生成AIの実務活用が進む中、昨今、「現場データが集まるkintoneの中でAIを動かしたい」という要望が増えています。kintoneはもともとプラグインや外部連携を前提とした拡張性を備え、業務アプリの機能をあとから追加できる仕組みを持っており、それがkintoneの人気の理由の一つでもあります。公式の「プラグイン・連携サービス」には200種類以上のプラグイン拡張が掲載され、ノーコード(プログラミング不要)で導入できる点が大きな特徴です。
kintoneでAIプラグインを使うとはどういうことか
kintoneはJavaScriptやCSSで画面や動作をカスタマイズできますが、これらをひとまとめにし、設定画面から複数アプリで活用できる形にしたものが「プラグイン」です。アプリ管理者はプログラムを組むことなく、設定画面で、データをレイアウトして、データの関係を指定するだけで機能を適用できます。
※導入前提:プラグインは「スタンダードコース」以上で利用可能で、ライトコースでは利用できません。したがって、AIプラグインもライトコースでは使えません。ライトコースでkintoneを利用している際は、契約コースのアップグレードも含めてAIプラグインの導入を検討する必要があります。
「AIプラグイン」の主なパターン
AIプラグインは、kintoneとChatGPTのようなAIプラットフォームを連携させて使用する仕組みです。AIを稼働しているシステム(AIプラットフォーム)は大規模であるため、AIそのものをkintoneの中に組み込むことは現実的ではありません。AIプラグインは、kintone外部のAIプラットフォームとネットワークで接続して、kintoneからAIプラットフォームを利用します。そのAIプラットフォームと接続して利用する仕組みをAPIと呼びます。
kintoneのプラグインには、以下のように複数のパターンがあります。
完成品プラグイン型
独立した1つのAIツールをkintoneのメニューから呼び出して使うイメージです。以下の特徴があります。
- 専門知識が不要で、設定するだけで動作する
- 文章生成・要約・分類など目的が明確に決まった機能が提供されている
- カスタマイズ性は低めだが、小規模・短期ですぐ導入したい企業に向く
【例】
kintone内でChatGPT等の生成AIを安全に呼び出し、要約・翻訳・定型文生成などを行う「Smart at AI for kintone Powered by GPT」(M-SOLUTIONS)があります。
AIプラットフォーム連携型
kintoneのデータをAIプラットフォームに読ませてデータの集計や加工を行います。ChatGPTのようなAIプラットフォームを“基盤”として利用し、kintoneはデータの受け渡し役になり、AI側で高度な処理(分析・対話・ワークフローなど)を実行します。
- 大規模データ分析や複雑な業務AI化に向きます。
【例】
ノーコードAIアプリ基盤「Dify」のマーケットプレイスに、kintone接続プラグインが公開されています。Difyからkintoneデータを参照し、AIチャットボットやワークフローを作成・埋め込みができます。
自社開発型
自前でAPI連携やJavaScriptを使い“完全オーダーメイド”する方式。プログラミングやAPIの知識が必要になるため、エンジニアのスキルが必要になります。
- kintone REST API と外部AI(GPT・Claudeなど)を直接つなぐ
- 業務に合わせた細かい要件や複雑な処理を自由に実装できる
- 開発リソース(エンジニア)が必要
- 大規模運用や独自業務プロセスのAI化に向く
【例】
Azure OpenAIやOpenAI APIを使った要約・FAQボットのサンプルプラグイン/カスタマイズが公式Tipsとして公開。自社要件に合わせて拡張できます。
kintone AIラボとの違い
サイボウズは「kintone AIラボ」というAI機能の提供を始めています。先述したAIプラグインとの違いは以下のようになります。
kintone AIラボ
kintoneの標準サービス。比較的シンプルな機能で、AI検索など、kintoneを活用するための支援機能が中心。基本的にkintoneの料金内で利用できる。
※AIラボもライトコースのkintoneでは使用できません。スタンダードコース以上の契約が必要です。
AIプラグイン
kintoneの外部のサービス。シンプルなものから非常に高度な物まで多数あり、kintoneのデータを加工・集計したり、新しいデータを生成したりする本格的なものが多くあります。基本的に利用するAIプラグインごとにライセンス契約が必要で別途料金がかかります。
本連載では、AIプラグインのみを取り上げます。
kintoneでAIプラグインを使うメリット
KintoneでAIプラグインを使う上で、以下のようなメリットがあります。
テキスト業務の高速化(要約・翻訳・定型文)
議事録の要約、社内連絡のドラフト、問い合わせ返信のたたき台などを、レコード上のボタン一つで生成。Smart at AIはアプリごとにプロンプトを事前設定できるため、毎回指示文を考えずに出力品質を平準化できます。
【活用例】
日次報告の要約→承認ワークフローを短縮。顧客向けメール案の自動生成→担当者は修正・送信に専念できます(導入の一般的メリットは各社解説で整理。連携サービス選定の観点も参照)。
