PowerPointには、スライドマスターと呼ばれるスライドが用意されている。このスライドは、全スライドの「標準の書式」を指定するためのスライドとなる。プレゼン全体について文字の色を変更したい場合などは、その都度書式を変更するのではなく、スライドマスターで書式を指定しておくと効率よく作業を進められる。
スライドマスターの表示とスライドマスターの種類
前回の連載で解説したように、スライドの背景に画像を配置したときは、文字を読みやすくするために「文字色」や「文字の影」などの書式を指定しなければならない。とはいえ、全てのスライドで同じ書式指定を繰り返すのは、それなりに面倒な作業となる。このような場合はスライドマスターを活用すると、その都度、書式指定を行う手間を省くことできる。
スライドマスターは全てのスライドに共通する「標準の書式」を指定するもので、各レイアウトのひな型を編集するためのスライドとなる。まずは、スライドマスターを画面に表示するときの操作手順から解説していこう。
画面表示をスライドマスターに切り替えるときは、「表示」タブを選択し、「スライドマスター」のアイコンをクリックする。
すると、画面の左側に以下の図のようなスライド一覧が表示される。これらは、レイアウト別に「標準の書式」を指定するためのスライドとなる。
一番上に表示されているスライドを選択すると、以下の図のようなスライドマスターが表示される。このスライドマスターは全スライドの書式を指定するもので、主に「タイトルの領域」や「コンテンツの領域」の書式を指定するときに利用する。
上から2番目にあるスライドは、「タイトル スライド」の書式を指定するスライドマスターとなる。とはいえ、通常のプレゼンでは、最初の1枚目だけに「タイトル スライド」を使用するが一般的なので、通常の方法でスライドを編集しても作業効率は変わらない。よって、このスライドマスターを利用する機会はあまり多くないと考えられる。
上から3番目にあるスライドは、「タイトルとコンテンツ」のスライドマスターとなる。ここで書式指定を行うと、「タイトルとコンテンツ」のレイアウトで作成されている全てのスライドに書式指定が反映される。通常、「タイトルとコンテンツ」のレイアウトは最も頻繁に使用するレイアウトとなるはずだ。よって、このスライドマスターで書式指定を行うのが、スライドマスターを使って編集作業を行うときの基本となる。
なお、このスライドにある「コンテンツの領域」は、「箇条書きのレベル」に応じて個別に書式指定を行うことが可能となっている。通常の文字(箇条書き)の書式を指定するときは、「マスターテキストの書式設定」の文字を選択した状態で書式指定を行えばよい。「第2レベル」や「第3レベル」などの文字は、下位レベルに変更した箇条書きの書式を指定するときに選択する。
そのほか、「2つのコンテンツ」や「タイトルのみ」といったレイアウト用のスライドマスターも用意されている。これらのスライドマスターは必要に応じて利用すればよい。よく分からない方は、「タイトルとコンテンツ」のスライドマスター(上から3番目にあるスライドマスター)を編集するのが基本と考えておけばよいだろう。
背景を指定した場合のスライドマスター
参考までに、スライドの背景をカスタマイズしたときの挙動も紹介しておこう。前回の連載で解説した手順でスライドの背景を変更し、「全てに適用」ボタンをクリックすると、全てのスライドの背景が「カスタマイズした背景」に変更される。
この操作は、スライドマスターの背景を変更することにほかならない。つまり、「全てに適用」ボタンはスライドマスターの背景を変更する機能と考えられるわけだ。
当然ながら、画面表示をスライドマスターに切り替えたときの背景も変更されることになる。以下の図は、全てのスライドの背景に画像を指定したときのスライドマスターの表示となる。この図を見ると、スライドマスターの背景も指定した画像に変更されているのを確認できる。
スライドマスターを使った文字の書式指定
それでは、具体的な例でスライドマスターの活用方法を解説していこう。先ほどの例のように背景に画像を指定した場合は、文字を読みやすくするために、文字の書式を調整しておく必要がある。この書式指定をスライドマスターで行うと、その都度書式指定を行わなくても指定した書式で文字を入力できるようになる。
スライドマスターで文字の書式を指定するときは、「ホーム」タブにあるリボンを利用する。この操作手順は「通常の文字」の書式を指定する場合と同じなので、詳しく説明しなくても作業を進められるだろう。
書式を指定できたら、通常のスライド表示に戻してみよう。「表示」タブを選択し、「標準」のアイコンをクリックする。
試しに、新しいスライドを作成して文字を入力してみると、指定した書式で文字が表示されるのを確認できる。
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このように、スライドマスターは「標準の書式」を指定する機能となる。最も頻繁に使用する文字の書式をスライドマスターで指定しておくと、書式指定を行う手間を省略できるようになる。
もちろん、スライドに入力した文字の書式を後から変更することも可能だ。スライドマスターで指定する書式はあくまで「標準の書式」であり、絶対的なものではない。よって、文字の書式を変更する操作を行うと、スライドマスターの書式に関係なく、指定した書式で文字が表示されるようになる。このような仕組みを覚えておくと、スライドマスターをより効果的に活用できるだろう。
そのほか、スライドマスターに画像や図形を配置して、スライドのデザインをカスタマイズすることも可能だ。これについては次回の連載で詳しく解説していこう。