RFPによる調達には、相当の工数およびメンバーを必要とし、期間も数週間から3ヵ月に渡る場合がほとんどです。RFPによる調達に取り組む上で特に重要なのが、提供者に対して要求を明確に伝えるために、適切な人材によってRFPを作成するための体制を作ること、提案を適正に評価できるスキル・知識を有した人材から成る評価体制を作ることです。言い換えれば、適正な調達を実施するためのプロジェクト体制を編成するということになります。

以下の図は、アプリケーション構築の調達を目的とした体制の一例ですが、ユーザー部門責任者、評価委員会・調達責任者・技術支援・プロジェクト事務局・メンバーから構成される。各担当の役割は表1のようになります。

RFPによる調達に取り組む際の体制の例

表1 RFPによる調達に関わるメンバーの役割

担当

役割

ユーザー部門責任者

アプリケーションを直接利用する部門の責任者がなり、調達の最終決裁に当たる

調達責任者

プロジェクト事務局

調達プロセス全体を運営する責任を負い、契約交渉や他部署との調整も実施する

評価委員会

各自の専門領域において、提案の評価を実施する。より客観的で公正な評価を実施するために、RFP作成者と異なるメンバーが実施する場合もある

調達責任者

メンバー

主にユーザー側の要求要件を担当するメンバーとシステム要件を担当するメンバーから構成され、RFPを作成する。調達責任者は、各部署から招集したメンバーの利害関係を調整し、よりよい物品/サービスを適正な価格で調達する使命を担う

初回から4回にわたり、RFPによる調達を選択するためのコツとRFPによる調達を行うための体制作りについて説明しました。冒頭で、調達には、客観性と公平性が求められていると述べましたが、これは調達する側だけの問題ではありません。依頼されて提案する側、すなわち受注者にとっても同様なのです。

ITに限らず、調達は性質上、癒着や馴れ合いを生み出すリスクを常に負っています。このようなリスクを回避し、調達側・提案側双方が公正な商取引を適正な価格で行うことが重要です。またRFPによる調達は「適正価格」を探るプロセスとも言い換えることができる。決して「最安値」を追求するプロセスではないことを心にとどめておいてください。

執筆者プロフィール

石森敦子(Atsuko Ishimori)
株式会社プライド システム・コンサルタント

『出典:システム開発ジャーナル Vol.1(2007年11月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。