前回の対談では、ネットニュースとブログからの情報を、どうすれば効率的に収集できるか、というお話をしました。今回はさらに、情報発信者が加工する前の段階の、生々しい発信を「情報」として取得する方法を探ります。

Twitterで発信者の生の「発言」をウォッチする

佐々木 前回まで伺ったお話ですと堀さんは、主にRSSリーダーで情報収集をまかなっている、ということだと思うのですが、RSSから得られる情報は主として、ネットニュースやブログなど、それなりに「加工されて」から出てくる情報ですね?

ええ。

佐々木 ですが、私自身ブログやオンラインマガジンを書いているのでわかるのですが、そこにはなかなか現れないが、しかし面白いネタというものもあると思います。そういったものを探す方法はありますか?

いくつかありますが、その手のツールとして、今よく使われているのがTwitterですね。

佐々木 Twitterですか。Twitterは、あまりに膨大な情報が入ってきて、しかもその多くは残念ながら必ずしも有用な情報には思えなくて…。

しかし、いまリアルタイムで最も熱い情報を集められるのはTwitterです。今一番有用な情報をもっているのは、ニュースサイトと個人のアルファブロガーだと思いますが、前者はいつでもどうせ耳に入ってくる情報で、後者は注意して追わないといけない。つまり、Twitterでなければ、なかなか得がたい情報があるわけです。Twitterならではの情報収集術とは、情報源を「個人」にして、彼らから情報を直接得るところにあります。

佐々木 なるほど。しかし、確かに「中には」得がたい情報があるというのは疑いませんが、それをうまく見つける方法がないと、一日中Twitterを眺めてなければいけなくなりそうで、なかなかそんな時間がとれないのです。

TweetDeckで流れを作る

そう。誰もそんな時間はとれないでしょう。そこで、Tweet Deckというツールのお世話になります。このツールは、いくつかの「情報の流れ」を分けて、「流れ」の勢いを調節してくれるのです。

佐々木 「情報の流れ」とは、どういう意味ですか?

Twitterをうまく使うには、ある程度価値の高い情報源をたくさんフォローする必要があります。でも佐々木さんがおっしゃったように、多すぎると情報過多になって使い物にならなくなります。そこで、「特に高い情報源の流れ」と「みんなのおしゃべり」などに分ける必要が出てくるわけです。

佐々木 そういう風に「情報の流れ」を分けることが、Tweet Deckを使うと可能になるのですか?

はい。それだけではなく、たとえば画面中に、全員・日本のブロガー・特定のハッシュタグといったように流れを分けて追えるようになります。そうすれば、膨大な情報を入り口で分類させて、その瞬間に興味のある情報にすぐにアクセスできるのです。

佐々木 なるほど。堀さんは、どのように「流れ」を分けているのですか?

私は、「自分の好きな人」で「小川」を作っています。「好きな人」とは、「情報を与えてくれる人」と、「単に面白い人」と、「話題の中心にいる人」などです。言い換えれば、「情報のフィルターになってくれる人」です。

TweetDeckで情報の流れを分ける

佐々木 人を追う。フィルターになってくれる人がつかんだ情報を、Twitterで放してくれるから、その人だけをTwitterで追っていけば、有益な情報の流れを追っていけるというわけですね。面白そうですね。私もやってみたいので、可能なら、具体的な人名をあげていただけますか?

そうですね。私はネットの新しいウェブサービスや IT 系の話題についてとくに注目して見ていますので、 Robert ScobleTim O'ReillyLeo Laporteなどをいつも注目して追っています。

それぞれの分野でヒーローみたいな人を追って、その次にその人が言及している人に視点を広げてゆくといいでしょう。また、主立ったニュースサイトも最近は Twitter に乗り出していますので、RSS が更新されるよりも早く情報を手に入れることができます。

佐々木 それから、Twitterといえば今、iPhoneから利用している人も結構多いみたいですね。Tweet DeckはiPhoneでは利用できないのですか?

TweetDeck For iPhoneというソフトがあります。これを使えば、パソコンの方で設定した「流れ」をそのままiPhoneに持ち出せるのです!

TweetDeck For iPhone

佐々木 それはいいですね。そちらも試してみます。堀さん、どうもありがとうございました。

佐々木正悟の心理学ノート

対談中、いささか不思議に思っていたのが、「ブログやニュースには流さないのに、Twitterには真っ先に情報発信する心理」です。オンライン上での行動とその心理についての研究はまだまだ歴史が浅いので、これといった答えはわかっていないと思いますが、テレビなど、マスメディアからの「速報」に対抗したいという気持ちのある人が、たくさんいるということかもしれません。Twitterは発信情報量がかなり短く制限されていて、読むのにも書くのにも時間がかからず、したがって大量の情報を扱いやすいため「速報向き」な印象が強いのです。

対談後記

ライフハックの話題については私たちも不定期にブログや連載になる前の情報を Twitter に流していますので、よければ @nokiba@mehoriをフォローしてみてください。また、ライフハックファンのためのコミュニティ、@lifehackfanも運営しています。

佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト

「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。

ブログ「ライフハックス心理学」を主催

堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者

1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」 (日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2 (技術評論社、共著)がある。