IoTシステム開発をどうやって構築をしていこうか悩まれている技術者の方々へ、ヒントを提示すべく始まった本連載。前回はIoTの基本と、IoTはイノベーションツールであるという本質をご説明しました。2回目の今回は、もう少し具体的にIoTシステムを構築するときに考えるべきポイントをご説明したいと思います。

IoTの全体像

前回もIoTには多種多様な利用シーンがあるという点をご説明しました。ホームセキュリティからファクトリーオートメーションまで、私達に関わる様々なものがIoTとして利用される可能性があります。

しかし、いくら利用シーンが多様といっても、大きな構成要素はそう変わりはありません。以下の図が、IoTの全体像をあらわしたものになります。

IoTの全体像

IoTは大きく2つに分類できると思います。ひとつは”モノとモノ”をつなぐM2M(Machine to Machine)。もう一つは”モノとヒト”をつなぐM2H(Machine to Human)です。

たとえば、電力の小売自由化とともに注目されるインテリジェンスに電力管理を行うスマートメーターや、建設機械などを遠隔地から管理/コントロールできるようにするリモート監視システムなどは、代表的なM2Mといえると思います。

一方で、人間の手首や足にデバイスをつけて、消費カロリーや歩数などをモニタリングするウエアラブルデバイスなどは、M2Hに分類できるでしょう。

それらの仕組みは主にクラウドプラットフォームをベースにシステム構築がされます。大量のデバイスやデータを効率的に管理するためには、クラウドのような拡張性の高いプラットフォームが必要不可欠です。

しかし、クラウドプラットフォームはあくまでインフラです。実際にシステムを実現/管理するためのアプリケーションが必要になってきます。分析を行うアプリケーションや制御を行うアプリケーションなどがクラウドプラットフォーム上に構築されます。

このように、複数の要素が組み合わさってIoTは実現されます。

IoTを構成する要素

それでは、もう少し具体的にIoTを構成する要素を考えてみます。IoTは先ほども説明したとおり、「デバイス」、「クラウド」、「アプリケーション」の3つのレイヤーに分けられます。

それらのレイヤーで具体的にどのような処理が行われるかをあらわしたのが以下の図です。

IoTを構成する要素

まずセンサーやスマートフォンなどのデバイスから無線やSIMを利用してデータ収集/転送がされます。転送されたデータは、クラウド上にてデータベースやファイルとして蓄積されていきます。

その後、アプリケーションは蓄積されたデータを取り出し、データ分析や可視化、シミュレーションを行います。

ここで重要なのは、すべてのレイヤーにおいて、横断的にデータのやりとりが発生するということです。つまりデバイスからクラウド、アプリケーションまで、一気通貫でデータを連携していかなければIoTシステムは実現しません。

しかも、デバイスとクラウドといった今まで連携することのなかったような距離の遠い要素同士で、データの連携を実現する必要があります。

データ連携が重要なカギ

以上のように、IoTではデータ連携をいかに実現させるかが極めて重要な課題になってきます。しかも、短距離無線でしか会話ができないようなセンサーデバイスであったり、回線品質が不安定な3G/LTE回線上で転送をする場面も出てきます。この状況下において、拡張性高く、効率的に、確実にデータ連携を実現する必要があるのです。

IoTはデータが中心となったデータセントリックなシステムです。そのため、データの収集/連携は切っても切り離せない重要なポイントです。そのため、IoT構築の際はまずデータ収集/連携をどう実現するかを考えるべきでしょう。データ連携がIoTを実現する重要なカギとなります。

次回は、IoTを構築する上で使われる、代表的なシステム・アーキテクチャの例をご紹介していきたいと思います。

著者紹介

友松哲也 (TOMOMATSU Tetsuya)
- 株式会社セゾン情報システムズ IoT担当マネージャー / 株式会社アプレッソ プロダクトストラテジスト

データ連携ミドルウェアのフィールドエンジニアとして、数多くのデータ連携、データ統合の現場を経験。2016年にセゾン情報システムズにて、安心・安全、確実なファイル転送ミドルウェア「HULFT」をIoTにも適用できるように進化させた最新プロダクト「HULFT IoT」の企画立案を行い、製造業を中心にIoT案件を推進。主にIoTのデータ転送の課題を解決すべく奔走中。