最近「ファーウェイ」「ASUS」など、これまで耳にしたことがなかったスマートフォンメーカーが増えている。その多くは中国や台湾などのメーカーなのだが、なぜそうしたメーカーのスマートフォンが、最近になって日本で注目されるようになったのだろうか。

大きく影響したのは"格安"なサービスの伸び

日本で人気のスマートフォンといえば、アップルの「iPhone」シリーズや、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」シリーズなど。だがここ最近、その傾向に変化が見られるようになってきた。

中でも最近注目されているのが、ファーウェイ(HUAWEI)というメーカーのスマートフォンだ。昨年には2つのカメラを搭載するなどカメラに力を入れた「HUAWEI P9」シリーズが人気となったほか、今年発売されたその後継機「HUAWEI P10」シリーズも販売が好調なようだ。

ファーウェイは昨年ヒットした「P」シリーズの後継モデルとなる、「HUAWEI P10」シリーズを6月に発売し、人気を獲得している

またエイスース(ASUS)の「ZenFone」シリーズも、ここ数年のうちに人気が高まっている。例えば今年発売された「ZenFone AR」は3つのカメラを搭載し、「ポケモンGO」で話題となった拡張現実(AR)をより高度な形で実現できるなど、非常に高い性能を誇ることで注目されている。

背面に3つのカメラを搭載し、より本格的なARを実現するASUSのハイエンドモデル「ZenFone AR」

他にも最近では、「ZTE」「ALCATEL」などこれまであまり耳にしなかったスマートフォンメーカーが増えているようだ。実はこれらは中国や台湾のメーカーであり、先に挙げたメーカーのうちASUSは台湾、それ以外は中国のメーカーである。

しかしなぜ、最近になって中国・台湾メーカーのスマートフォンが増えているのだろうか。その理由は“格安”にある。ここ最近、スマートフォンの料金が大手キャリアの半分から3分の1で利用できる、格安なモバイル通信サービスが人気となっているが、そうしたサービスを提供する企業の大半は、キャリアからネットワークを借りてサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)である。

だがMVNOが提供するのは、基本的にスマートフォンでネットワークを利用するのに必要なICチップ「SIM」、つまりネットワークの部分だけで、キャリアのように端末は提供していない。最近ではSIMとスマートフォンをセット販売するMVNOも増えてはいるが、これはあくまでSIMとスマートフォンをセットにして売っているだけ。大手キャリアのようにセットで購入することにより、端末代を値引いてくれるケースはほとんどない。

そうしたことから現在、MVNOのSIMと一緒に購入して利用する、どの会社のSIMでも利用できる「SIMフリー」のスマートフォンの販売が急速に伸びている。そしてこの市場に目を付けたのが、中国・台湾のメーカーだったわけだ。実際ファーウェイやASUSなどは、2014~2015年といった早い段階からSIMフリースマートフォンの販売を開始している。

実は日本には古くから参入、品質の重要性を学ぶ

なぜ中国・台湾メーカーがSIMフリー市場に目を付けたのかというと、1つは端末価格の安さが求められるからである。先にも触れた通り、多くのMVNOは端末の値引き販売をしていないため、SIMフリースマートフォンは元々の価格が安くないとユーザーが購入してくれないことが多い。だが中国・台湾のメーカーには安価なスマートフォンを多く手掛けている所も多く、SIMフリースマートフォンの市場にマッチしやすかったのである。

そしてもう1つは、販売できるスマートフォンの自由度が高いことである。大手キャリアにスマートフォンを供給する場合、キャリア側が大量に買い上げてくれるメリットがある代わりに、防水やおサイフケータイなど、キャリアが要求する仕様や水準を満たした端末を開発する必要があるため、手間やコストがかかってしまう。

しかしながらSIMフリースマートフォンの場合そうした制約がなく、メーカーが開発したスマートフォンを自由に販売できる。それゆえメーカー側にとっては、既に海外で販売しているスマートフォンに、多少のローカライズを施しただけで日本でもスマートフォンを販売できることから、スケールメリットを生かしやすいのだ。

こうした理由を挙げると、中国・台湾メーカーのスマートフォンは「安かろう悪かろうではないのか?」という懸念が出てくるかもしれない。だが実は中国・台湾メーカーのいくつかは、SIMフリースマートフォンの市場が立ち上がる以前から日本に進出し、多くの実績を上げているのだ。

例えばファーウェイやZTEは、大手キャリア向けにWi-Fiルーターや子供向け端末などを多数提供しているし、ASUSも古くからパソコンやタブレットを日本で販売しており、キャリア向けにタブレットを提供した実績も持っている。そして日本市場での経験から、品質に厳しい日本市場の特性を学び、日本市場の品質に合わせた製品作りを進めているのだ。

中国メーカーは大手キャリア向けに多くの端末を多く提供している。中でもファーウェイはWi-Fiルーターの先駆者であり、現在も多くのWi-Fiルーターを提供している

中国・台湾のスマートフォンメーカーの人気は、"格安"市場の盛り上がりによる安価なスマートフォンの需要の高まりに加え、日本を意識した品質重視の取り組みが評価されたからこそ、起きているものだといえる。最近ではNTTドコモのZTE製端末「MONO MO-01J」のように、大手キャリアから中国メーカーのスマートフォンが登場するケースも出てきており、今後も中国・台湾メーカーの人気は拡大する可能性が高いといえそうだ。

昨年NTTドコモが投入し、一括で648円という価格が話題となった「MONO MO-01J」はZTEが開発したものだ