一口にRFPによる調達と言っても、評価の重点項目を変えたり、RFI(Request For Information:情報提供依頼)を事前に発行したりといった具合に、調達案件の性質に応じて対応を変える必要があります。というのも、どんな調達に対しても画一的なアプローチを取ると、効率が悪くなるだけでなく、よりよい物品/サービスを適正な価格で入手するという、本来の狙いから外れてしまうリスクが発生してしまうからです。

では、調達案件のどのような性質に着目すべきでしょうか。具体的には、「調達側の要求の明確度」と「提案の評価の難易度」を分析することで、RFPによる調達のプロセスを組み立てていけばよいです。各性質におけるチェック項目を以下に示しました。

RFPによる調達のプロセスを組み立てる際にチェックすべきポイント

要求の明確度

要求の明確度

調達の目的が明確になっている

目的の達成状況を数値化できる

調達対象の品質を明文化できる

制約条件が明確になっている

評価方法が明確になっている

利害関係者間で調達イメージが共有できている

実現案の選択肢

要求の実現性や実現方法を特定できる

実現方法や提供先が数社に限られている

提供先の品質レベルに差がない

適正コストの見通しがついている

評価の難易度

評価基準の客観性

要求事項と評価結果の間に恣意的な判断を入れる余地がない

採点結果の優劣を第三者が判定可能である

評価から選定までが機械的にできる

評価の多様性

決め手となる評価項目がある

評価項目に相反する関係がない

評価に多様なスキルやステークホルダーを必要としない

最終的に、以下の図に示したようなチャートパターンに従って、調達案件がどのパターンに属するかを把握し、RFPによる調達において重点的に実施するプロセスを決定すればよい。例えば、この図の評価の難易度による分類の場合、「評価観点が単純か複雑か」と「評価基準の客観性が高いか低いか」を組み合わせて案件を分類することになる。要求の明確度も同様に分類し、両者の組み合わせによって、調達プロセスを判断していけばよい。

 

評価基準の客観性

高い

低い

評価観点の

多様性・

複雑性

単純

ゾーン1

評価基準が定量的で、その決定方法も客観性が高く、また評価の観点も単純である

(例)
・消耗品を価格で判断

ゾーン2

評価観点は単純だが、その基準が主観的な要因に左右されやすい

複雑

ゾーン3

評価基準の客観性は高いが、評価項目が多岐に渡り、また項目間にトレードオフの関係がある

(例)
・基幹系システムにおける、ユーザー間の利害や性能とコスト評価

ゾーン4

評価基準の主観性が高く、評価項目も多岐に渡る

(例)
・政治的判断による大型物件
・導入効果がわかりづらい意思決定支援システム

RFPによる調達プロセスを決定する評価の難易度の分類

執筆者プロフィール

石森敦子(Atsuko Ishimori)
株式会社プライド システム・コンサルタント

『出典:システム開発ジャーナル Vol.1(2007年11月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。