先日、サイボウズが主催するイベント「kintone hive(キントーンハイブ)」を取材した際、同社が提供する「kintone」を使うことで、ノーコードでさまざまな業務アプリが自由に作れることを知った。ITの専門知識がなくても、簡単に作れるらしい。

  • サイボウズが主催した「kintone hive」

    サイボウズが主催した「kintone hive」

筆者は『プログラミング言語恐怖症』だ。大学生時代はプラズマ物理学の研究室に所属していたのだが、シミュレーションに使用したC/C++言語がまったくと言っていいほど理解できなかった。泣きながら卒論を書いた苦い思い出がある。

また、教授の研究内容(40年以上前から確立されている理論に“いまさら”異を唱える研究)自体に興味がなかったので、勉強する気にもならなかった。天体を観測する研究室は大人気だったので、成績が“下の中”だった筆者は、希望者ゼロの研究室を選ぶほかなかった。それ以来、プログラミング言語全般に拒否反応を示すようになったのだ。

しかし、プログラミング言語が必要ないノーコードなら、自分でも扱えるかもしれない。kintone hiveで意気揚々と活用事例をプレゼンする担当者たちに感化され、筆者も業務アプリを作ってみたくなった。

そこで、本連載では、kintone初心者の編集部が、本当に役立つ業務アプリを作っていく。第1回目は、『広報担当者のプロフィール帳』を作ってみようと思う。完全な初心者が手探りで開発するため、アプリのクオリティには目をつむっていただきたい。

そもそもkintoneって?

サイボウズが提供するkintoneは、ノーコードで業務アプリが開発できるクラウドサービス。俳優の豊川悦司さん演じる「文系出身の部長」が“シュシュっと”業務アプリを楽しそうに作っているCMのアレだ。

2023年12月末時点で導入社数は3万2800社を超え、毎月650社が新規で導入しているという。また、東証プライム企業の3社に1社が導入しており、2023年のkintoneの売上高は130億円(前年比25%増)を突破した。難解なプログラミング言語を覚えなくても直感的にアプリを作れるのが特徴で、kintone導入担当者は、非IT部門が93%を占めているという。

  • ノーコード開発ツール「kintone」

    ノーコード開発ツール「kintone」

kintoneは、用途を自分で考えて、それに適したアプリを自分で作成することができる。勤怠管理や日報の提出、在庫管理、会議室の予約、問い合わせ対応といったさまざまな用途にkintoneは活用できる。

また、外部サービスとのAPI(Application Programming Interface)連携やプラグインにも対応しており、さまざまな拡張機能を使って独自の業務アプリが作ることができるとのこと。

今回、筆者が開発したいのは、広報担当者の情報を一元的に管理できるアプリだ。日々の業務の中で企業の広報担当者には、かなりお世話になっている。しかし、名前や連絡先など、その人の表面上のことしか把握できていない場合も少なくない。そこで、広報担当者のパーソナルな部分も把握できるアプリを作ることで、より密なコミュニケーションを取っていきたいと考えた。

社名や連絡先に加え、これまでの経歴や誕生日、好きなモノ・コト、特技などの項目を設ける。目指すのは、筆者が小~中学生の頃に流行した「プロフィール帳」の広報担当者版だ。

  • 今回作成するアプリ「広報担当者のプロフィール帳」のイメージ。殴り書きですみません

    今回作成するアプリ「広報担当者のプロフィール帳」のイメージ。殴り書きですみません

ドラック&ドロップでサクサク開発

では、早速アプリを作っていこう。

kintoneにログインすると「アプリ」という項目があり、「+」と表示されたボタンをクリックすると、アプリの作成方法を選択する画面になる。kintone上であらかじめ用意されているアプリもいくつかあるが、今回は「はじめから作成」を選択した。

  • アプリの作成開始

    アプリの作成開始

  • 作成方法の選択

    作成方法の選択

アプリの作成画面(フォームの編集画面)が表示されるので、アプリのタイトルを「広報担当者のプロフィール帳」に変更し、広報を連想させる(?)メガホンのアイコンに変えた。

  • アプリの作成画面

    アプリの作成画面

  • アプリ名とアイコンを変更

    アプリ名とアイコンを変更

次に、アプリに必要な入力項目(フィールド)を追加していった。ドラッグ&ドロップで各フィールドを追加できる。簡単で分かりやすい。物理の計算もノーコードでできたらよかったのに……。

  • ドラック&ドロップで入力項目(フィールド)を追加していく

まずは、テキストを入力できる「文字列」を使って、社名や担当者名、担当領域などのフィールドを追加した。「歯車」のアイコンをクリックして「設定」を選択することで、フィールド名を変更できる。また、同じフィールドを連続で追加したい場合は「複製」使うと便利だ。

