ドイツ語/ フランス語/ スペイン語/ スウェーデン語となっており日本語は提供されていない。
マーカーには編集されたコンテンツへのリンクと差分表示のリンクがついている。前述のとおり、Wikipediaのコンテンツ編集はリアルタイム性が強いので、今世界で起こっている出来事を知るのに良いきっかけになるかもかれない。
チャートでは各言語における編集された数をグラフ化したり、スナップショットとして登録されているマーカーを全て表示する機能がある。世界中におけるWikipediaの根強い人気がわかるだろう。
Wikipediaの弱点! メディアコンテンツを補完する
名称 | Navify |
---|---|
URL | http://navify.com/ |
Wikipediaには膨大なテキストコンテンツがあるが、弱い分野も存在する。それは写真や動画といったメディア関連の情報だ。同じ情報にしてもテキストで読むよりも動画や写真のほうが分かりやすく説明できることはたくさんある。だがライセンスの問題などもあって写真コンテンツはあまり多くないのが実情だ。
その問題点を解決してくれるのが『Navify』だ。Navifyでは検索をするとWikipediaのページを表示するのと同時にYouTubeから動画、Flickrから写真を取得して表示してくれる。これでより深くそのものについて理解できるようになるはずだ。
Wikipediaではコンテンツをオープンにし、Web APIの提供も行なわれている。そのような提供システムがあるからこそNavifyのようなみんなにとって有益なシステムが生まれてくるのだろう。
モバイルデバイス向けに表示を最適化する
名称 | Wikimedia Mobile |
---|---|
URL | http://github.com/hcatlin/wikimedia-mobile/tree/master |
WikipediaはiPhoneやAndroidといったスマートフォンに対してコンテンツの表示を最適化されている。それを行なっているのが『Wikimedia Mobile』だ。前述のスマートフォンのほか、Palm PreやKindle 2といったデバイスにも対応している。今後、Blackberry/ Symbian/ Windows Mobileなどにも対応していく予定だ。
![]() |
![]() |
iPhoneをはじめとした各種スマートフォンに対応 |
見出しの横のボタンを押すとコンテンツを表示 |
そしてWikimedia Mobileはソースコードを公開し(ライセンスは不明)、Github.comで提供されている。言語はRuby(Merb)を用いている。Wikipediaを構築しているMediaWikiはPHPだが、モバイル向けは異なる言語を選択したようだ。表示は検索がメインになっていて、各見出しは最初は表示されず、ボタンを押すことで詳細が表示されるようになっている。画面の大きさが限られるスマートフォンならではの表示だろう。
いつだって読みたい派はオフラインビューアで
名称 | Okawix |
---|---|
URL | http://www.okawix.com/ |
『Okawix』は、Windows/ Mac OS X/ Linuxに対応したWikipediaブラウザだ。Wikipediaのコンテンツ量は膨大であり、オンラインで読むことを基本としているが、それでもインターネットを離れた場所で読みたい時は多い。その場合はWikipediaで提供されるコンテンツのダンプファイルが利用できるが、これはXMLファイルになっているのでそのままでは読むのが難しい。
![]() |
オフラインでWikipediaやウィキニュースのコンテンツを閲覧 |
そこでOkawixでは、指定した言語と指定したサービス(Wikipedia以外でもウィキニュースなどWikimediaの提供する7つのサービスに対応している)のデータをダウンロードし、オフラインで読めるビューアを提供している。なおコンテンツはテキストのみで写真などのメディアは対応していない。
![]() |
印刷ページの例。余計な情報はないので見やすい |
検索機能を持っているのだが、日本語検索ではうまく結果を得ることができなかった。その点さえ除けば、検索の履歴管理や印刷機能などオフラインでWikipediaのコンテンツを楽しむのに十分な機能が提供されている。
いかがでしたか?
Wikipediaのコンテンツはオープンであり、読んだり編集したりするのはもちろん、外部のサービスと連携させることもできる。それにより、自分のWebサービスのコンテンツを拡充することができたり、Wikipediaをより楽しむことができるようになる。
日本語版Wikipediaのコンテンツは60万項目を超え、全言語で5番目の規模になっている。今後ますます利用する人は増えていくだろう。皆さんも自分の知識をオープンにし、コンテンツ編集に参加してみてはいかがだろう。
著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。