kintoneワークフロー×生成AIの自動化
レコード更新→AI→結果をkintoneに書き戻す一連の処理をノーコードで実装可能です。
【活用例】
「商談メモが登録されたらChatGPTでフォローアップメール草案を作成し、kintoneへ保存」というワークフローを実現できます。
社内FAQチャットボット/横断検索の実装
kintoneのFAQアプリやナレッジをもとに、レコード一覧画面にチャットUIを埋め込むサンプルが公開されています。
“kintoneの中で完結”する体験
AI機能をkintoneに埋め込むことで、ユーザーは複数の異なるWebサービスやアプリケーションを行き来せずに入力→AI→出力→共有までを同じ画面で完結できます。サービスを使い分けるストレスから解放されます。
また、kintoneに集約することで、端末として使用するPCがハイスペックである必要がなくなれば、コスト削減にもつながります。
AIプラグインを導入前に必ず確認すべきこと
何かと便利で、コスト削減にも効果のあるAIですが、導入前に確認しなければならないことや、AIならではの問題点もあります。
組織ルール・法令順守(コンプライアンス)
先進的な企業・組織ではすでにAIの取り扱い規則を定めているところもありますが、まだまだ内規が未整備の企業・組織もあります。
AIプラグインの利用が組織の内規やコンプライアンスに抵触しないかどうか、十分検討する必要があります。また、内規がない場合には、上長や関連各部署と情報共有し、利用の有無について十分に検討して合意を得る必要があります。 多くの場合、特に問題になるのは以下の3点です。
(a)クラウドサービスのAIプラグインを利用するということは、組織外にデータを送信する(持ち出す)ことになります。データ持ち出しの規約や契約に抵触しないか、確認が必要です。 (b)社内の情報をAIに読ませることによって、AIがその情報を素材として学習してしまい、AIを通して外部(同じAIを使っている他のユーザー)に情報が漏洩する可能性が考えられます。 (c)AIの処理結果(判断、提案)が不当に経営に影響を与える可能性があります。
(a)については、データを外部に持ち出してはならないという規約がある場合に抵触する可能性があります。組織内の法務部門、管理部門への確認が必要でしょう。また、規約に抵触する場合、それであきらめるのではなく、kintoneやAIプラグインのサービスの仕様や契約内容を詳細に検討して、より実際的な内容に規約を改定することも考えられます。
(b)については、情報漏洩防止の観点から、昨今、ユーザーがAIを利用した内容はAIの学習素材にしないことを確約したAIサービスが一般的になっています。社内データを学習して外部に漏らすことがなければ安全ですので、契約前に使用するAIプラグインの仕様をよく確認しましょう。
(c)については、AIの提案やハルシネーションが経営に影響を与える可能性です。AIはさまざまな「提案」をしてくれますが、その提案に至るプロセスは説明してくれません。AIはハルシネーション(幻想)に基づいた判断を下すことがあります(後述)。
加えて、顧客との契約内容にも留意が必要です。顧客との契約の中で、「AIの使用を認めない」「外部へのデータ保存を認めない」等の文言が含まれている場合、顧客に関するデータの処理にAIプラグインを使用できない可能性があります。契約書内容を確認し、場合によっては顧客との打ち合わせや変更契約が必要になることもあります。
AIの“弱点”と運用の工夫
AIは常に正しい提案をしてくれるわけではありません。誤答・ハルシネーションを常に念頭に置く必要があります。ハルシネーションとは幻覚のことです。AIは広範囲から情報を収集して学習していますが、その結果、事実を誤認して事実とは異なる情報をもとに判断を下すことがあります。それをAIが幻覚を見ているようだとしてハルシネーションと呼びます。
AIが提案してくれたことが本当に正しいかどうか、重要な問題であればあるほど、裏付け調査などが必要になります。
社内の根回し(ステークホルダーの並走)
AIプラグインの活用について組織内でワークフローができていないのであれば、情報システム/セキュリティ/法務/各部門を巻き込み、目的・対象データ・レビュー手順・ログ監査の落としどころを事前合意する必要があるでしょう。
パイロット(2~4週間の試用期間)、小規模導入、その結果を踏まえて段階的に拡大といったパターンで、まずは「小さく始める」進め方が現実的です。 慣れないうちに、最初から全社的に大規模導入すると、「想像していた機能と違った」、「今ひとつ使い勝手が悪い」、「社内の既存システムの運用と競合した」などなど、問題が起きたときの影響範囲、被害が甚大になります。 可視化と説明責任を意識して、どのkintoneアプリにどのプラグインが入っているか、誰が承認するか、ログはどこに残るかなど、最初に「見える化」の道筋を決めておくと、後の運用が格段に楽になります。
まとめ
kintoneでAIプラグインを活用することは、業務の省力化、効率化、コスト削減につながる大きな可能性があります。
ただし、AIの活用に関しては、社内のルール、顧客との契約内容など、事前に確認すべき点も少なからずありますので、関連部署を巻き込みながら、メリット・デメリットを正しく評価することが必要です。
次回からは、具体的にAIプラグインの使い方を紹介していきます。





