企業のサステナビリティへの取り組みは大きな転換期

日本IBMは10月4日、オンラインで記者説明会を開催し、グローバルで展開しているサステナビリティ(持続可能性)経営の実現に向けた包括的なサービスを拡充し、「サステナビリティ成熟度診断」と「戦略策定支援」を10月から開始すると明らかにした。

具体的には、サステナビリティ実現に向けた戦略策定などのコンサルティングから、プラットフォーム構築をはじめとした実装、業界を横断したエコシステム組成までシームレスに提供するサービスとなり、業界や業務の高い専門性をもったコンサルタントやデザイナー、データサイエンティスト、システムズエンジニア、アーキテクト、研究員などか構成した専門チームが支援する。

世界規模の異常気象やパンデミックなどでサステナビリティへの関心が急速に高まり、企業のサステナビリティへの取り組みは大きな転換期を迎えている。

サステナビリティの捉え方が変化し、企業は大転換期を迎えているという

サステナビリティの捉え方が変化し、企業は大転換期を迎えているという

日本IBM パートナー 戦略コンサルティング サステナビリティー・オファリング リーダーの大塚泰子氏は、新サービスをローンチした背景について「これまでサステナビリティはCSRや社会貢献として語られることが多かったが、今その位置づけが大きく変わろうとしている。日本の場合、サステナビリティと言えば、環境・自然に目が行きがちではあるものの、例えば自然環境が破壊されるということが起こった際に、製造業であれば原材料の枯渇などがリスクとして挙げられ、一例としてはサプライチェーンの断絶といったことがある。社会的な視点としては、サプライチェーンの川上で人権侵害が行われていれば市場からボイコットされる可能性もある。こうした、環境・自然が成立してこそ、自社の経済が成り立っており、サステナビリティに取り組まなければ、サプライヤーでいられなくなる恐れがあるからこそ、企業として大転換期にあると考えている」と話す。

日本IBM パートナー 戦略コンサルティング サステナビリティー・オファリング リーダーの大塚泰子氏

日本IBM パートナー 戦略コンサルティング サステナビリティー・オファリング リーダーの大塚泰子氏

すでに、日本においても今年6月にコーポレートガバナンスコードの改定や、2022年3月期から有価証券報告への気候変動リスクの開示などの要請がスタートし、グローバルではEUを中心に2035年に向けた厳しい方針が示されている。しかし、日本企業の人権に対する意識や日本社会における環境に対する意識も十分に醸成されていない状況だという。

大塚氏は「日本企業のサステナビリティの取り組みは『可視化』と『サステナビリティへの取り組み方針の定義』に二極化しており、自社が果たすべき役割が未定義のままで施策の優先順位がつけられないことに加え、バリューチェーン全体での効果が分からないといった課題感を経営層は抱えている。そのため、まずは『自社のミッションや特性との整合性』の確認、『各施策ごとの効果の可視化』が必要だ」と力を込める。

そこで、同社では「リーダーシップ」「テクノロジーの活用」「エコシステムの形成」の3つが重要なポイントだと示唆している。リーダーシップについてはWhy(なぜ自社がやるのか)、What(何をやるのか)、How(どうやるのか)のうち、WhyとHowが重要になり、成熟度診断でも特にサステナビリティリーダーシップ(リーダーシップ、戦略、説明責任・文化醸成)を重視し、これらの項目からアセスメント実施する形をとっている。

テクノロジーの活用では同社が今回の新サービスを含めて、アセスメント/調査から戦略・構想策定、実装までの幅広いサステナビリティ支援サービスを提供している点を強調した。

IBMではアセスメント/調査から戦略・構想策定、実装までの幅広いサステナビリティ支援サービスを提供している

IBMではアセスメント/調査から戦略・構想策定、実装までの幅広いサステナビリティ支援サービスを提供している

アセスメントフェーズでは気候変動で生じるリスクをシナリオ分析し、財務上のインパクトを可視化する「Climanomics」、可視化のフェーズは各社のサプライチェーン排出量(事業者の原料調達・製造・物流・販売・廃棄など一連の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量、Scope1、Scope2、Scope3で構成)のScope1(直接排出量)、Scope2(間接排出量、Scope3はそのほかの間接排出量)のCO2排出量や再生可能エネルギー利用率などを、データセンター、工場などサイト別に可視化するダッシュボード「Envuronmental Intelligence Suite」を挙げている。

「Environmental Intelligence Suite」の概要

「Environmental Intelligence Suite」の概要

さらに、実装フェーズではSCM(サプライチェーンマネジメント)として研究開発、調達・ロジスティクス、製造、保全、生産計画、販売・消費までの各バリューチェーンにおいてサービスを提供し、特に昨今ではトレーサビリティ領域におけるブロックチェーンのプラットフォームでさまざまなモノのトレーサビリティを実現する「IBM Supply Chain Intelligence Suite」の問い合わせが多いという。

「IBM Supply Chain Intelligence Suite」の概要

「IBM Supply Chain Intelligence Suite」の概要