ミクシイやディー・エヌ・エー、グリーといった国内のSNS主要各社がプラットフォームをオープン化したことに伴い、ソーシャルアプリ、ソーシャルゲームの世界での飛躍を狙ったベンチャー企業や個人の参入が加速している。このような背景をITインフラの部分で支えるのがクラウドであり、中でもサーバー環境の重要性が増している。今回はクラウドについて、VPSサービスで定評がある使えるねっとのジェイソン・フリッシュ氏に話を聞いてみた。

爆発するソーシャルアプリの需要に開発者はどう対処すべきか?

使えるねっと 代表取締役社長 CEO ジェイソン・フリッシュ氏

日々進化を続けるインターネット業界における、今もっともホットな話題の1つがソーシャルアプリ、ソーシャルゲームだ(ここでは両者を総称して「ソーシャルアプリ」と呼ぶこととする)。

ソーシャルアプリの開発は、アイデア次第で大きなリターンが得られることもあり、まさに今、参入を検討している企業や開発会社も多いことだろう。

ただ、実際にサービスを提供するとなると、必ず問題になってくるのが、アプリ開発とサービス提供のためのサーバー環境の構築ではないだろうか。

ソーシャルアプリは、SNSのプラットフォーム上で提供されることになるため、バイラル効果によって一気に多くのユーザー数を獲得できるというメリットがある。一方で、急激なユーザー数の増加にも対応しつつ、安定したサービスを提供し続けることが同時に求められる。

「今日のユーザー数が1,000人でも、明日はこれが一気に10万人にまで増えるかもしれない。これがソーシャルアプリの世界」とフリッシュ氏は語る。

開発者はこのような要件にどのように対処すべきか? その答えがクラウドだ。

「ソーシャルアプリの世界では、アクセス数の急増に対して、サーバーの拡張に時間をかけるわけにはいかない。その点クラウドなら、需要変動に応じて柔軟かつ迅速なスケールアウトを実現できるメリットがある」とフリッシュ氏は語る。

物理的な専用サーバーを利用する場合、アクセス増を見越して数百台のサーバーをあらかじめ用意するというのは現実的ではない。かといって、小規模なサーバー環境でスタートさせた場合、アクセス数が増えてからサーバーを増設するのでは、時間がかかりすぎてしまう。これではユーザーに迷惑がかかるうえに、せっかく集まったユーザーに、肝心のアプリを使ってもらえなくなる可能性もある。物理的な設置場所が必要になることも問題だ。

クラウドを使えば、これらの多くの課題をクリアできる。サーバーを中心としたインフラ構築作業や設置スペースが不要となり、最低限の人的リソースでサービスを提供できる。従ってコストも低く抑えられる。アプリの人気が出てきたら、必要に応じてサーバーを迅速に増設するといったことも容易だ。

「ソーシャルアプリの場合、"当たる"アプリと"当たらない"アプリで、必要とされるサーバーの規模が大きく異なる。需要予測が難しく、いつリソースが必要になるのかわからないWebサービスは、クラウドが最も適している」とフリッシュ氏が語るように、ソーシャルアプリとクラウドは非常に相性がいいのだ。

サーバの柔軟な拡大・縮小を実現するIaaS型クラウドサービス

このような市場背景を踏まえ、使えるねっとではソーシャルアプリ開発者向けのクラウドサービスを提供している。

「クラウドサービス」というと、セールスフォースなどのSaaSを思い浮かべる方もいると思うが、レンタルサーバー事業者である使えるねっとが提供するのは、IaaS(Infrastructure as a Service)。つまり、インフラとしてのクラウドを使ったサーバー環境だ。

使えるねっとでは、高スペックなサーバー環境を初期費用0円、低価格な月額料金、帯域ごとのトラフィックによる課金制で提供している。最小構成では227.5円/日~であり、ベンチャー企業や個人開発者にとっても導入しやすいものとなっている。

これは「インターネットビジネスを始めるお客様が、イニシャルコストをいかに安くできるか」というフリッシュ氏の経営理念を反映したものだ。

オーダーして入金確認後、1営業日以内に拡張されたサーバー環境が使用可能となるスピーディーさは、従来必要とされていた開発環境構築のための機器選定、各種設定にかかる工数を大幅に短縮し、結果としてアプリ開発期間の短縮を実現する。

フリッシュ氏は今回の取材で何度も「クラウドは、どれだけ迅速な拡張・縮小ができるかがポイント」と強調したが、このような柔軟性もさることながら、とりわけ企業向けにクラウドサービスを提供する場合は、万一の際にデータセンターに駆けつけることができるといった要素も求められる。

その点、使えるねっとは国内(長野県内)にある自社のデータセンターでサービスを提供しているため、「サーバーは海外にあるのでどうすることもできません」といった事態にはならないことや、レイテンシ(応答速度)の面で強みがある。

ローエンドニーズ対応のクラウドサービスも提供

使えるねっとでは、ローエンドニーズ向けのクラウドサービスである「おまかせクラウド」も提供している。これはクラウドと名が付くものの、先述のようなIaaSではなくホスティングサービスだ。

中小企業には、ITに対する継続的な投資や、スキルの高い専任スタッフの雇用といった点で慢性的な課題を抱えているところが多い。従って、「せめて自社ドメインのWebサイトとメールアドレスだけでも、コストをかけずに使いたい」というニーズも多いことだろう。「おまかせクラウド」は、このような要望に最適なサービスだ。

「おまかせクラウド」の最大の特徴は、簡単に設定できるGUIベースのコントロールパネルが用意されていること。初心者でもアクセス権限やWeb、メールに関する設定が容易となっている。また、Webページの作成ツールも用意されているのも嬉しい。

さらに、同サービスにはファイル共有機能も用意されているので、必要なファイルをクラウド上に転送して簡単に社員同士でシェアできる。

サポート体制も充実し、サーバー管理の知識がなくても導入できる「おまかせクラウド」。これからIT環境を整備するという企業、従来の環境を見直したい企業にお勧めだ。

次回は、使えるねっとのサービス内容や特徴を具体的に紹介しながら、「いまクラウドサービス導入すべき理由」をさらに深く追求する。