なくならない会議
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「会議のやり方ではなくて、会議をなくす方法を教えてほしい」
実は、会議に関する悩みで一番多いのがこれだ。この悩み、簡単に解決しそうで、なかなか解決しない。
会議をなくすにはたくさんのハードルがあるのだ。一般論として「無駄だ」と言われる会議ではあるが、それぞれの会議の主催者は、「自分主催の会議がいらないものだ」とは思っていない。実際、たいていは会議が必要な事情がそれぞれそれなりにある。たとえば「全体で2割の会議を削減しよう!」と言ったところで、削減対象となった会議の主催者は困ってしまう。
結果、会議はなくならない。ゾンビのように復活してくるのだ。
このような悩みを抱えている方に、私がお奨めしているのが、
- 「なくす」だけでなく、「参加者を減らす」「会議時間を減らす」ことを考える
- その考える視点として、「ゴール・メソッド」を活用する
という方法である。
アドレナリン会議 vs. 退屈な共有会議
- ひとりで考えても煮詰まるから、一緒にブレストしよう!
- なんかこの案いまいちだね。みんなで会議して、アドレナリン出して考えよう!
- 今日の会議は、アドレナリンが出てバンバン決まったなー
コンサルティング会社にいると、こんなセリフを良く聴く。こういった会議に参加すると、頭をフル回転させる必要がある。退屈ではない。
一方で、退屈な会議がある。共有会議である。
前者のようなアドレナリン系会議は付加価値が高いためなくすことはできない。一方で退屈な共有会議はなくす余地がある。アドレナリン系会議かどうかは、会議のゴールを考えればわかる。会議のゴールを考えたとき、「みんなの意見から新しいアイデアを産み出す」「ベストの案を考え出し、意思決定する」といった+αの付加価値がある場合は、アドレナリン系会議であり積極的に開催すべきである。
ただし、アドレナリン系会議も1つ注意すべき点がある。それは参加者の人数である。
アドレナリン系会議は、10人以上での運営は非常に難しい。もし10人以上いる場合、おそらく半分くらいはアドレナリンを出さないでサボっている可能性が高い。よって、できれば5、6人の有識者のみに参加者を絞りたい。「あの人も呼んでおこう」となる気持ちはわかるが、その一言が一般論としての「無駄な会議」を増やしているということを思い出してほしい。どうしてもという場合も、会議後に、個別に会議結果を見せながらヒアリングし、追加のアイデアをもらえばよいだけなのだ。
退屈なだけじゃない! 共有会議
会議のゴールが「情報の共有」だけだった場合、単純にその会議をなくしてしまってよいのだろうか?
実は、単純になくすことはできない。なぜなら、純粋に共有だけがゴールである会議は少ないのだ。共有会議には、会議という場で顔をあわせることで「コミットメントを高める」「ネクストアクションをメンバーの顔色を確かめながら決めていく」「チームの一体感を作る」といった裏ゴールがあることが多い。
この場合、会議を単純になくすことはできないが、時間を短くする必要がある。ダラダラした共有会議でコミットメントが高まるはずがないからだ。むしろ裏ゴール的には逆効果であろう。
もし、コミットメントなどの気持ち系が本当に重要なのであれば、会議の主催者は短時間で共有する仕掛けを相当工夫すべきである。とくに、人数が多ければ多いほど、会議参加者の気持ちは萎えていく。「1枚でパッと簡単にわかる資料を作る」「概要を話したら、『後は、ここを見てください』と資料の場所だけ教える」などヒト手間かける/ヒト工夫する価値がある。
ちなみに、気持ち系が重要なのであれば、会議というスタイルでなく、1対1の対話を複数回行うのも効果的な手法である。本当にみんなを集めるべきなのか、この視点でも考えたい。
なお、関係部署の代表が集まり、大人数で決定事項を承認するような会議があるが、これはアドレナリン系会議ではなく、気持ち系の会議に分類されるであろう。この会議は各部署がコミットする会議なので、長時間議論するのではなく手短にすませたい。よって、このような儀式的な会議の前に、個人別や少人数で議論する「根回し」はあるべき姿であるとも言える。
会議のなくし方、減らし方
ここまでの「会議をなくす」議論をまとめる。
まず、会議のゴールを考え、
- 付加価値を産むアドレナリン系会議
- コミットメントを高めるなどする気持ち系会議
- 純粋共有会議
に分類をする。
- アドレナリン系会議: 人数を必要以上に増やさない。とくに10人以上は怪しい
- 気持ち系会議: 人数は多くてもいいが、時間を徹底的に短くする。1対1の対話も考慮する
- 純粋共有会議: メールに代替する
純粋共有会議とは、会議のゴールが単なる共有であり、2の気持ち系会議のような裏のゴールがないものを指す。このような会議はメールで代替できることが多いため、「なくす」ことも可能である。
こういった形で、「なくす」「人数を減らす」「時間を減らす」を組み合わせ、会議を削減していく。これが有効な手段である。
最後に、進捗会議について一言。
30人くらい集まる進捗会議では、アジェンダごとに参加者や運営スタイルを変えていく工夫が必要である。たとえば、「チーム間の状況共有」というアジェンダと「課題検討」というアジェンダがある場合、前者は全員で手短にやるべきであり、後者は厳選された参加者だけが残って検討すべきである。
このように、会議の主催者は(特に出席者が多ければ多いほど)、その会議体運営について大きな責任感を持つこと、細かな気遣いをすることが必要だと思う。その責任感と気遣いが、会社全体の無駄な会議を減らしていくもっとも大きなポイントなのである。
今回は、会議の無駄の中でも、「会議体設計」のコツにフォーカスをした。次回は、設計された会議体の中で、会議をいかに「効率的に運営」していくかというコツについて話をする予定である。
執筆者紹介
斉藤岳 SAITO Gaku
アビームコンサルティング プリンシパル。東京大学大学院農学生命科学研究科修了。コンサルティングファーム勤務を経て2001年にアビーム入社。新規事業立上げ、事業再編、経営管理、業務改革等のコンサルティング経験多数。また、「会議で結論を出す技術」「インタビュースキル」「ソリューション営業スキル」等の研修を行っている。主な著書に1回の会議・打ち合わせで必ず結論を出す技術
など。