  • フィールド名などが変更できる

    フィールド名などが変更できる

  • フィールドは複製できる

    フィールドは複製できる

電話番号とメールアドレスは「リンク」を選択した。それぞれのテキストボックスは、右端をドラッグすることで「幅」を自由に変更できるようになっている。入力する内容に応じて幅を調節することで、見やすいフォーム画面になる。

  • 電話番号とメールアドレスは「リンク」を選択

    電話番号とメールアドレスは「リンク」を選択

ごくたまにだが、広報担当者の名前と顔がリンクしないときがある。要するに顔を忘れてしまうことがあり、筆者の記憶力の低さが問題だ。そこで、名前だけでなく、プロフィール写真も登録することにした。次に会ったときに合意の上で撮影させていただこうと思っている。

  • 添付ファイルを追加

    添付ファイルを追加

意外と知らないのが広報担当者の経歴だ。会食や懇親会などを通じて親しくなった広報の「これまでの話」は知っているが、お酒がない場のコミュニーションが苦手な筆者は、ほとんどの方の経歴を詳しく知らない。

IT業界の広報を転々としている方も少なくなく、「前職の担当者を紹介しますよ」と便宜を図ってくれることもしばしばあるので、広報の経歴も知っておきたい。1行では収まらないはずなので「文字列(複数行)」のフィールドを追加した。

  • 経歴のフィールド「文字列(複数列)」を追加

    経歴のフィールド「文字列(複数列)」を追加

作ろうとしているアプリは、約20年前の小中学校で大ブームとなった「プロフィール帳」の広報担当者版だ。同じクラスの気になる女の子に渡され、「おれ男子だから興味ないよ」と言いながら、嬉しそうにすべての欄を埋めていた幼少期が懐かしい。

そこで、堅苦しい情報だけでなく、「誕生日」や「好きな食べ物・お酒」、「特技」、「趣味・はまっていること」など、パーソナルなフィールドも追加した。いきなり聞くと「この記者なんなん……?」と思われるかもしれないので、会話の中で自然に情報を集めたいと思っている。

  • パーソナルなフィールドも追加

    パーソナルなフィールドも追加

次に、選択肢の中から項目を1つ選んで選択できる「ラジオボタン」を追加し、その広報担当者と会ったことがあるか否かを判断できるようにした。先述した通り、記憶力が年々低下している筆者は、会ったことがない方に対して、会ったことがある感を出してしまうことがある。逆もしかりだ。

  • 「ラジオボタン」を追加

    「ラジオボタン」を追加

最期に、自分から見た印象を記入するためのフィールドも追加した。「リッチエディター」を選択し、自由なフォーマットで記入できるようにした。

  • 「リッチエディター」を追加

    「リッチエディター」を追加

『広報担当者のプロフィール帳』が完成!

必要なフィールドをすべて追加し編集できたので、「アプリを公開」というボタンをクリックした。すると、アプリにデータを入力できる状態になった。右上にある「+」ボタンを押せば、データの登録画面になる。

  • 「アプリを公開」を押すと

    「アプリを公開」を押すと

  • レコードが追加できるようになる

    レコードが追加できるようになる

早速、サイボウズの広報担当者である吉村美波さんのプロフィールを登録してみた。吉村さん、いきなり電話をかけて質問攻めしてしまい、すみませんでした。自分も白米が大好きです。

  • サイボウズ広報担当者 吉村美波さんのプロフィールを登録

    サイボウズ広報担当者 吉村美波さんのプロフィールを登録

アプリの背景の初期設定がシンプルな色合いだったので、「アプリの設定」の「デザインテーマの設定」からイエローに変えてみた。少しだけプロフィール帳っぽくなった。

  • 「アプリの設定」の「デザインテーマの設定」から

    「アプリの設定」の「デザインテーマの設定」から

  • イエローを選択し

    イエローを選択し

  • アプリの背景色を変更した

    アプリの背景色を変更した

そして、作成したアプリは歯車のアイコンからいつでも編集できる。今後、追加で知りたい情報が思いついた際は、どんどん編集していこうと思う。

  • 作成したアプリはいつでも編集できる

    作成したアプリはいつでも編集できる

初めて作ったアプリにしては、我ながら上手に作れたと思う。いや、kintoneを使えば、だれでも簡単に“いい感じの”アプリを作れるだけかもしれない。作成にかかった時間は、考える時間を含めて30分ほど。CMの豊川悦司さんのようにシュシュっと作ることができた。

プログラミング言語を使わないノーコード開発には拒否反応が出なかったので、今後も個人的に使えるアプリを気ままに作っていこうと思う。